スロベニアの歴史

スロベニアは、地理的にヨーロッパの主要な文化圏に位置し、その歴史は多様な影響を受けてきました。南スラヴ民族に属するスロベニア人は、西ヨーロッパとの強い結びつきを意識しており、独自の文化を育んできました。

先史時代からローマ時代

スロベニアにおける人類の歴史は、旧石器時代のネアンデルタール人に遡ります。リュブリャナ周辺からは先史時代の住居跡が発見されており、紀元前1400年頃にはイリュリア人が定住しました。彼らはギリシャと交流を持ちながら、ケルト人などと融合していきました。

その後、スロベニアはローマ帝国の支配下に入り、イリュリクムやノリクムなどの属州となりました。エモナ（現リュブリャナ）やポエトヴィオ（現プトゥイ）などの植民都市が建設され、シェンペーテルにはローマ時代の大墓地跡が残っています。この時代にキリスト教が伝来し、5世紀まで繁栄を続けましたが、フン族の侵入や6世紀のスラヴ人の侵入により、都市は破壊されました。

スラヴ人の定住と中世

6世紀以降、スラヴ人がスロベニア地域に定住し始めました。7世紀には、フランク人のサモがアヴァール人に対抗するスラヴ人を支援し、サモ帝国を築きましたが、その中にスロベニア人も含まれていたと考えられています。サモ帝国の崩壊後、スロベニア人は再びアヴァール人の支配下に入りました。

7世紀後半には、スラヴ人がアヴァール人に対する反乱を起こし、カランタニア公国を創設しました。カランタニア公国は、バイエルン公国の支援を受け、キリスト教を受容しましたが、フランク王国の勢力拡大により、クロアチア人らと共にフランクとの戦いを繰り広げました。その後、カロリング朝フランク王国によって辺境伯領に組み込まれ、スロベニア人は農奴と化しました。

9世紀末には、ハンガリー王国の成立により、フランク王国は隣接地域の要塞化に着手しました。フランク王国の分裂後、東フランク王国王オットー1世は、スロベニア一帯を含む地域をカランタニア公領と定めました。その後、カランタニア公領は分割され、神聖ローマ帝国の東国境を形成し、クロアチアと分断されました。その後、神聖ローマ帝国領として「カリンティア」、「スティリア」、「カルニオラ」の三公国に再編成されることとなりました。

ハプスブルク家の支配

13世紀末には、ヴェネツィア共和国が勢力を拡大し、イストリア半島やアドリア海沿岸部を支配しました。ローマ教皇の計画により、カリンティア、スティリア、カルニオラら三公国はボヘミア王オットカル2世が支配することとなりましたが、オットカル2世はハプスブルク家のルドルフ1世に敗北し、三公国はハプスブルク家の支配下となりました。

15世紀には、オスマン帝国がスロベニア地域に襲来し、ハプスブルク帝国はスロベニア地域で騎馬軍団を組織し、オスマン帝国との国境地帯に軍政国境地帯を設置しました。このため、スロベニア農民らは、要塞建設の費用を負担することとなり、農民反乱が頻発しました。

16世紀には、マルティン・ルターによる宗教改革の波がスロベニアにも及び、プロテスタントが広まりましたが、ハプスブルク帝国は対抗宗教改革を推進し、イエズス会を設立し、カトリックの勢力を回復させました。

18世紀半ばには、マリア・テレジアの時代に交通網が発達し、手工業や農業が発展しました。政府は義務教育令を発令し、スロベニア語による授業が行われることとなり、スロベニア語の印刷物が出版されるようになりました。しかし、ヨーゼフ2世の時代には、行政機関で使用する言語がドイツ語と規定され、学校においてもドイツ語教育が優先されました。しかし1781年、「農奴解放令」が発令されたことにより、農奴制が廃止されました。

民族意識の高まりとナポレオンによる占領

18世紀後半から19世紀にかけて、啓蒙思想の影響を受けた知識人層がスロベニアにも生まれ、スロベニア語の研究や文学活動が活発化しました。ヨハン・ゴットフリート・ヘルダーはスラヴ人らにも自らの言葉や古く伝わる風習・伝承(フォークロア)を研究して発展させることを呼びかけました。スロベニア人らもこの活動に反応し、イェルネイ・コピタルはスロベニア方言の統一を行い、スロベニア語文法書を出版しました。

ナポレオン・ボナパルトの登場により、スロベニアもその領域と化しましたが、ナポレオンはスロベニアに関心を持っていたため、1809年、ウィーン条約により「フランス領イリュリア諸州」を形成し、スロベニア語の使用を推奨しました。

第一次世界大戦とユーゴスラビア王国

第一次世界大戦後、オーストリア＝ハンガリー帝国が崩壊すると、スロベニアはセルビア人・クロアチア人・スロベニア人国を経て、ユーゴスラビア王国に組み込まれました。しかし、スロベニア人が主張していた連邦主義は採用されることなくセルビア人の主張した中央集権主義が採用されました。

第二次世界大戦中、スロベニアは枢軸国によって分割占領されましたが、パルチザンによる抵抗運動が展開され、戦後、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の一員となりました。

独立

1991年、スロベニアはユーゴスラビアからの独立を宣言し、十日間戦争を経て独立を達成しました。その後、民主化と市場経済化を進め、2004年にEUとNATOに加盟しました。スロベニアは、東欧諸国の中でも経済的に成功した国の一つとして、ヨーロッパにおける役割を高めています。

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