シャルル・ジュール・アンリ・ニコル

シャルル・ジュール・アンリ・ニコル

シャルル・ジュール・アンリ・ニコル（1866年9月21日 - 1936年2月28日）は、フランスの優れた細菌学者であり、1928年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。彼の研究は、特に感染症の理解と予防に大きな影響を与えた。

生涯

ニコルはフランスのルーアンで生まれ育った。1892年にパリのパスツール研究所に所属し、翌年には医学の学位を取得。彼の専門は細菌学で、同年にルーアン医学校の教授に就任する。1902年までこの職に留まり、その後1896年には細菌学研究所の所長に任命された。

1903年からは、フランスの植民地であったチュニスにあるパスツール研究所の所長として長いキャリアを築く。彼のノーベル賞受賞のきっかけとなった重要な研究は、チュニスにおいて行われたものだ。1932年には名門のコレージュ・ド・フランスで教授となるが、1936年にチュニスで生涯を終えた。

業績

チフスの感染経路の発見

ニコルはチュニスにおいて発疹チフスが流行していることに気づき、その感染のメカニズムを探ることに万全を期した。明らかにしたのは、病院内に入院している患者は院外にいる患者と比較して発疹チフスに感染しないことだった。この観察を基に、患者の衣服に注目し、それが感染の原因となっていることを推測した。特に、衣服に付着したシラミが関与していることに着目した。

ニコルは1909年に、患者から集めたシラミにチンパンジーやモルモットを用いて実験し、発疹チフスの発病を確認した。この研究の成果は、第一次世界大戦が始まった1914年に、発疹チフスの予防に大いに役立つこととなった。

発疹チフスワクチンの研究

ニコルは発疹チフスワクチンの開発にも取り組んでいたが、成果を上げられず、1930年に生物学者のルドルフ・ヴァイグルにその研究を引き継ぐ。ヴァイグルが開発したワクチンは、大量生産には向かず、危険を伴うものだったが、時が経つにつれ、安全で効率的な生産手法が確立されていった。

その他の業績

ニコルは発疹チフスの研究に限らず、麻疹やマルタ熱に関する研究でも知られている。また、バベシア症の感染経路の詳細な分析や、マルタ熱に対する予防接種の導入など、多岐にわたる感染症の研究に従事した。

彼の研究には、トラコーマ、結核、インフルエンザ、牛疫、猩紅熱、悪性腫瘍なども含まれており、寄生性原生生物トキソプラズマの特定に成功した点も注目される。

さらに、Le Destin des Maladies infectieuses、La Nature, conception et morale biologiques、Responsabilités de la Médecine、La Destinée humaineなど、様々な細菌学に関する著作を残している。これらの業績は、彼の科学的な貢献を示すものであり、感染症研究の発展において重要な意義を持っている。

もう一度検索