コスタリカの歴史

コスタリカの歴史は、中米地峡に位置するこの国が、先史時代から現代に至るまで、どのように発展してきたかを詳細に記したものです。

先史時代

コスタリカにおける人類の足跡は、約4万年前、ユーラシア大陸からベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸に到達した狩猟民族にまで遡ります。紀元前12000年から紀元前8000年頃には、現在のコスタリカに彼らが到達し、トゥリアルバでは石器が発見されています。その後、紀元前8000年から紀元前4000年の間に植物栽培が始まり、定住生活が広がりました。

紀元前1000年頃までには、ユカイモ、サツマイモ、トウモロコシなどを栽培する農耕民族へと移行し、食料貯蔵用の土器（テコマテ）が使われ始めました。紀元800年頃には、首飾り、メタテ、オカリナといった芸術的な土器が製造され、人口増加に伴い部族社会が形成されました。500年には、カシケ（首長）を頂点とした階級社会が誕生し、交易を通じてパナマ、コロンビア、エクアドルなどとの交流も行われました。また、コスタリカ南部では石球が盛んに造られ、その意味や用途は現在も謎に包まれています。

カシカスゴ制度は1550年頃まで続き、後期には階層分化が進み、特権階級と奴隷階級に分かれ、集落間の衝突も頻発しました。16世紀初頭には人口は約40万人に達し、地域ごとに異なる文化を持つ部族社会が形成されました。現代のコスタリカにおける先住民の割合はわずか2%程度ですが、1977年に制定された先住民法により、彼らの土地や居住環境が保護されています。

スペイン植民地時代

1502年、クリストファー・コロンブスがヨーロッパ人として初めてコスタリカに上陸しました。当時、約40万人の先住民が生活していましたが、スペイン人との接触や彼らが持ち込んだ感染症により、人口は激減しました。1519年から始まったスペイン人による中米地峡征服は、1522年のニコヤ地方の探検から始まり、1524年にはビリャ・ブルセラスが建設されましたが、先住民の攻撃により消滅しました。その後もカリブ海沿岸では武力衝突が繰り返され、1544年には一時的に放棄されました。

中央盆地においても、1561年からの探検と調査を経て、1564年にカルタゴが建設されました。その後、交易が活発化し、17世紀にはカカオ輸出が盛んになりましたが、他の地域との競争に敗れ衰退しました。労働力不足から黒人奴隷が導入されましたが、その数は限られていました。18世紀に入ると、首都カルタゴ周辺の人口増加に伴い、サンホセ、エレディア、アラフエラなどの新しい町が建設され、工芸品生産で財を成した人々が社会を支配しました。また、スペイン・ブルボン朝によるタバコとアルコールの独占販売は、コスタリカ内部での生産を一時的に活性化させました。

中央アメリカの独立

1812年、カディス憲法の制定を機に、各地にカビルド（市参事会）が誕生し、地域の独自性が強化されました。1822年のメキシコ独立はコスタリカ住民に衝撃を与え、独立への機運が高まりました。

コスタリカは当時、カルタゴ、エレディア、サンホセ、アラフエラの4つの都市の集まりであり、それぞれの都市が独自の対応を模索しました。カルタゴとエレディアはメキシコ帝国との合併を提唱しましたが、サンホセとアラフエラは独立共和国の設立を主張し、対立しました。この対立は1823年4月5日のオチョモゴの会戦に発展し、サンホセが勝利しました。その後、メキシコ帝国が崩壊し、中央アメリカ連邦共和国が成立しましたが、1838年にコスタリカは単独で独立を果たしました。中米連邦の瓦解には、地理的な問題も影響していました。

ブラウリオ・カリーリョによる独裁政権が一時的に誕生しましたが、1842年にはフランシスコ・モラサンによって国外追放され、その後、モラサンも処刑されました。政治的な混乱が続く中で、1844年には直接選挙制を含む新憲法が制定されましたが、間接選挙制に戻されました。

独立後のコスタリカ経済を支えたのはコーヒーでした。1830年頃からコーヒー栽培が拡大し、1850年に入るとカルタゴ、エレディア、アラフエラに広がりました。1854年、ニカラグアの内戦に介入したアメリカの傭兵ウィリアム・ウォーカーを撃退する「国民戦争」を経て、コスタリカは独立を守りました。しかし、その後の政治情勢は不安定で、1870年にトマス・グアルディア=グティエレス将軍が政権を握るまで、権力者の交代が断続的に行われました。グアルディア将軍は近代国家と社会の創造を目指し、1890年頃まで改革を続けました。1889年11月7日は、コスタリカ民主主義の原点とされています。

闘争と民主主義

1870年、グアルディアはイギリスとの間に巨額の借款契約を結び、大西洋鉄道の敷設を計画しましたが、頓挫しました。1871年、バナナ栽培が導入され、1884年にはアメリカのマイナー・キースが鉄道完成と引き換えにバナナ産業の権利を獲得し、1899年にユナイテッド・フルーツを設立し、カリブ海全域のバナナ産業を独占しました。鉄道建設やバナナ産業には多くの労働者が集まり、労働運動も活発化しました。1913年には直接投票権が承認され、政治責任が明確化されました。

1920年代から国家はインフラ整備に力を入れ、教育、保険、年金、公衆衛生などの設備が整えられ、大衆文化も発展しました。しかし、コーヒーとバナナのモノカルチャー経済は脆弱で、1927年の価格崩壊や1929年の世界恐慌により経済は深刻なダメージを受けました。

政治不安と経済不況

1929年の世界恐慌の影響で、コスタリカの輸出額は激減し、国家財政は赤字に陥りました。政府は経済への介入を強化し、コーヒー保護協会設立や最低賃金設定、銀行改革などの政策を実施しました。1939年の第二次世界大戦勃発により再び経済は不況に陥りました。1940年には社会民主主義のラファエル=アンヘル・カルデロン=グアルディア政権が誕生し、社会保障制度が確立されましたが、富裕層の反発を招きました。1948年の選挙では、カルデロン派の支持者が選挙結果に不満を持ち、内戦へと発展しました。この内戦でホセ・フィゲーレス・フェレールが勝利し、軍隊が廃止され、警察がその役割を引き継ぎました。1949年には新憲法が施行され、親米を基調とし、コスタリカは中米諸国で唯一軍隊を持たない国となりました。

1950年から1973年の間、コスタリカは人口が200万人に増加する人口爆発を経験し、経済も発展しましたが、外資系工業の成長に伴い財政赤字も拡大しました。1980年にはコスタリカ経済は崩壊しました。1978年にはサンディニスタ民族解放戦線が全面蜂起し、コスタリカもニカラグア革命を支援しました。その後、コスタリカはアメリカ合衆国による対ニカラグア作戦の基地となり、中立原則が揺らぎました。1981年には対外債務の支払い停止を宣言し、1982年にコスタリカはアメリカの支援を受け、経済モデルの変革に取り組みました。

近現代

経済モデルの転換と外国からの資金援助により、コスタリカ経済は安定し始めましたが、この是非をめぐり二大政党の時代が始まりました。アメリカ合衆国は、共産主義に対抗するため、コスタリカの軍国主義化を強く求めましたが、コスタリカは中立政策を維持しました。1986年にはオスカル・アリアス・サンチェスが大統領に就任し、中米和平の仲介役となり、1987年にノーベル平和賞を受賞しました。1990年には初のPUSC政権が誕生しましたが、財政赤字に対応するため圧政を行いました。その後も政治的な不安定さは続き、汚職事件やアメリカのアフガニスタン攻撃支持などが起こりました。2010年には初の女性大統領であるラウラ・チンチジャが当選しました。

コスタリカは、その歴史を通して、多様な文化と政治的変遷を経験してきました。その中で、民主主義を追求し、軍隊を持たない国家として独自の道を歩んでいます。

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