セマルグル

セマルグルは、スラヴ神話に登場する神であり、その姿はグリフォンに似ているとされています。ウクライナ語では「Симаргл, Семаргл」と表記され、シマルグルとも呼ばれます。

起源と信仰

セマルグルの名前は、アヴェスター語、パフラヴィー語、ペルシア語で「聖なる鳥」を意味する言葉に由来すると考えられています。9世紀からキリスト教が導入されるまで、東スラヴ人によって信仰されていました。キエフやリャザンで発見された12〜13世紀頃の銀製の腕輪には、鳥と動物の要素が混ざった生物が彫刻されており、一部の研究者はこれをセマルグルであると解釈しています。また、イラン神話に登場するシームルグとの関連性も指摘されています。

神としての役割

キエフの丘に祀られた神々の一柱であり、女神モコシと関連付けられることが多いです。セマルグルは、大女神に寄り添う聖獣、あるいは女神が畑に撒いた種子を神格化したものとされ、農耕や植物の生育に関わる神であると考えられています。一方で、寒気と霜の神であるという説も存在します。

多様な解釈

セマルグルの名は「七つの頭」と解釈されることもあり、ペルーン、ダジボーグ、モコシ、ストリボーグ、ホルスなど、7柱の神を統合した存在であるという説も唱えられています。このように、セマルグルは多様な側面を持つ神として、スラヴ神話の中で独特な位置を占めています。

セマルグルは、その起源、役割、解釈において、多くの謎に包まれた神です。しかし、その存在は、古代スラヴ人の信仰や文化を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考文献
伊東一郎「スラヴの神話伝説」『世界の神話伝説総解説』吉田敦彦他共著（改訂増補版）、自由国民社〈Multibook〉、2002年7月、51-61頁。ISBN 978-4-426-60711-1。 
清水睦夫 著「ロシア国家の起源」、田中, 陽兒、倉持, 俊一、和田, 春樹 編『ロシア史1：9世紀-17世紀』山川出版社〈世界歴史大系〉、1995年9月。ISBN 978-4-634-46060-7。 
中堀正洋 著「セマールグル」、松村, 一男、平藤, 喜久子、山田, 仁史 編『神の文化史事典』白水社、2013年2月、300頁。ISBN 978-4-560-08265-2。 
ワーナー, エリザベス『ロシアの神話』斎藤静代訳、丸善〈丸善ブックス 101〉、2004年2月。ISBN 978-4-621-06101-5。

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