ステップ・バック〜ルーツ2

『ステップ・バック〜ルーツ2』（Step Back）

ブルース・レジェンド、ジョニー・ウィンターがその生涯で最後にレコーディングを行ったスタジオ・アルバムが『ステップ・バック〜ルーツ2』です。この作品は、ウィンターが2014年7月16日に亡くなった後、同年9月に彼の遺作として発表されました。原題は『Step Back』です。

背景

本作は、2011年に発表された前作『ルーツ』の続編として位置づけられています。前作と同様、ウィンターが音楽的な影響を受けたブルース・ミュージシャンたちの楽曲を取り上げ、多数のゲスト・ミュージシャンを迎えて制作されました。ウィンターは2013年の時点で既にこのアルバムの構想を練っており、同年のインタビューでは、ビリー・ギボンズ、エリック・クラプトン、ドクター・ジョンといった実際に参加したアーティストに加え、最終的には実現しなかったグレッグ・オールマン、マーク・ノップラー、エリック・ジョンソンといった面々もゲスト候補として挙げていたことが明かされています。

収録曲の一つ、ライトニン・ホプキンスのカヴァー「モジョ・ハンド」でギターをフィーチャーされたジョー・ペリーは、「ジョニー・ウィンターがいなければ、私はギターを手にすることはなかっただろう」と、彼からの影響の大きさを語っています。

ウィンターが存命中の2014年6月には、本作のリリース予定日が報じられました。当時、ウィンター自身はアルバムについて「古い音楽を聴く機会の少ない現代の人々にも届けたい」とコメントしており、ブルースへの情熱を持ち続けていたことがうかがえます。

反響と評価

本作は、リリース後に批評的にも商業的にも大きな成功を収めました。特に母国アメリカでは、総合アルバム・チャートであるBillboard 200で最高17位を記録し、自身のキャリアにおけるそれまでの最高順位であった『スティル・アライヴ・アンド・ウェル』（1973年）の22位を上回る快挙となりました。さらに、『ビルボード』のブルース・アルバム・チャートおよびインディペンデント・アルバム・チャートでは首位を獲得し、ロック・アルバム・チャートでも3位を記録するなど、ジャンルを超えて広く受け入れられました。

この成功は、主要な音楽賞でも評価され、2015年2月に開催された第57回グラミー賞では、最優秀ブルース・アルバム賞を見事受賞しました。

ヨーロッパでも好調なセールスを記録し、スイス、ドイツ、オーストリアといった国々では、ジョニー・ウィンターにとって初めてアルバム・チャート入りを果たし、いずれの国でもトップ30圏内に入るという、国際的な成功も収めました。

音楽評論家のスティーヴ・レゲットは、オールミュージックに寄せたレビューで、5点満点中3.5点を付け、「革新性や特筆すべき驚きはないものの、アルバム全体が非常にソリッドな仕上がりである」と評しました。そして、「この作品を通じて、ウィンターがブルースとその遺産と共にあり続けたこと、そして何よりも、彼の演奏技術が衰えることなく安らかに逝去したことが理解できるのは、聴く者にとって慰めとなる」と述べています。

収録曲と主な参加ミュージシャン

本作には、ジョニー・ウィンターに影響を与えた様々なブルース、R&B、ロックンロールの楽曲が収録されており、各曲には著名なゲスト・ミュージシャンが参加しています。

アンチェイン・マイ・ハート（Unchain My Heart） - Featuring: ブルース・ブラザーズ・ホーンズ
キャント・ホールド・アウト（Can't Hold Out (Talk to Me Baby)） - Featuring: ベン・ハーパー
ドント・ウォント・ノー・ウーマン（Don't Want No Woman） - Featuring: エリック・クラプトン
キリング・フロア（Killing Floor） - Featuring: ポール・ネルソン
フー・ドゥ・ユー・ラヴ（Who Do You Love）
オキ・ドキ・ストンプ（Okie Dokie Stomp） - Featuring: ブライアン・セッツァー
ホエア・キャン・ユー・ビー（Where Can You Be） - Featuring: ビリー・ギボンズ
スウィート・シックスティーン（Sweet Sixteen） - Featuring: ジョー・ボナマッサ
デス・レター（Death Letter）
マイ・ベイブ（My Babe） - Featuring: ジェイソン・リッチ
のっぽのサリー（Long Tall Sally） - Featuring: レスリー・ウェスト
モジョ・ハンド（Mojo Hand） - Featuring: ジョー・ペリー
ブルー・マンデー（Blue Monday） - Featuring: ドクター・ジョン

ジョニー・ウィンター自身は、ボーカル、ギター、スライドギターを担当しています。

その他、アルバムを支えた主なレギュラー・ミュージシャンは以下の通りです。

ポール・ネルソン - ギター・ソロ（#4）、リズムギター
スコット・スプレイ - ベース
トミー・キュリアール - ドラムス
マイク・ディメオ - オルガン（#1, #8）、ピアノ（#3, #5, #6, #10, #11, #13）
フランク・ラトーレ - ハーモニカ（#4）

さらに、特定の楽曲では以下のサポート・ミュージシャンが参加しています。

トム・マローン、ルー・マリーニ、ジョー・メオ、ドン・ハリス - ホーン・セクション（#1, #6, #8, #13）
ウェンディ・ブラウン・ラシャド、シャウナ・ジャクソン、シンシア・サープ - バッキング・ボーカル（#1）
* メレディス・ディレンマ - バッキング・ボーカル（#5）

本作は、ジョニー・ウィンターのブルースへの深い愛情と、彼が多くのミュージシャンから受け、また与えた影響を示す、キャリアの有終の美を飾る重要な作品と言えるでしょう。

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