ケシク・オロク

ケシク・オロク（? - 1486年）は、15世紀後半に活躍したオイラト部チョロース氏の首長です。彼は、かつてモンゴル全域を支配したエセン・ハーンの孫にあたり、オイラト部族連合の首長の地位を継承しました。

エセン・ハーンの死後、オイラト部は弱体化し、モンゴリア西北に勢力を後退させていました。しかし、エセンの息子であるオシュ・テムルが首長となると、オイラト部は勢力を再建し始めます。オシュ・テムルは、東モンゴルの有力者であったボライ・タイシやモーリハイ・オンが内紛で弱体化すると、東方へと勢力を拡大しました。

しかし、オルドス地方を中心にボルフ・ジノンやマンドゥールン・ハーンが台頭すると、オシュ・テムルの活動は記録から姿を消します。1478年には、オシュ・テムルの死が明朝に伝えられました。この頃、ケシク・オロクがオシュ・テムルの後を継いで首長になったと考えられています。

オシュ・テムルの死後、東モンゴルではヨンシエブ部のイスマイルとモンゴルジン＝トゥメト部のトゥルゲンがベグ・アルスランを殺害し、バト・モンケ（後のダヤン・ハーン）を擁立するという事件が起こりました。イスマイルはダヤン・ハーンを傀儡として実権を握りましたが、成長したダヤン・ハーンとの対立を深めます。1483年、イスマイルはダヤン・ハーンに敗れて西方、ハミル方面へと逃亡しました。

ダヤン・ハーンとイスマイルの対立が始まった頃、ケシク・オロクはオイラト部族連合を率い、ダヤン・ハーンと友好的な関係を築いていました。1484年には、ダヤン・ハーンとケシク・オロクが協力して明朝に侵攻しようとしているという情報が明朝朝廷に報告されています。

しかし、1486年にイスマイルがハミル方面に進出していたケシク・オロクのもとに逃れると、ケシク・オロクはイスマイルと手を組み、ダヤン・ハーンとの関係は悪化しました。ダヤン・ハーンは西方に逃れたイスマイルへの攻撃の手を緩めず、同年中にケシク・オロクとイスマイルは敗死しました。モンゴル年代記には、ダヤン・ハーンと即位したばかりのマンドフイ・ハトンが2度オイラトに遠征したことが記されており、このオイラト遠征の一部はケシク・オロク討伐を指していると考えられています。

ケシク・オロクの死後、彼の部下はケシクの弟であるアシャを後継者にしようとしましたが、もう一人の弟であるアリグダがこれに反発し、自身の配下を率いて明領近くに移住しました。これにより、ダヤン・ハーンの勢力はさらに拡大し、オイラト部族連合と明朝との交流は断絶することとなりました。

年代記における記述

ガワンシャラブ著『四オイラト史』には、チョロース氏族長の一人としてケシク・オロクの名が挙げられており、これが明朝の記録にある克失／克舎に相当するとされています。『四オイラト史』では、オシュ・テムルに相当するオシュトモイ・ダルハン・ノヤンの玄孫がケシク・オロクであるとされています。しかし、オシュ・テムルとケシク・オロクの活躍年代から考えると、その間の世代の存在は疑わしく、実際にはオシュトモイ（オシュ・テムル）の息子がケシク・オロクであると考えられています。

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