カストルとポルックス神殿

カストルとポルックス神殿：フォロ・ロマーノの双子神殿

カストルとポルックス神殿、またはディオスクーリ神殿（ラテン語: Aedes Castorum、イタリア語: Tempio dei Dioscuri）は、古代ローマの政治・宗教の中心地であったフォロ・ロマーノに位置する重要な建築物です。この神殿は、紀元前495年、レギッルス湖畔の戦いでの勝利を記念して建てられました。

神話と起源

カストルとポルックスは、ギリシア神話ではポリュデウケースとも呼ばれ、ディオスクーロイ、またはジェミニ（双子）として知られています。彼らはゼウス（ユピテル）とレーダーの間に生まれた双子の息子とされ、その信仰はギリシアからマグナ・グラエキアを経由して、南イタリアのギリシア文化と共にローマに伝わりました。

歴史

王政ローマ最後の王タルクィニウス・スペルブスが追放された後、ラテン人たちと共闘し、誕生したばかりの共和政ローマと戦いました。この戦いの前、ローマの独裁官アウルス・ポストゥミウス・アルブスは、勝利すればディオスクーロイの神殿を建立すると誓いました。

伝説によると、カストルとポルックスは二人の騎手として戦場に現れ、ローマ軍を助けたとされています。ローマ軍の勝利後、彼らはフォルム・ロマヌムのユートゥルナの泉に現れ、馬に水を飲ませたとも伝えられています。神殿は、彼らが現れたとされる場所に建てられました。神殿の完成は紀元前484年、ポストゥミウスの息子によって成し遂げられました。

紀元前117年には、ルキウス・カエキリウス・メテッルス・デルマティクスがダルマチア人への勝利を記念して神殿を修復・拡張しました。ローマの人口増加に伴い、民会が開かれるクリア・ホスティリア（旧元老院議事堂）前のコミティウムが手狭になったため、デルマティクスの修復後、またはその半世紀前から、カストル神殿の前が人々が集まる場所となりました。キケロの記録によると、神殿は元老院の議場としても利用されたことがありますが、記録に残るのは紀元前159年の元老院決議のみです。デルマティクスの修復からスッラ時代までの間に使用されていたか、またはその後も少人数の会議に使われたと推測されています。

また、キケロは『ウェッレス弾劾』の中で、首都プラエトルのガイウス・ウェッレスが無駄な修復を行い、費用を水増ししたと非難しています。

帝国時代に入ると、神殿は度量衡を監督する役所や国家の宝物庫として利用されました。紀元前14年、フォルム・ロマヌムの主要部分が火災で焼失し、この神殿も破壊されましたが、後に第2代皇帝となるティベリウスによって再建され、紀元6年に完成しました。現在残る遺跡は、このティベリウスが建てた神殿の一部です。ただし、土台部分はメテッルスの時代のものです。

歴史家エドワード・ギボンによれば、カストルとポルックス神殿は元老院の秘密会談場所としても使われ、237年には、元老院がマクシミヌス・トラクスを退位させ、ゴルディアヌス1世を新たな皇帝に擁立する相談を行ったとされています。

建築

カストルとポルックス神殿は、周柱式の8柱式神殿です。短辺には8本、長辺には11本のコリント式柱が立ち並び、内陣はモザイクで装飾された一部屋でした。土台は32m×49.5mの広さを持ち、高さは7mありました。ローマン・コンクリートで作られ、元々は凝灰岩の板で覆われていましたが、後に取り除かれました。

古代の文献では、土台への階段は中央に一つだけとされていましたが、発掘調査により、二つの面に階段があったことが判明しました。メテッルスによって、8柱式に修復され、密柱式で柱が並べられたと考えられています。ファサードには演台があり、左右両側面から階段で上るようになっていました。演台の高さは約3.5mで、ここから政務官がフォルム・ロマヌムの民衆に向かって演説を行いました。

現在の遺跡

フォロ・ロマーノの他の建築物と同様に、カストルとポルックス神殿も15世紀にわたる破壊と略奪により廃墟と化しました。4世紀にはまだその姿を残していましたが、その後は歴史から姿を消し、15世紀には3本の柱だけが残っていました。この付近を通る道は、かつて「3本の柱通り」と呼ばれていました。1760年には、崩壊寸前の柱を修復するために足場が組まれ、ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージとイギリスの建築家ジョージ・ダンスがその足場に上り、正確な計測を行いました。ダンスは、父への手紙の中で「世界中のコリント式円柱の中で最も素晴らしい」と記しています。

現在、土台には外装がなく、3本の柱とエンタブラチュアの一部が残り、フォロ・ロマーノの中でも最も有名な遺跡の一つとなっています。

参考文献

Lily Ross Taylor; Russell T. Scott (1969). “Seating Space in the Roman Senate and the Senatores Pedarii”. Transactions and Proceedings of the American Philological Association (The Johns Hopkins University Press) 100: 529-582. JSTOR 2935928.
Roger B. Ulrich (1993). “Julius Caesar and the Creation of the Forum Iulium”. American Journal of Archaeology (The University of Chicago Press) 97 (1): 49-80. JSTOR 505839.

外部リンク

Aedes Castoris in Foro Romano (Platner's Topographical Dictionary of Ancient Rome, with further links)