サンザシ属

サンザシ属（Crataegus）について

サンザシ属は、バラ科に属する植物の一群で、主に北半球の温帯地域に広く分布しています。日本では、中国原産の `Crataegus cuneata` がサンザシとしてよく知られています。

特徴

サンザシ属の植物は、一般的に落葉性の灌木であり、多くの種に棘があるのが特徴です。樹高は2〜3メートル程度のものが多いですが、セイヨウサンザシのように数メートルに達する種類もあります。春には白い花をたくさん咲かせ、中にはピンク色を帯びたものもあります。花後には小さな果実を実らせ、この果実の中に1〜5個の種子が含まれています。葉や果実は野生動物や昆虫の食料としても利用されます。

繁殖は実生や接ぎ木によって容易に行うことができ、特にザイフリボク属やナナカマド属との相性が良いとされています。

分布と種

サンザシ属は、交雑しやすい性質を持つため、過去には1000種以上が記録されました。現在では約140種が分類されています。ヨーロッパには約20種、中国には約18種の原産種がありますが、北米には膨大な野生種が存在し、原種が特定しにくい状況です。

日本では、クロミサンザシとオオバサンザシの2種が自生しています。クロミサンザシは北海道と長野県、オオバサンザシは北海道の根室地方で見られます。

利用

サンザシ属の植物は、古くから園芸や果実の利用のために栽培されてきました。ヨーロッパでは、生命力の象徴とされるとともに、独特の香りが魔除けとして利用されています。玄関先のリース飾りやメイポールなどに用いられることがあります。

生薬としての利用

サンザシやオオミサンザシの果実を乾燥させたものは、生薬名で「山査子（さんざし）」と呼ばれ、消化吸収を助ける効果があります。加味平胃散や啓脾湯などの漢方薬に配合されています。

セイヨウサンザシの果実や葉は、心悸亢進や心筋衰弱などの心臓病の治療に用いられます。現代のハーブ療法では、動脈硬化の原因となる血管壁の蓄積物を軽減する効果も期待されています。

ロシアでは、サンザシは「バヤーリシュニク」と呼ばれ、アルコールに浸して薬用成分を抽出したチンキが薬局で販売されています。ただし、安価な代用酒として飲用されることもあり、メタノールを含む不正な製品による中毒事故も発生しています。

食用としての利用

サンザシの果実は、甘酸っぱい味が特徴で、中国料理店などで中国酒として提供されることがあります。また、ボルスやデ・カイパーなどのリキュールメーカーからは、スロー・ジンリキュールとして販売されています。

中国では、果実を潰して砂糖や寒天と混ぜ、棒状に成形して乾燥させたドライフルーツや、「山査子餅（シャンジャーズビン）」と呼ばれる円柱状の薄いスライス状の菓子が一般的です。山査子餅は、酢豚などの料理にも使われます。

その他、「山査子糕（シャンジャーズガオ）」という羊羹状の菓子や、竹串に刺して飴をかけた「冰糖葫芦（ビンタンフール）」という駄菓子も人気があります。

メキシコでは、`Crataegus pubescens` の果実が「テホコテス」と呼ばれ、生食や調理に使われるほか、ジャムやキャンディの材料としても利用されています。

主な種

`Crataegus cuneata` (サンザシ)
`Crataegus monogyna` (セイヨウサンザシ)
`Crataegus pinnatifida` (オオミサンザシ)
`Crataegus pubescens` (テホコテス)

参考文献

レベッカ・ジョンソン、スティーブン・フォスター、ティエラオナ・ロウ・ドッグ、デビッド・キーファー 著、関利枝子、倉田真木 訳『メディカルハーブ事典』日経ナショナル ジオグラフィック社、2014年。ISBN 9784863132726。
辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、70 - 72頁。ISBN 4-12-101834-6。

関連項目

清岡卓行 - 『随筆集 サンザシの実』
SOYJOY - 大塚製薬が販売する大豆を主原料とした軽食。サンザシ味がある（ドライフルーツとしてバーに含まれている）。

外部リンク

オオミサンザシ（キレバサンザシ、チャイニーズホーソーン） - 素材情報データベース＜有効性情報＞（国立健康・栄養研究所）
セイヨウサンザシ - 同

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