サーマーン・フダー

サーマーン・フダーは、8世紀前半に活躍した人物で、彼の子孫が中央アジアを支配したサーマーン朝（875年 - 999年）の創始者とされています。

生涯

サーマーン・フダーは、ウマイヤ朝のホラーサーン総督であったアサド・イブン・アブドゥッラーによって、ゾロアスター教からイスラム教に改宗したと伝えられています。彼はサーサーン朝の有力な一族の末裔であり、マー・ワラー・アンナフル地方の土着領主（ディフカーン）の家系であったとされています。

彼の子であるアサドは、アッバース朝カリフ・マアムーンに帰順し、ターヒル朝の始祖であるホラーサーン総督ターヒル・ブン＝フサインによって、この地域の支配権を認められました。アサドには4人の息子がおり、マアムーンは彼らにマー・ワラー・アンナフルの主要都市を分割して支配させました。具体的には、ヌーフにはサマルカンド、アフマドにはフェルガナ、ヤフヤーにはチャーチュ（タシュケント）、イルヤースにはヘラートの支配権が与えられました。これにより、サーマーン家はマー・ワラー・アンナフルにおける支配を確固たるものとしました。

873年にターヒル朝が滅亡し、ホラーサーン一帯が混乱すると、875年にアフマドの息子ナスル1世がアッバース朝カリフ・ムウタミドによってマー・ワラー・アンナフル地方の支配権を再び認められ、サーマーン朝が成立しました。ナスルの兄弟であるイスマーイール・ブン・アフマド（イスマーイール・サーマーニー）の時代には、首都がブハラに移されました。

名前について

「サーマーン・フダー」という言葉は、ペルシア語で「主人たるサーマーン」という意味を持ちます。8世紀頃のソグド語文書によれば、ソグディアナのオアシス都市とその周辺の村落を支配していた領主たちは、ソグド語で「フブ」や「フターウ」と呼ばれていました。「フダー」は「フターウ」のペルシア語形であり、これはソグド人が使用していた土着領主の称号がそのまま使用されたものと考えられます。

現代における位置づけ

現代のタジキスタンでは、タジク人のルーツをサーマーン・フダーに見出しています。タジキスタンの首都ドゥシャンベには、サーマーン・フダーの子孫でありサーマーン朝の2代君主であるイスマーイール・サーマーニーの像が飾られています。これは、彼がタジク民族の歴史において重要な人物として位置づけられていることを示しています。

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