テルサンドロス
ギリシア神話の伝承において、「テルサンドロス」という名前を持つ人物は複数登場する。中でも特に有名なのは、コリントスの伝説的な王シーシュポスの子、テーバイへの第二次遠征に参加した英雄たち「エピゴノイ」の一員、そしてヘーラクレースの子孫であるヘーラクレイダイの一員の三名である。彼らは同名であるが、それぞれ異なる家系に属し、別の物語の中で語られている。
このテルサンドロスは、狡知に長けた人物として知られるコリントスの創建者シーシュポスと、巨神アトラスの娘でプレイアデスの一人であるメロペーの息子である。彼の兄弟には、グラウコス、オルニュティオーン、ハルモスがいた。テルサンドロス自身の子どもとしては、ハリアルトス、コローノス、そしてプロイトスの名が伝えられている。子のうちハリアルトスとコローノスは、後に狂気に襲われたことで知られるアタマース王の養子となり、その所領の一部を受け継いだ。そして彼らはそれぞれ自身の名を冠した都市、すなわちボイオーティア地方のハリアルトスとコローネイアを創建したとされている。また、プロイトスはマイラという娘の父となった。このテルサンドロスに関する記録は、主にこれらの都市の起源や系譜に関する部分に現れることが多い。
このテルサンドロスは、アルゴス王ポリュネイケースと、同じくアルゴス王アドラーストスの娘アルゲイアーの間に生まれた息子である。ポリュネイケースは父王オイディプースから追放されたテーバイの王位を奪還すべく、「テーバイ攻めの七将」の一員として遠征したが、悲劇的な最期を遂げた。テルサンドロスには、アドラーストスとティメアースという兄弟がいたとされる。彼はまた、テーバイ攻めの七将の一人である予言者アムピアラーオスとその妻エリピューレーの娘デーモーナッサを妻とし、ティーサメノスという息子をもうけた。
父たちの遠征が失敗に終わってから十年後、テルサンドロスはアルクマイオーン、ディオメーデース、ステネロスらと共に、「エピゴノイ」、すなわち「後に生まれた者たち」と呼ばれる新たな世代の英雄たちによるテーバイへの第二次遠征隊に参加した。この遠征に際し、テルサンドロスは母方の祖父アドラーストスが所有していたとされる、女神ハルモニアーに捧げられた高価なペプロス（長衣）を、アムピアラーオスの妻エリピューレーに贈与した。この贈物によって、エリピューレーは夫の予言により遠征参加を渋っていた自身の息子アルクマイオーンを、説得して参加させることができたと伝えられている。
エピゴノイの軍勢は、グリサス付近でテーバイ軍と対峙した。テーバイ軍は前王エテオクレースの子ラーオダマースに率いられていたが、エピゴノイはこれを打ち破り、テーバイの都を制圧した。この勝利により、テルサンドロスはテーバイの王として即位した。彼はテーバイから避難していた一部の市民をテッサリアー地方のホモレーから呼び戻し、彼らが帰還するために使った門を「ホモロイデス門」と名付けたという。
テーバイの王となった後、テルサンドロスはアガメムノーン率いるギリシア連合軍に加わり、トロイア戦争へと赴いた。しかし、トロイアに向かう途中で、ギリシア軍は誤って小アジアのミューシア地方に上陸してしまい、その地の王テーレポスとの間に戦いが生じた。この戦いでギリシア軍はテーレポスの強力な反撃を受けて苦戦し、多くの者が退却したが、テルサンドロスは最後まで果敢に戦い続けた結果、テーレポス自身によって討ち取られ、命を落とした。彼の戦死により、テーバイから参加した軍勢はペーネレオースが指揮を引き継ぐことになった。テルサンドロスの墓は、小アジアのアイオリス地方にあるエライアという場所にあり、地元の人々によって手厚く祀られていたと伝えられている。
テルサンドロスの息子ティーサメノスは、父の死後にテーバイの王位を継いだが、その息子アウテシオーンの代になると、テーバイを離れることになった。さらにその子孫であるテーラースは、エーゲ海のテーラ島（現在のサントリーニ島）へ移住し、そこに新たな共同体を築いた。また、遠くシチリア島のアクラガス（現在のアグリジェント）を紀元前5世紀後半に統治した僭主テーローンも、このエピゴノイの一員であったテルサンドロスの遠い子孫であるとする系譜も伝えられている。
このテルサンドロスは、大英雄ヘーラクレースの子孫であるヘーラクレイダイの一員として知られる人物である。彼はクレオーナイの王であったアガメーディダースの息子であり、その血統はヘーラクレースの子クテーシッポスから数えて五代目に位置するとされる。このテルサンドロスの最も有名な点は、ラトリアーとアナクサンドラーという双子の娘の父であったことである。彼の娘たちは、ヘーラクレイダイの中でも特に重要な人物であったアリストデーモスの双子の息子たち、すなわちペロポネーソス帰還後のスパルタの共同統治者となるエウリュステネースとプロクレースそれぞれの妻となった。この結婚は、ヘーラクレイダイによるペロポネーソス支配体制の確立と、その後のスパルタ王家の分裂（アギス家とエウリュポン家）の端緒ともなる重要な結びつきであった。このテルサンドロスに関する記述は、主にヘーラクレイダイの系譜や、ペロポネーソスへの帰還に関する物語の中で見られる。
シーシュポスの子テルサンドロス
このテルサンドロスは、狡知に長けた人物として知られるコリントスの創建者シーシュポスと、巨神アトラスの娘でプレイアデスの一人であるメロペーの息子である。彼の兄弟には、グラウコス、オルニュティオーン、ハルモスがいた。テルサンドロス自身の子どもとしては、ハリアルトス、コローノス、そしてプロイトスの名が伝えられている。子のうちハリアルトスとコローノスは、後に狂気に襲われたことで知られるアタマース王の養子となり、その所領の一部を受け継いだ。そして彼らはそれぞれ自身の名を冠した都市、すなわちボイオーティア地方のハリアルトスとコローネイアを創建したとされている。また、プロイトスはマイラという娘の父となった。このテルサンドロスに関する記録は、主にこれらの都市の起源や系譜に関する部分に現れることが多い。
エピゴノイの一員テルサンドロス
このテルサンドロスは、アルゴス王ポリュネイケースと、同じくアルゴス王アドラーストスの娘アルゲイアーの間に生まれた息子である。ポリュネイケースは父王オイディプースから追放されたテーバイの王位を奪還すべく、「テーバイ攻めの七将」の一員として遠征したが、悲劇的な最期を遂げた。テルサンドロスには、アドラーストスとティメアースという兄弟がいたとされる。彼はまた、テーバイ攻めの七将の一人である予言者アムピアラーオスとその妻エリピューレーの娘デーモーナッサを妻とし、ティーサメノスという息子をもうけた。
父たちの遠征が失敗に終わってから十年後、テルサンドロスはアルクマイオーン、ディオメーデース、ステネロスらと共に、「エピゴノイ」、すなわち「後に生まれた者たち」と呼ばれる新たな世代の英雄たちによるテーバイへの第二次遠征隊に参加した。この遠征に際し、テルサンドロスは母方の祖父アドラーストスが所有していたとされる、女神ハルモニアーに捧げられた高価なペプロス（長衣）を、アムピアラーオスの妻エリピューレーに贈与した。この贈物によって、エリピューレーは夫の予言により遠征参加を渋っていた自身の息子アルクマイオーンを、説得して参加させることができたと伝えられている。
エピゴノイの軍勢は、グリサス付近でテーバイ軍と対峙した。テーバイ軍は前王エテオクレースの子ラーオダマースに率いられていたが、エピゴノイはこれを打ち破り、テーバイの都を制圧した。この勝利により、テルサンドロスはテーバイの王として即位した。彼はテーバイから避難していた一部の市民をテッサリアー地方のホモレーから呼び戻し、彼らが帰還するために使った門を「ホモロイデス門」と名付けたという。
テーバイの王となった後、テルサンドロスはアガメムノーン率いるギリシア連合軍に加わり、トロイア戦争へと赴いた。しかし、トロイアに向かう途中で、ギリシア軍は誤って小アジアのミューシア地方に上陸してしまい、その地の王テーレポスとの間に戦いが生じた。この戦いでギリシア軍はテーレポスの強力な反撃を受けて苦戦し、多くの者が退却したが、テルサンドロスは最後まで果敢に戦い続けた結果、テーレポス自身によって討ち取られ、命を落とした。彼の戦死により、テーバイから参加した軍勢はペーネレオースが指揮を引き継ぐことになった。テルサンドロスの墓は、小アジアのアイオリス地方にあるエライアという場所にあり、地元の人々によって手厚く祀られていたと伝えられている。
テルサンドロスの息子ティーサメノスは、父の死後にテーバイの王位を継いだが、その息子アウテシオーンの代になると、テーバイを離れることになった。さらにその子孫であるテーラースは、エーゲ海のテーラ島（現在のサントリーニ島）へ移住し、そこに新たな共同体を築いた。また、遠くシチリア島のアクラガス（現在のアグリジェント）を紀元前5世紀後半に統治した僭主テーローンも、このエピゴノイの一員であったテルサンドロスの遠い子孫であるとする系譜も伝えられている。
ヘーラクレイダイの一員テルサンドロス
このテルサンドロスは、大英雄ヘーラクレースの子孫であるヘーラクレイダイの一員として知られる人物である。彼はクレオーナイの王であったアガメーディダースの息子であり、その血統はヘーラクレースの子クテーシッポスから数えて五代目に位置するとされる。このテルサンドロスの最も有名な点は、ラトリアーとアナクサンドラーという双子の娘の父であったことである。彼の娘たちは、ヘーラクレイダイの中でも特に重要な人物であったアリストデーモスの双子の息子たち、すなわちペロポネーソス帰還後のスパルタの共同統治者となるエウリュステネースとプロクレースそれぞれの妻となった。この結婚は、ヘーラクレイダイによるペロポネーソス支配体制の確立と、その後のスパルタ王家の分裂（アギス家とエウリュポン家）の端緒ともなる重要な結びつきであった。このテルサンドロスに関する記述は、主にヘーラクレイダイの系譜や、ペロポネーソスへの帰還に関する物語の中で見られる。
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