シグナス OA-8E

OA-8Eミッション

OA-8Eミッションは、オービタルATK社が国際宇宙ステーション（ISS）へ物資を輸送するために実施した無人宇宙補給ミッションです。これは、NASAとオービタルATK社が結んだ商業補給サービス（Commercial Resupply Services, CRS）契約に基づき行われた飛行であり、当初の契約に加えて追加で実施された「延長（Extended）」ミッションとして位置づけられています。2017年11月12日、協定世界時（UTC）12時19分51秒に打ち上げられました。

このミッションの背景には、NASAが進めるISSへの商業貨物輸送計画があります。NASAは、民間の宇宙開発企業と協力して、ISSへの補給を担う新しい宇宙輸送システムを開発しました。この商業軌道輸送サービス（Commercial Orbital Transportation Services, COTS）計画のもと、当時のオービタル・サイエンシズ社（後にオービタルATK社となる）は、中型ロケット「アンタレス」と先進的な宇宙船「シグナス」の開発、製造を担当しました。特に、シグナス宇宙船の与圧貨物モジュール部分は、提携企業であるタレス・アレーニア・スペース社から供給を受けています。

オービタル・サイエンシズ社は、2013年9月にCOTS計画の実証飛行を成功させました。この実績に基づき、同社はNASAとの商業補給サービス契約を獲得し、2014年中に2回のISS補給ミッションを行うことになりました。しかし、続く3回目の打ち上げとなるシグナス CRS Orb-3ミッションは、打ち上げに使用されたアンタレス130ロケットが離床直後に爆発するという事故により失敗に終わってしまいました。

この深刻な事態を受け、オービタルATK社はアンタレスロケットの改良を決断します。信頼性向上とペイロード能力の増強を目指し、旧型のアンタレス100シリーズの運用を停止し、新型の第1段エンジンとしてロシア製のRD-181を搭載したアンタレス230の開発を急ぎました。新型ロケットが準備できるまでの間、同社はISSへの補給義務を果たすため、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス（ULA）社と契約し、アトラスVロケットを使用して2回のシグナスミッション（CRS OA-4およびCRS OA-6）をフロリダ州のケープ・カナベラルから実施しました。

その後、新型アンタレス230が完成し、2016年にはこの改良型ロケットを用いたシグナスミッション（CRS OA-5およびCRS OA-7）が行われました。これらの飛行により、オービタルATK社は、先のOrb-3ミッションの失敗を含めても、わずか計7回の飛行で当初NASAと契約した貨物輸送の義務を全て達成することができました。

OA-8Eミッションは、このように当初契約を完了した後に実施された、追加の輸送ミッションです。新しい商業補給サービスフェーズ2（CRS-2）契約が発効するまでの間、NASAがISSへの継続的な補給を必要としたため、このミッションが計画されました。「OA-8E」という名称のうち、「E」は「Extended（延長）」を意味しており、前述の通り、改良型アンタレスやアトラスVの使用により当初契約の貨物輸送を早期に完了できた結果、追加で実施された貨物輸送であることを示しています。

ミッションに使用されたシグナス宇宙船は、オービタルATK社の施設があるバージニア州ダレスで製造および組み立てが行われました。サービスモジュールと与圧貨物モジュールの結合は、打ち上げが行われる射場で行われました。ミッションの運用は、バージニア州ダレスとテキサス州ヒューストンにある管制センターから実施されました。

このミッションに投入されたシグナス宇宙船は、オービタルATK社の伝統に従い、特定の人物にちなんで命名されました。宇宙船の名前は「ジーン・サーナン」です。ユージン・サーナン氏は、NASAのアポロ計画に参加した宇宙飛行士であり、特にアポロ17号の船長として、2023年現在において最後に月面を歩いた人物として知られています。また、彼は月軌道上と月面上の両方を訪れた3人の宇宙飛行士のうちの一人でもあります。OA-8Eミッションでは、拡大型のシグナス与圧貨物モジュールが用いられ、これはこの拡大型モジュールとしては5回目の使用となりました。

打ち上げは、当初2017年11月10日UTC 13時03分に予定されていましたが、後に11月11日UTC 12時37分24秒に変更されました。しかし、この11月11日の打ち上げ試みも、カウントダウンが残り1分を切ったところで、打ち上げ禁止エリアに航空機が侵入したため、直前で中止され、24時間延期となりました。最終的に、アンタレスロケットは8機目のシグナス貨物宇宙船（ジーン・サーナン）を、予定から2日遅れの2017年11月12日日曜日、UTC 12時19分51秒に成功裏に打ち上げました。

このミッションで輸送された貨物の総重量は3,338 kg（7,359 lb）に及びました。内訳は以下の通りです。

与圧貨物: 3,229 kg (7,119 lb)
乗員補給品: 1,240 kg (2,730 lb)
科学研究機材: 740 kg (1,630 lb)
船外活動装備: 132 kg (291 lb)
宇宙船資材: 851 kg (1,876 lb)
コンピューター資材: 34 kg (75 lb)
* 非与圧貨物: 109 kg (240 lb)

これらの物資は、ISS滞在中の宇宙飛行士の生活に必要なもの、様々な科学実験を行うための機材、宇宙船の維持に必要な部品など、多岐にわたるものでした。

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