チョロース

チョロース氏とは：ドルベン・オイラトを構成した氏族

チョロース（Цорос、綽羅斯）は、北元時代のドルベン・オイラト（四オイラト）に属した氏族です。その起源はウイグル帝国の子孫、特にモンゴル帝国に征服されたナイマン部に遡ると考えられています。15世紀以降に勢力を拡大し、ジュンガル部やドルベト部の支配者を輩出しました。

始祖伝承

史書『四オイラト史』などによると、チョロース氏の始祖はボー・ハーンとされています。その息子ウーリンタイ・バダン太師が、小枝から垂れる樹液を吸って育ったことから、小枝が管（Zorros）に見えたため、子孫はチョロースと呼ばれるようになったと伝えられています。また、ホイト部のヨボゴン・メルゲンの妻とボー・ハーンの密通によってウーリンタイが生まれたという伝承もあり、チョロースとホイトは異父兄弟を意味するオーロトと総称されるようになりました。

ドルベン・オイラトの形成とチョロース氏の隆盛

14世紀末、オイラト部などのモンゴリア西方の部族は、アリクブケの子孫であるイェスデルに従い、ハーンのトグス・テムルを殺害、イェスデルをハーンに擁立しました。この時、アリク・ブケ家に従った旧オイラト部（後のホイト部）、旧ケレイト部（後のトルグート部）、旧バルグト部（後のブリヤート部）、旧ナイマン部（チョロース氏）が結集し、ドルベン・オイラトを形成しました。

15世紀初頭のドルベン・オイラトは、マフムード、タイピン、バトボラドという3人の指導者がいましたが、チョロース氏のマフムード（バトラ丞相）が頭角を現し、他の2人よりも上位に立ちました。マフムードの死後、一時的にタイピンらが勢力を盛り返しましたが、マフムードの息子トゴンがタイピンらを討ち、ドルベン・オイラトの支配者となりました。

エセン・ハーンの登場とチョロース氏の衰退

トゴンの死後、その地位を継いだエセンは全モンゴリアを統一し、ハーンを称するに至りました。しかし、部下の反乱によって殺害され、ドルベン・オイラトによるモンゴリア統一は瓦解、チョロース氏の地位も低下しました。エセンの地位は、その子孫であるオシュ・テムル、ケシク・オロクに引き継がれましたが、ドルベン・オイラトの盟主としての地位は失われ、16世紀にはホイト部が有力となりました。

ジュンガル部の台頭

16世紀初頭、モンゴリア東方ではダヤン・ハーンが諸部族を統一し、その子孫らによるオイラト遠征が行われました。度重なる遠征によりドルベン・オイラトは衰退し、一時ハルハに臣属するまでになりましたが、ホイト部が衰退し、チョロース氏から分岐したジュンガル部とドルベトが再び優勢となりました。その後、ジュンガル部はドルベン・オイラト部族連合の盟主となり、清朝と中央アジアの覇権を巡って争うまでに成長しました。

チョロース氏の世系

ボー・ハーン：チョロース氏の始祖
ウーリンタイ・バダン太師：ボー・ハーンの子
ゴーハイ太尉：ボー・ハーンの子孫
オルルク・ノヤン
バトラ丞相（順寧王マフムード）
トゴン太師：マフムードの子
エセン・ハーン：トゴンの子
オシュ・テムル太師：エセンの子
ケシク太師：オシュ・テムルの子
ハムク太師：ケシクの子
アラガ丞相：ハムクの子
オンゴチョ：アラガの子
アビダ・ブリーン・タイシ：オシュ・テムルの子
ハラ・フラ：ブリーンの子
バートル・ホンタイジ：ハラ・フラの子、ジュンガルの初代ホンタイジ
センゲ：バートル・ホンタイジの子
ボショクト・ハーン（ガルダン）：バートル・ホンタイジの子

ジュンガル部とドルベト部の分岐

史料には、オンゴツォとオンゴルホイという兄弟がおり、オンゴツォの子孫がジュンガル、オンゴルホイの子孫がドルベトになったと記されていますが、この兄弟の出自については史料間で記述が一致せず、信頼性に欠けるため、ジュンガル部とドルベト部がどのように分岐したかは不明です。

参考資料

岡田英弘『モンゴル帝国から大清帝国へ』藤原書店、2010年

関連項目

北元
オイラト

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