オーロト

オーロト（オイラト）とは

オーロト（モンゴル語: Өөлд、中国語: 額魯特）は、14世紀末の北元時代にオイラト部族連合（四オイラト）を構成したとされる部族の一つです。後に「オイラト」の別称として用いられるようになりました。

歴史的背景

14世紀末、明朝の成立によりモンゴル帝国（大元ウルス）は長城以南の領土を失い、北元と呼ばれる時代に入ります。当時のモンゴリアでは、東方のモンゴルと西方のオイラトという二大部族連合が対立しました。漢文史料ではこれらを「韃靼」と「瓦剌」、モンゴル年代記では「ドチン・モンゴル（四十モンゴル）」と「ドルベン・オイラト（四オイラト）」と表記しています。

ガワンシャラブが記した『四オイラト史』によれば、「四オイラト」は以下の4つのグループから構成されています。

1. オーロト
2. ホイト・バートト
3. バルグ・ブリヤート
4. ドルボト・ジューンガル・ホシュート・トルグート

オーロトの謎

しかし、『四オイラト史』はオーロトの具体的な活動についてはほとんど触れていません。ただ「黄魔に唆されて遷り去り」、「ハザルバシ氏となって離散した」と記すのみです。岡田英弘氏は、「オーロト」という単語が「連れ子」「継父」「同母異父兄弟」といった意味を持つ「オーロン（ölön）」の複数形であることから、「オーロト」とはホイト部と、ホイト部の始祖の同母異父弟を始祖とするチョロース氏の総称ではないかと推測しています。

チョロース氏は、トゴン・タイシやエセン・ハーンを輩出した有力氏族であり、ホシュート部といった他のオイラト部族連合を構成する部族も影響下にありました。そのため、次第にオイラト（部族連合）と「オーロト」が同義として用いられるようになったと考えられています。

清朝におけるオーロト

特に清朝の支配民族である満洲人は、オイラトのことを専ら「オーロト（額魯特）」と呼んでいました。清朝の行政区画の一つであるアラシャー・オーロト部も、実際には「オーロト部」の領地ではなく、オイラト内の一族であるホシュート部の領地でした。

このように、「オーロト」という名称は、部族連合の一部を指す言葉から、連合全体を指す言葉へと変化していったと考えられます。

参考資料

岡田英弘訳注『蒙古源流』（2004年、刀水書房、ISBN 4887082436）
岡田英弘『モンゴル帝国から大清帝国へ』藤原書店、2010年

関連項目

北元
オイラト

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