シグナス CRS OA-7

シグナス CRS OA-7 ミッション

シグナス CRS OA-7（かつてはOrbital-7とも称されました）は、国際宇宙ステーション（ISS）へ物資を届けるオービタルATK社の無人宇宙補給船シグナスによる8回目の飛行であり、NASAとの商業補給サービス（CRS）契約に基づいたISSへの7回目の輸送ミッションです。

このミッションで使用された宇宙船は、『ジョン・グレン』と命名されました。これは、アメリカ初の地球周回軌道飛行を達成し、後に上院議員も務めた宇宙飛行士、ジョン・ハーシェル・グレン氏の功績を讃えたものです。グレン氏は、2021年までは宇宙飛行を経験した最高齢の人物としても知られていました。

開発と経緯

オービタルATK（当時はオービタル・サイエンシズ）とNASAは、商業軌道輸送サービス（COTS）計画を通じて、ISSへ商業的に貨物を輸送するための新しい宇宙輸送システムを共同で開発しました。COTS計画の下で、オービタル・サイエンシズは中型ロケットであるアンタレスと先進的なシグナス宇宙船を設計・製造し、与圧貨物モジュールは提携企業であるタレス・アレーニア・スペースから供給を受けました。

2013年9月にCOTS実証飛行が成功した後、オービタルATKはCRS計画に基づき、2014年中に2回のISS補給ミッションを実施する契約を結びました。ところが、2014年に行われた3回目の打ち上げミッションであるシグナス CRS Orb-3は、使用されたアンタレス130ロケットが離床直後に爆発するという事故に見舞われ、残念ながら失敗に終わりました。

この事故を受け、同社はアンタレス100シリーズの使用を中止し、新たな推進システムの導入を急ぎました。改良されたアンタレス230型ロケットでは、第1段エンジンに新たに製造されたRD-181エンジンを採用することで、信頼性とペイロード輸送能力の向上が目指されました。その間、オービタルATKはアンタレスの開発・改良期間中にミッションを遂行するため、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス（ULA）と契約し、2機のアトラスVロケットを使用してCRS OA-4（2015年12月）とCRS OA-6（2016年3月）をフロリダ州のケープ・カナベラルから打ち上げました。

アンタレス230型の初ミッションであるシグナス CRS OA-5は、計画より遅れて2016年10月に行われましたが、無事成功しました。今回のOA-7ミッションは、オービタルATKが当初のCRS契約で負っていたペイロード輸送義務を遂行するために重要な役割を果たしました。NASAからの強い要望に応え、OA-7ミッションではISSへの輸送貨物量を最大化するため、アンタレスではなく、より強力なアトLAS Vロケットが打ち上げ手段として選択されました。これにより、アンタレスによる次のフライトは、2017年11月に実施されたNASAとのCRS延長契約の初ミッション（OA-8E）へと変更されました。

シグナス宇宙船の製造と組み立ては、バージニア州ダレスで行われました。宇宙船のサービスモジュールと与圧貨物モジュールの結合は打ち上げ施設で実施され、ミッションの運用はバージニア州ダレスとテキサス州ヒューストンにある管制センターから行われました。

ミッションの実行

シグナス CRS OA-7は、2017年4月18日 15時11分26秒（協定世界時）に、アトラスV 401ロケットに搭載されて打ち上げられました。貨物宇宙船は、打ち上げから数日後の2017年4月22日にISSへ接近し、ロボットアーム「カナダアーム2」によって捕捉・係留されました。宇宙船は約43日間、ISSに接続された状態でした。

2017年6月1日、NASAは当初の予定よりも約1ヶ月早くシグナスをISSから分離する意向を発表しました。係留解除に向けた準備として、2017年6月2日にはカナダアーム2がシグナスを把持しました。そして、2017年6月4日の早い時間に、宇宙船をISSに固定していたボルトが外され、11時05分（協定世界時）にカナダアーム2によってISSから解放されました。ISS滞在中の宇宙飛行士たちが、シグナスを放出に適した姿勢へ移動させ、13時10分（協定世界時）にアームからリリースされました。その直後、シグナスはISSから安全に離れるための一連の軌道離脱噴射を開始しました。

再突入と科学実験

ISSからの分離後、再突入の前にいくつかの科学実験が行われました。同日20時00分頃（協定世界時）には、シグナスに搭載されていたSAFFIRE III実験装置の実行コマンドが送信されました。この実験では、宇宙船の素材サンプルが微小重力環境下でどのように燃焼するかを調べるために、サンプルに制御された着火が行われました。

2017年6月8日には、4機のLEMUR-2キューブサットが放出されました。2機は20時46分（協定世界時）に、残りの2機は23時46分（協定世界時）にそれぞれ展開されました。シグナスの大気圏再突入は2017年6月11日に計画されており、宇宙船が地球の大気圏で分解を開始する際に、RED-Data2実験の一環として3機の小型探査機が放出されました。これらの探査機は、再突入時に高温となった物質の挙動に関するデータを収集するとともに、宇宙船がどのように分解していくかをより明確にするための情報を提供しました。

ミッション完了

2017年6月11日 17時08分（協定世界時）、オービタルATKは宇宙船『ジョン・グレン』の大気圏再突入とそれに伴う破壊をもって、OA-7ミッションが正式に終了したと発表しました。宇宙船はニュージーランド東方の太平洋上空で安全に再突入し、約1,950 kgの不要になった廃棄物やハードウェアが処分されました。

宇宙船と貨物

このミッションは、オービタルATKがNASAと結んだ10回の商業補給サービス契約における7回目の飛行でした。また、より大きな拡大型シグナス与圧貨物モジュール（PCM）を使用した4回目のミッションでもありました。宇宙船本体と搭載される貨物は、ケネディ宇宙センターの宇宙ステーション整備施設にて準備されました。

OA-7ミッションでは、総計3,459 kgの物資が軌道上に輸送されました。このうち3,376 kgは、ISSへ運ばれた厳重に梱包された与圧貨物でした。これには、宇宙飛行士の生活必需品やISSでの科学実験に必要な様々な資材が含まれていました。残りの83 kgは非与圧貨物で、ISSからの係留解除後に展開された4機のLEMUR-2キューブサットが含まれます。さらに、OA-7には、ISSの「きぼう」モジュールから別途展開される予定の34機のキューブサットも搭載されており、その中にはQB50プログラムの一環として大学生によって開発された28機が含まれていました。

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