サンジャク (地名)

サンジャク（ラシュカ）について

サンジャク（セルビア語: Санџак / Sandžak、ボスニア語: Sandžak、アルバニア語: Sanxhak / Sanxhaku、トルコ語: Sancak）、またはラシュカ（セルビア語: Рашка / Raška）は、セルビアとモンテネグロの国境にまたがる地域です。この地域は、イスラム教徒であるボシュニャク人が多いことで知られています。

名称の由来

サンジャクという名称は、1912年のバルカン戦争までこの地を支配していたオスマン帝国の行政区画である「イェニ・パザル・サンジャク」（Yeni Pazar sancağı、意味は「ノヴィ・パザル県」）に由来します。セルビア人は、この地域を「ラシュカ州」（Рашка Област / Raška Oblast）と呼ぶこともあります。

地理

サンジャクは、北西のボスニア・ヘルツェゴビナ国境から南東のコソボ国境にかけて広がっており、面積は8,403平方キロメートルです。セルビア側には、ノヴィ・パザル、シェニツァ、トゥティン、プリイェポリェ、ノヴァ・ヴァロシュ、プリボイの6つの自治体があります。モンテネグロ側には、プリェヴリャ、ビイェロ・ポリェ、ベラネ、ロジャイェ、プラヴの5つの自治体があります。アンドリイェヴィツァ（モンテネグロ）がサンジャクに含まれる場合もあります。

サンジャク最大の都市はノヴィ・パザルで、人口は約55,000人です。その他の主要都市としては、プリェヴリャ（23,800人）、プリボイ（19,600人）などがあります。

歴史

この地域には、古代にはトラキア人が居住していました。紀元1世紀にはローマ帝国に征服され、6世紀から7世紀にかけてスラヴ人、セルビア人の部族が住み着きました。

中世には、セルビア人の国家であるラシュカが成立しました。ラシュカの首都はラスであり、現在のノヴィ・パザルの場所に位置していました。15世紀にオスマン帝国に征服されるまで、この地域はセルビア人国家の領土でした。

オスマン帝国の支配下では、ノヴィ・パザル・サンジャクはボスニア州（1867年 - 1908年）の一部でしたが、1878年にコソボ州（1877年 - 1913年）の一部となりました。1878年のベルリン会議によって、オーストリア＝ハンガリー帝国軍のサンジャクへの駐留が認められ、1909年まで続きました。1912年10月、バルカン戦争においてサンジャクはセルビアおよびモンテネグロの軍に制圧され、両国によって分割されました。

バルカン戦争後、多くのボシュニャク人およびアルバニア人のイスラム教徒住民が、セルビア・モンテネグロ当局の弾圧を逃れてトルコへ脱出しました。このイスラム教徒のトルコへの脱出は、1912年から1970年ごろまで続きました。現在トルコに住む100万人以上の住民が、サンジャク出身者かその子孫であると言われています。

第一次世界大戦中の1914年から1918年まで、サンジャクはオーストリア＝ハンガリー帝国の占領下に置かれました。1918年、ユーゴスラビアの前身であるセルブ・クロアート・スロヴェーン王国の成立（1922年）に先立って、セルビアとモンテネグロが統合しました。1929年から1941年まで、サンジャクは新設されたユーゴスラビアのゼタ・バノヴィナ州に組み込まれました。

第二次世界大戦中、サンジャクの大部分はイタリアの占領下に置かれ、イタリアが支配するモンテネグロ行政区に編入されました。1943年にイタリアが敗戦してからは、ナチス・ドイツの占領下に置かれました。終戦後、サンジャクは再び1913年の分割協定に基づいてセルビアとモンテネグロによって分割されました。

1990年代のユーゴスラビア紛争では、サンジャクは比較的平穏でしたが、ボスニア紛争やコソボ紛争の影響を受け、住民の間に民族間の緊張関係が生じました。コソボ紛争では、NATOによる空爆も行われました。紛争期間中、多くのボシュニャク人が地域を去り、1992年から1995年の間には、プリボイ近くのシェヴェリンやプリェヴリャ近くのブコヴィツァなどで、ボシュニャク人に対する集団殺戮事件が発生しました。

2000年のセルビアの民主化以降、ボシュニャク人はセルビア・モンテネグロで政治に参加できるようになりました。しかし、統計調査によると、この地域からは全民族で共通した人口流出が見られます。

民族構成

サンジャクには、ボシュニャク人、セルビア人、モンテネグロ人、民族的ムスリムなど、多様な民族が居住しています。ボシュニャク人は、サンジャクの総人口の約半数を占めています。彼らの多くは、17世紀以降にモンテネグロから移住してきた人々の子孫です。

セルビア人は、セルビア領サンジャクの西部およびモンテネグロ領サンジャクで多数派を占めています。モンテネグロ領サンジャクのプリェヴリャは、セルビア人が多数派となっている最大の町です。

政治

ユーゴスラビア時代には、サンジャクの自治を求めるボシュニャク人の政治家も存在しました。セルビアとモンテネグロがそれぞれ独立してからは、サンジャクは2つの独立国に分断された状態となり、自治を求める主張は国境線の変更を伴うものとなりました。現在、ボシュニャク人が多数派を形成するのはセルビア領サンジャク東部の3自治体と、モンテネグロ領サンジャク東部の2自治体に留まっています。

人口動態

セルビアおよびモンテネグロの2002年および2003年の人口調査によると、サンジャク地域全体の人口は420,259人でした。うち、ボシュニャク人および民族的ムスリムの人口は合わせて220,065人で、サンジャクの人口全体の52.36%を占めていました。

関連項目

大クロアチア
ヴォイヴォディナ
ユーゴスラビア紛争
ボシュニャク人 / ボスニア語
* スタリ・ラスとソポチャニ

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