クロード・マクドナルド
サー・クロード・マクスウェル・マクドナルド（Sir Claude Maxwell MacDonald, 1852年6月12日 - 1915年9月10日）は、イギリスの外交官であり、駐日英国公使、そして初代駐日英国大使を務めた人物です。その生涯は、軍人としての経験と、外交官としての手腕が交錯するものでした。
マクドナルドは、陸軍少将ジェームズ・マクドナルドとその妻メアリー・ドゥーガンの息子として生まれました。アピンガム校とサンドハースト王立陸軍士官学校で教育を受け、1872年にイギリス陸軍ハイランド軽歩兵連隊に士官として任官しました。この軍隊での経験が、後の彼の外交官としての活動に大きな影響を与えることになります。
1882年、エジプトでウラービー革命が勃発すると、マクドナルドは陸軍省の代表としてカイロに派遣されました。彼は、エジプト特別委員であったダファリン伯爵の軍事顧問に就任し、革命後のエジプト人士官に対する軍法会議で厳しい態度で審理を行いました。その後、イギリスの保護領であったザンジバル島総領事や、オイル・リヴァーズ総領事を歴任するなど、アフリカでの勤務経験も積みました。
1895年、マクドナルドは陸軍を退役し、第3次ソールズベリー侯爵内閣によって北京駐在公使に選任されました。東アジアでの外交経験はなかったものの、カイロ駐在時代にエジプト総領事イブリン・ベアリングから高く評価され、アフリカ駐在時の功績もソールズベリー首相に認められていたことが、その要因と考えられています。1900年には義和団の乱が発生し、各国公使館が包囲されるという危機に見舞われましたが、軍隊経験のあったマクドナルドは、日本公使館の駐在武官であった柴五郎中佐らと協力し、篭城戦を指揮してこの難局を乗り切りました。
1900年10月、マクドナルドは前任者のアーネスト・サトウと交代し、北京からそのまま駐日公使に就任しました。翌年、日英同盟に関する議論が持ち上がると、マクドナルドは本国政府との協議のため一時帰国し、ソールズベリー首相や林董男爵と会談しました。1902年1月30日に日英同盟が締結されると、その後の両国関係の発展に尽力しました。1904年には日露戦争が勃発し、戦況が日本に有利に進む中で、1905年に駐日公使館が大使館に格上げされ、マクドナルドは初代駐日イギリス大使となりました。同時期、明治天皇へのガーター勲章授与が実現し、日英関係は最盛期を迎えることとなりました。しかし、1908年の日本製糖汚職事件では、株主として損害を被ったマクドナルドは、桂太郎首相に書簡を送り、関係者の処罰を求めるなど、日本の政治にも関与しました。この事件が、日本における公認会計士の必要性が論じられるきっかけになったとも言われています。
第二次日英同盟の締結時には、マクドナルドは本国に召還されず、次第に本国政府からの信頼を失っていきました。部下のホレース・ランボルドの日記には、「政府は大使のことを信頼しておらず、大使が日本の立場で物事を判断しすぎると考えている」と記されています。1911年には、日英同盟の延長について、東京の大使館側にはほとんど相談がなかったことから、本国との距離を感じていました。マクドナルドは日本の大陸進出を警戒し、同盟の延長見送りも検討すべきだと本国に打電しましたが、最終的には同盟が延長されました。1912年に明治天皇が崩御し、大正天皇が即位すると、マクドナルドは天皇の健康状態を憂慮する報告をロンドンに送っています。1912年11月初頭、マクドナルドは12年間の大使生活に終止符を打ち、日本を離れました。1915年9月10日、ロンドンで死去し、ブルックウッド墓地に埋葬されました。
マクドナルドは自身を「外交畑における軍人出身の部外者」と評していました。『英国人名事典』では、「ソールズベリー侯からはよく評価されたが、外務省からは自己評価のとおり好感をもたれなかった」とされています。彼は、外交官としての手腕を発揮し、日英関係の強化に大きく貢献しましたが、本国政府との意見の相違や、日本の立場を理解しすぎているという批判もあったようです。
1892年にエセル・アームストロングと結婚しました。エセルは慈善活動に熱心で、1935年には大英帝国勲章デイム・コマンダーを授与されています。
マクドナルドは1901年から横浜の根岸競馬場の日本レース・倶楽部会頭を務めていました。1905年に根岸競馬場で初めて開催された「The Emperor's Cup」は、マクドナルドと明治天皇の個人的関係によって、明治天皇から下賜された銀杯が賞品として用いられたのが始まりで、現在の天皇賞の起源とされています。
このように、サー・クロード・マクスウェル・マクドナルドは、軍人としての経験を活かし、激動の時代に外交官として活躍した人物であり、日英関係の歴史に大きな足跡を残したと言えるでしょう。
生い立ちと初期の軍歴
マクドナルドは、陸軍少将ジェームズ・マクドナルドとその妻メアリー・ドゥーガンの息子として生まれました。アピンガム校とサンドハースト王立陸軍士官学校で教育を受け、1872年にイギリス陸軍ハイランド軽歩兵連隊に士官として任官しました。この軍隊での経験が、後の彼の外交官としての活動に大きな影響を与えることになります。
カイロ、北京での活動
1882年、エジプトでウラービー革命が勃発すると、マクドナルドは陸軍省の代表としてカイロに派遣されました。彼は、エジプト特別委員であったダファリン伯爵の軍事顧問に就任し、革命後のエジプト人士官に対する軍法会議で厳しい態度で審理を行いました。その後、イギリスの保護領であったザンジバル島総領事や、オイル・リヴァーズ総領事を歴任するなど、アフリカでの勤務経験も積みました。
1895年、マクドナルドは陸軍を退役し、第3次ソールズベリー侯爵内閣によって北京駐在公使に選任されました。東アジアでの外交経験はなかったものの、カイロ駐在時代にエジプト総領事イブリン・ベアリングから高く評価され、アフリカ駐在時の功績もソールズベリー首相に認められていたことが、その要因と考えられています。1900年には義和団の乱が発生し、各国公使館が包囲されるという危機に見舞われましたが、軍隊経験のあったマクドナルドは、日本公使館の駐在武官であった柴五郎中佐らと協力し、篭城戦を指揮してこの難局を乗り切りました。
駐日英国公使・大使としての活躍
1900年10月、マクドナルドは前任者のアーネスト・サトウと交代し、北京からそのまま駐日公使に就任しました。翌年、日英同盟に関する議論が持ち上がると、マクドナルドは本国政府との協議のため一時帰国し、ソールズベリー首相や林董男爵と会談しました。1902年1月30日に日英同盟が締結されると、その後の両国関係の発展に尽力しました。1904年には日露戦争が勃発し、戦況が日本に有利に進む中で、1905年に駐日公使館が大使館に格上げされ、マクドナルドは初代駐日イギリス大使となりました。同時期、明治天皇へのガーター勲章授与が実現し、日英関係は最盛期を迎えることとなりました。しかし、1908年の日本製糖汚職事件では、株主として損害を被ったマクドナルドは、桂太郎首相に書簡を送り、関係者の処罰を求めるなど、日本の政治にも関与しました。この事件が、日本における公認会計士の必要性が論じられるきっかけになったとも言われています。
本国との齟齬と退任
第二次日英同盟の締結時には、マクドナルドは本国に召還されず、次第に本国政府からの信頼を失っていきました。部下のホレース・ランボルドの日記には、「政府は大使のことを信頼しておらず、大使が日本の立場で物事を判断しすぎると考えている」と記されています。1911年には、日英同盟の延長について、東京の大使館側にはほとんど相談がなかったことから、本国との距離を感じていました。マクドナルドは日本の大陸進出を警戒し、同盟の延長見送りも検討すべきだと本国に打電しましたが、最終的には同盟が延長されました。1912年に明治天皇が崩御し、大正天皇が即位すると、マクドナルドは天皇の健康状態を憂慮する報告をロンドンに送っています。1912年11月初頭、マクドナルドは12年間の大使生活に終止符を打ち、日本を離れました。1915年9月10日、ロンドンで死去し、ブルックウッド墓地に埋葬されました。
人物像と評価
マクドナルドは自身を「外交畑における軍人出身の部外者」と評していました。『英国人名事典』では、「ソールズベリー侯からはよく評価されたが、外務省からは自己評価のとおり好感をもたれなかった」とされています。彼は、外交官としての手腕を発揮し、日英関係の強化に大きく貢献しましたが、本国政府との意見の相違や、日本の立場を理解しすぎているという批判もあったようです。
家族と慈善活動
1892年にエセル・アームストロングと結婚しました。エセルは慈善活動に熱心で、1935年には大英帝国勲章デイム・コマンダーを授与されています。
競馬との関わり
マクドナルドは1901年から横浜の根岸競馬場の日本レース・倶楽部会頭を務めていました。1905年に根岸競馬場で初めて開催された「The Emperor's Cup」は、マクドナルドと明治天皇の個人的関係によって、明治天皇から下賜された銀杯が賞品として用いられたのが始まりで、現在の天皇賞の起源とされています。
このように、サー・クロード・マクスウェル・マクドナルドは、軍人としての経験を活かし、激動の時代に外交官として活躍した人物であり、日英関係の歴史に大きな足跡を残したと言えるでしょう。
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