サード・ストリーム

サード・ストリーム：ジャズとクラシックの融合

サード・ストリーム（Third stream）は、ジャズとクラシック音楽を融合させた音楽ジャンルであり、「第3の流れ」を意味します。この用語は、1957年に作曲家ガンサー・シュラーがブランダイス大学での講義で提唱しました。サード・ストリームは、一般的に即興演奏（インプロヴィゼーション）を重要な要素としています。

シュラーによる定義

1961年、シュラーはサード・ストリームを「ジャズとクラシック音楽のほぼ中間に位置する新しいジャンルの音楽」と定義しました。彼は「定義上、『サード・ストリーム・ジャズ』のようなものは存在しない」と主張し、サード・ストリームに対する批判として、両ジャンルの批評家がそれぞれの音楽が他によって汚されることを嫌う点を指摘しました。また、ジャズ・ミュージシャンからは、自分たちの伝統への攻撃とみなされることが多かったと述べています。シュラーは、「音楽を『別個の第3の流れ』として指定することによって、他の2つの主流は融合の試みの影響を受けずに進むことができる」と述べています。

しかし、サード・ストリームは、2つの異なるスタイルを組み合わせることで、それぞれの魅力を損なうという批判もありました。一方で、この概念を興味深い音楽の発展と捉える意見も存在します。

1981年、シュラーは「サード・ストリームとは何でないか」というリストを提示しました。

弦楽器を伴うジャズではない
「クラシック」な楽器で演奏されるジャズではない
ジャズ奏者が演奏するクラシック音楽ではない
ビバップの交換の間にラヴェルやシェーンベルクを少し挿入することでも、その逆でもない
フーガ形式のジャズではない
ジャズ奏者が演奏するフーガではない
* ジャズやクラシック音楽を廃止するようには設計されていない。これは、今日のクリエイティブなミュージシャンにとって、多くの選択肢の1つにすぎない

作曲と録音

シュラーは、自らミュージシャンのグループを率いて、アルバム『Music for Brass』（1957年）と『Modern Jazz Concert』（1958年）を録音しました。これらのアルバムは、後に1枚のアルバム『The Birth of the Third Stream』にまとめられました。初期の作品には、シュラー、J・J・ジョンソン、ジョン・ルイス、ジミー・ジュフリーによるものがあります。セカンド・アルバムでは、シュラー、ジュフリー、ジョージ・ラッセル、チャールズ・ミンガス、ハロルド・シャペロ、ミルトン・バビットらの作品を、ジャズとクラシックのミュージシャンが組み合わせて演奏しました。この音楽は、1957年のブランダイス芸術フェスティバルで初演され、「新しい総合」というシュラーのコメントに影響を与えました。

シュラーの影響を受けた作曲家には、ドン・エリス、エディ・ザウター、ウィリアム・ルッソ、アンドレ・オデール、ラロ・シフリン、テオ・マセロ、ゲイリー・マクファーランド、フリードリヒ・グルダなどがいます。また、ロバート・プリンス、ロン・カーター、エディ・ダニエルズ、ウィリアム・カネンギザー、ジャック・ルーシェ、モダン・ジャズ・カルテット、ジェームス・ニュートン、ラルフ・タウナー、タートル・アイランド・カルテット、メアリー・ルー・ウィリアムス、ブラッド・メルドー、エバーハルト・ウェーバーといった音楽家たちもサード・ストリームから影響を受けました。

サード・ストリームに分類される作品としては、マイルス・デイヴィスの『スケッチ・オブ・スペイン』、エディ・ザウターのサックスと弦楽器のための組曲『Focus』、シュラーの『Transformation』、ウィリアム・ルッソの『An Image of Man』、ダリオ・サヴィーノ・ドロンゾとピエトロ・ガロによる『Reimagining Opera』、ジュフリーの『Piece for Clarinet and String Orchestra』、J・J・ジョンソンの『Poem for Brass』、ジョージ・ラッセルの『All About Rosie』、マイケル・ギブスの『Seven Songs for Quartet and Chamber Orchestra』、クラウス・オガーマンの『Symbiosis』、キース・ジャレットの『Arbour Zena』などが挙げられます。

作曲家と演奏家

シュラーは、ベーラ・バルトークが自身の音楽に東ヨーロッパのフォークミュージックを取り入れたことを例に挙げました。また、ポール・ホワイトマンは1920年代に自身のジャズバンドにストリング・セクションを導入し、1940年代にはアーティ・ショウも同様の試みをしています。これらのミュージシャンは、部分的な作曲を行い、即興演奏家をサポートしました。ジャズとクラシックを結びつけるより積極的な試みは、1949年のチャーリー・パーカー、1950年代のJ・J・ジョンソン、ジョン・ルイス、ウィリアム・ルッソによって行われました。

ジョージ・ガーシュウィンは、『ラプソディ・イン・ブルー』（1924年）でジャズと交響曲を融合させました。フランスの作曲家ダリウス・ミヨーは、『世界の創造』において、ジャズのフーガを含むジャズに触発された要素を使用しました。イーゴリ・ストラヴィンスキーは、『ラグタイム』や『ピアノ・ラグ・ミュージック』、そして1945年にクラリネット奏者ウディ・ハーマンと彼のオーケストラのために作曲された『エボニー協奏曲』などでジャズの要素を取り入れました。その他、ジョージ・アンタイル、レナード・バーンスタイン、アーロン・コープランド、モートン・グールド、パウル・ヒンデミット、エルンスト・クルシェネク、ボフスラフ・マルティヌー、モーリス・ラヴェル、ドミートリイ・ショスタコーヴィチ、ウィリアム・グラント・スティル、クルト・ヴァイルといった作曲家もジャズの要素を取り入れています。これらの例は、クラシック音楽の作曲家たちのジャズへの関心と理解を示すものと言えるでしょう。

レジナルド・フォーサイスは、1930年代から2つのジャンルを組み合わせた初期の音楽家の1人でした。彼は自分のスタイルを「新しい音楽」と呼びました。彼の音楽はアメリカでより好意的に受け入れられ、エリントン、ベニー・グッドマン、アール・ハインズとのコラボレーションにつながりました。アーティ・ショウは、1935年に珍しいアンサンブルである弦楽四重奏とジャズのリズムセクションを伴い、自身が演奏するクラリネットとサックスのための『Interlude in B-flat』を録音しました。ピアニストのアート・テイタムは、クラシックの技法を用いて、アントニン・ドヴォルザーク、ジュール・マスネ、アントン・ルビンシテインによる短い楽曲のジャズ・バージョンを録音しました。

スタン・ケントン・プログレッシブ・ジャズ・オーケストラやイノヴェーションズ・オブ・モダン・ミュージック・オーケストラのチーフ・アーキテクトであったピート・ルゴロは、ジャズと現代音楽の融合を追求しました。デューク・エリントンの音楽は、ドビュッシーやラヴェルの音楽と比較されることがあります。ウクライナのピアニスト、ニコライ・カプースチンは、ロシアのピアノ音楽の伝統とアート・テイタムやオスカー・ピーターソンのスタイルを融合させたジャズのイディオムによる楽曲を作曲しました。

作曲家のクシシュトフ・ペンデレツキは、自身の『Actions for Free Jazz Orchestra』において、作曲的にガイドされたフリー・ジャズ・インプロヴィゼーションを試みました。ハンス・ヴェルナー・ヘンツェは、フリー・ジャズを『Der langwierige Weg in die Wohnung der Natascha Ungeheuer』に取り入れました。

ニューイングランド音楽院

ガンサー・シュラーは、ニューイングランド音楽院（NEC）の会長在任中に、関連する学位プログラムを備えたサード・ストリーム部門を設立し、1973年にピアニスト・作曲家のラン・ブレイクを部門長に任命しました。ブレイクは、2005年に引退するまでこの部門を率い、音楽の可能性を広げました。

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