セミレチエ地方

セミレチエ：中央アジアの歴史が交差する地

セミレチエは、中央アジアの歴史において重要な役割を果たしてきた地域です。現在のカザフスタン南東部とキルギス北部にまたがり、その範囲は北はバルハシ湖、北東はサシクコル湖とアラコル湖、東はジュンガル・アラタウ山脈、南はナリン川上流にまで及びます。

セミレチエの語源と地理的特徴

セミレチエとは、「7つの川」を意味する言葉で、カザフ語やキルギス語の「ジェティス」がロシア語に翻訳されたものです。この地域には、バルハシ湖に流れ込む複数の川が存在し、その数は諸説あります。一般的には、アヤグズ川、レプシ川、アクスゥ川、ビエン川、コクスゥ川、カラタル川、イリ川などが挙げられますが、歴史家によって解釈が異なります。

セミレチエの歴史

この地域は、古くから様々な文化が栄えた場所です。先史時代にはアンドロノヴォ文化やカラスク文化が発展し、その後はサカ、烏孫、西突厥、テュルギシュ、カルルク、カラハン朝、カラキタイなどの遊牧民族がこの地を拠点としてきました。また、ザイリスキー・アラタウ山脈の麓には農耕に適した土地も多く、ソグド人の植民都市では仏教文化が繁栄しました。5世紀には、突厥の支配下で灌漑技術が導入され、ソグディアナの文化が広がりました。ベラサグン、スイアブ、カルヤクなどの都市は、定住民と遊牧政権の交流の場として重要な役割を果たしました。

13世紀以降、モンゴル帝国の台頭により、セミレチエの都市や農耕文化は衰退しました。その後、この地域はチャガタイ・ハン国やモグーリスタン・ハン国の支配下に入り、16世紀以降はカザフやクルグズカルマクの抗争の舞台となりました。18世紀半ばにはカルマクが敗退し、1846年にロシア帝国がこの地域を制圧しました。1867年には正式にロシア帝国に併合され、セミレチエ州が設置されました。

ロシア帝国統治下のセミレチエ

ロシア帝国統治下では、セミレチエ州はトルキスタン総督府の管轄下に置かれました。州都は、1854年に建設されたヴェールヌイ要塞を前身とするヴェールヌイ市（現在のアルマトゥ）に制定されました。この時期には、ロシアからのコサックや農民の移住が進められましたが、彼らの利害は必ずしも一致しませんでした。20世紀初頭には、ロシア政府がこの地域のロシア化を促進するために移住をさらに推進しました。1930年代にトルクシブ鉄道が開通すると、セミレチエの開発はより一層進みました。

セミレチエの現代

今日、セミレチエはカザフスタンとキルギスの重要な地域であり、アルマトゥやビシュケクといった大都市を擁しています。歴史的な経緯から、多文化が共存する地域として、その独自の魅力を放っています。

セミレチエの歴史は、遊牧民と農耕民の文化が複雑に絡み合い、多くの勢力が興亡を繰り返した歴史の縮図と言えるでしょう。この地の歴史を理解することは、中央アジアの歴史全体を理解する上で非常に重要です。

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