ガイウス・スエトニウス・パウリヌス

ガイウス・スエトニウス・パウリヌス：ローマ帝国の軍人

ガイウス・スエトニウス・パウリヌスは、ローマ帝国の軍総督として名を馳せました。特に、ブーディカの反乱を鎮圧した指揮官として歴史に名を刻んでいます。また、その功績により、66年には執政官（コンスル）にまで上り詰めました。彼は「パウッリヌス」とも呼ばれています。

生涯

法務官（プラエトル）として政務に携わっていたスエトニウスは、42年にローマ軍団の司令官（レガトゥス・レギオニス）に任命され、北アフリカのマウレタニア王国の反乱鎮圧に尽力しました。彼はローマ人として初めてアトラス山脈を越えた人物としても知られており、大プリニウスは『博物誌』を執筆する際に、スエトニウスの説明を引用しています。

ブリタンニア長官として

59年、クィントゥス・ウェラニウスの死後、スエトニウスはローマ支配下のブリタンニア長官に任命されました。彼はウェラニウスの方針を引き継ぎ、現在のウェールズ地域にいた部族を制圧し、赴任後わずか2年でこれを成し遂げました。その名声は、グナエウス・ドミティウス・コルブロと並び称されるほどでした。後にブリタンニア長官となるクィントゥス・ペティリウス・ケリアリスとグナエウス・ユリウス・アグリコラという二人の有能な部下を配下に加えています。

ブーディカの反乱とワトリング街道の戦い

61年、スエトニウスは第14軍団ゲミナを率いて、ブリタンニアの抵抗勢力が立てこもるドルイドの聖地、モナ島（現在のアングルシー島）の鎮圧に当たっていました。その隙を突いて、南東ブリタンニアの諸部族がイケニ族の女王ブーディカを中心に反乱を起こしました。植民都市カムロドゥヌム（現在のコルチェスター）は破壊され、クィントゥス・ペティリウス率いる軍は打ち破られました。

スエトニウスは急いでモナ島との和平交渉をまとめ、反乱軍が次に狙うであろうロンディニウム（現在のロンドン）へ向かいました。しかし、兵力の少なさに加え、ペティリウスの敗戦の知らせを受け、ロンディニウムを見捨てるという苦渋の決断を下しました。ブーディカ軍はロンディニウムに続き、ヴェルラミウム（現在のセント・オールバンズ）も攻め落とし、これらの都市は徹底的に破壊されました。

都市と市民の犠牲によって時間を稼いだスエトニウスは、第20軍団からの援軍と合流し、兵力を増強しました。エクセター付近に展開していた第2軍団は合流を拒否したものの、何とか10,000人の兵力を集め、歴史家タキトゥスによれば100,000人、カッシウス・ディオによれば230,000人というブーディカの大軍と対峙しました。ワトリング街道の戦いと呼ばれるこの戦いで、スエトニウスは地形と敵の装備を分析し、地の利を生かした戦略で圧倒的な勝利を収めました。

反乱鎮圧後と内戦

戦後、スエトニウスはゲルマニアから兵力を補充し、反乱の芽を摘むために残党の粛清を行いました。しかし、この強硬な政策は反発を招き、皇帝ネロの意向を受けた新任の行政長官によって、スエトニウスの権限は軍事行為のみに制限されました。その後、彼は指揮権を剥奪され、プブリウス・ペトロニウス・トゥルピリアヌスにその地位を譲りました。

66年、スエトニウスは執政官に就任。68年にネロ帝が亡くなり内戦が勃発すると、オトを支持し、上級将官兼軍事顧問として仕えました。クレモナの戦いではウィテッリウス軍を破りましたが、追撃を控えたため、裏切りの疑いをかけられました。オトが敗北した後のスエトニウスの消息は定かではありません。

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