シアーバターノキ

シアーバターノキ（Vitellaria paradoxa）

シアーバターノキは、アカテツ科に属する常緑性の小高木で、学名を Vitellaria paradoxa といいます。かつては Butyrospermum parkii というシノニムでも知られていました。この木は、シアバターの原料となることで広く知られています。ナイジェリアの言語に由来する「エミエミ（emi-emi）」という名称でも呼ばれることがあります。

生息地域

シアーバターノキは、アフリカのヴェルデ岬からチャドにかけて広がるサヘル帯に天然分布しています。この地域は「シアベルト」とも呼ばれ、16か国以上で自生が見られます。特にまとまった群生が見られるのは、ギニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェールといった地域です。これらの地域は年間降水量が1000ミリメートル以下であり、アブラヤシの栽培が困難なため、シアーバターノキは貴重な油脂源となっています。年間降水量が300ミリメートルや1800ミリメートルの地域でも、一部で生息が確認されています。生育域の平均気温は24 - 32℃で、最低気温は21℃、最高気温は36℃です。

シアーバターノキは、藪などに自生しますが、開けた場所の方が樹高が高くなり、果実の生産性も向上します。標高500から1500メートルのサバンナ地域に生育し、乾燥した粘土質、砂質、砂質粘土などの土壌で育ちます。サバンナ気候特有の強い乾燥に適応した、大きな根系を持っているのが特徴です。

概要

樹高は通常7メートルから25メートル程度まで成長しますが、農地で管理されているものは15から20メートル程度に保たれています。樹径は1メートルほどです。寿命は200年ほどで、花を咲かせるまでに0から12年、実を付けるまでにはさらに数年を要します。実をつける頻度は3年に一度程度です。

葉は互生で、薄く、長さ8から10センチメートルの細長い楕円形をしています。葉は小枝の先に集中してつきます。樹皮は硬く、亀裂が入っており、傷つけると白いラテックスが流れ出します。幹は厚いコルク質で覆われており、火に強い性質を持ちます。

樹形は様々で、一般的に枝が多く、樹冠が広く丸くなるものや、紡錘形のものなどが見られます。

花は黄色っぽいクリーム色で、葉の付け根に単生します。1つの小枝には10から40個の花が咲きます。通常、乾季の12月から4月にかけて開花し、この時期には落葉していることも多いです。ミツバチなどによって受粉され、開花から100から175日後の5月から9月にかけて果実が熟します。

果実は5から8センチメートルの卵形で、アボカドに似た形と味がします。果実は、コウモリ、ゾウ、鳥類など様々な生物によって食べられ、種子が散布されます。果肉の中にある種子は鶏卵ほどの大きさで固く、シアナッツと呼ばれます。果実1キログラムから150から300粒ほどの種子が取れ、重量比で約31パーセントにあたります。種子の中の胚はシアカーネルと呼ばれ、加工するとシアバターになり、採油後の滓は飼料として利用されます。

生育方法

一般的には種子から発芽させますが、接ぎ木による栄養繁殖で育てることも可能です。脂肪種子であるため、種子は乾燥に弱く、およそ1か月しか活力が保持されません。新鮮な種子の発芽率は高く、地中から主軸が立ち上がります。これは生育地域の野火が原因と考えられています。

人為的な栽培では、新鮮な種子を雨季の初めにポリエチレン製のポットなどに植えつけます。およそ40日で75から94パーセントが発芽し、数か月後に露地に植えられます。1ヘクタールあたり30から50本が目安とされます。根が発達しやすいため植え替えは難しいとされていますが、直播きの場合はネズミの食害などで発芽後の生存率が低下します。

参考文献

浅川澄彦「熱帯樹種の造林特性 シアーバターノキ」『熱帯林業』52号、P.71-74、2001年

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