コシロ・バジリ

アイアン・シーク：イランの技巧派レスラーから反米ヒールへの転身、そしてWWE殿堂入り

コシロ・バジリ（1942年3月15日 - 2023年6月7日）は、イラン・テヘラン出身のプロレスラーであり、リングネームであるアイアン・シークとして世界的に知られています。1938年生まれという説もあるなど、彼の生年には諸説ありますが、卓越したレスリング技術を誇り、アマチュアレスリングで名を馳せた後、プロレスラーとして転身。反米を掲げたヒールとして、WWF（現WWE）などで大きな成功を収めました。

イランでの活躍とアメリカへの亡命

イランではクシュティやレスリングの選手として活躍し、モハンマド・レザー・パフラヴィーのボディーガードを務めていたという逸話も残っています。メキシコシティオリンピックのイラン代表だったという記述も見られますが、五輪出場経験はありません。1970年にアメリカ合衆国へ亡命。翌年にはAAU選手権で優勝、その後はミュンヘンオリンピック（1972年）とモントリオールオリンピック（1976年）では米国代表チームのアシスタントコーチとして参加しました。

プロレスラーとしてのキャリア

1972年、AWAの世界チャンピオン兼オーナーだったバーン・ガニアに見出され、プロレスラーとしてデビュー。リック・フレアー、ケン・パテラ、グレッグ・ガニアといった、後のスター選手たちとガニア・キャンプで共にトレーニングを積みました。指導は主にビル・ロビンソンが行い、その様子はフレアーの自著にも詳しく記されています。デビュー当初はベビーフェイスとして、本名のコシロ・バジリまたはアリ・バジリの名義で活躍。レスリングの実力は高く評価され、ガニア・キャンプのトレーナーも兼任しました。

ヒール転向とNWAでの成功

1970年代後半、アイアン・シークにリングネームを変更し、ヒールに転向。NWAの各テリトリー（セントラル・ステーツ、テキサス、太平洋岸北西部など）を転戦し、数々のタイトルを獲得しました。1977年にはニュージーランドでリック・マーテルを破りNWA英連邦ヘビー級王座を獲得。その後もNWAパシフィック・ノースウエスト・タッグ王座、NWAカナディアン・タッグ王座を奪取するなど、成功を収めました。

WWFでの活躍とアメリカ大使館人質事件の影響

1979年2月、ハッサン・アラブのリングネームでWWFに登場。ボブ・バックランドのWWFヘビー級王座にも挑戦しましたが、当初はそれほど大きな注目は集めませんでした。しかし、同年11月に発生したテヘランアメリカ大使館人質事件が、皮肉にもアイアン・シークをトップ・ヒールへと押し上げる転機となりました。

WWF世界ヘビー級王座獲得とその後

リングネームをアイアン・シークに統一し、MACW（ジム・クロケット・ジュニアが主宰）などを主戦場として活躍。NWAミッドアトランティック・ヘビー級王座も獲得しました。その後も南部を中心に転戦し、様々な団体で活躍しました。1983年下期にWWFと再契約し、フレッド・ブラッシーをマネージャーに迎え、1983年12月26日にはマディソン・スクエア・ガーデンでバックランドからWWFヘビー級王座を奪取。しかし、約4週間後にはハルク・ホーガンに敗れて王座を失いました。その後もWWF全米侵攻の主力ヒールとして、サージェント・スローターとの抗争などを展開、レッスルマニア1回大会にも出場しました。1987年には薬物所持で逮捕され、WWFを解雇されました。

WWF復帰と引退後

1991年の湾岸戦争時、カーネル・ムスタファとしてWWFに復帰。旧敵スローターとタッグを組み、ホーガンらと抗争を繰り広げました。1992年に現役を引退しましたが、その後もインディー団体などで活動を続けました。2001年のレッスルマニア17では、ギミック・バトルロイヤルで優勝。2005年にはWWE殿堂入りを果たしました。

日本での活動

日本には新日本プロレス、全日本プロレス、UWFインターナショナルなどに参戦。アントニオ猪木と流血戦を繰り広げるなど、日本のプロレスファンにも記憶に残る活躍を見せています。

得意技と獲得タイトル

得意技はキャメルクラッチ、各種スープレックスなど。WWFヘビー級王座、WWFタッグ王座をはじめ、NWA各団体で数々のタイトルを獲得しました。

まとめ

アイアン・シークは、卓越したレスリング技術とカリスマ性、そして反米ギミックというキャラクターによって、プロレス史に大きな足跡を残したレスラーです。ヒールとして観客を沸かせ、WWE殿堂入りを果たした彼の功績は、これからも語り継がれるでしょう。彼の死は、プロレス界に大きな悲しみをもたらしました。

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