トマス・ハワード (第2代ノーフォーク公)

第2代ノーフォーク公トマス・ハワード：波乱の時代を生き抜いた貴族

第2代ノーフォーク公トマス・ハワード（1443年 - 1524年）は、イングランドの貴族であり、激動の時代を生き抜いた廷臣です。初代ノーフォーク公ジョン・ハワードの長男として生まれ、リチャード3世の即位に貢献。ボズワースの戦いで一時投獄されるも、後に釈放され、ヘンリー7世とヘンリー8世に仕えました。

生涯

リチャード3世の即位に貢献

1443年、ジョン・ハワードとその妻キャサリンの長男として生まれたトマス。幼少期はグラマースクールで学び、薔薇戦争ではヨーク派に属しました。1483年、父と共にリチャード3世のクーデターに加担。ヘイスティングス男爵の拘束や、エリザベス・ウッドヴィルの逃亡先であるウェストミンスター寺院の包囲といった功績により、サリー伯に叙されました。

ヘンリー7世への忠誠

1485年、ボズワースの戦いでリチャード3世側についたトマスですが、父とリチャード3世が敗死し、自身も捕虜となります。ヘンリー7世の即位後、私権を剥奪されるも、「ハワード家はイングランド王冠に忠誠を尽くす」と訴え、その忠誠心はヘンリー7世の心を掴みました。1489年には釈放され、サリー伯位を回復。以降、テューダー朝に仕えることになります。

ヘンリー8世の治世

ヘンリー8世の即位後も、枢密顧問官として重用されたトマス。1513年には、スコットランド軍の侵攻に対し、フロドゥンの戦いで大勝利を収めました。この功績により、ノーフォーク公に復権。しかし、ヘンリー8世はハワード家への牽制として、チャールズ・ブランドンをサフォーク公に叙爵し、イースト・アングリアへ派遣しています。

その後も、1517年のロンドンでの暴動鎮圧や、1520年の金襴の陣での国務担当など、重要な役割を果たしました。また、ハワード家安泰のため、子供達を政略結婚に活用する一方で、バッキンガム公を反逆罪に陥れるなど、冷徹な一面も見せました。

死去とその後

1524年、フラムリンガム城にて死去。爵位は長男トマスが継承しました。娘エリザベスはアン・ブーリンの母となり、アンはヘンリー8世の王妃、そしてエリザベス1世の母となるなど、彼の血筋は歴史に深く関わっています。

栄典

1483年：初代サリー伯爵
1514年：第2代ノーフォーク公爵
1478年：バス騎士団ナイト
1483年：ガーター騎士団ナイト
1491年：ガーター騎士団ナイト

家族

エリザベス・ティルニーとの間に4男2女、アグネス・ティルニーとの間に2男4女を儲けました。多くの子女が政略結婚に利用され、ハワード家の勢力拡大に貢献しました。

長男：第3代ノーフォーク公トマス・ハワード
三男：エドムンド・ハワード（キャサリン・ハワードの父）
長女：エリザベス・ハワード（アン・ブーリンの母）

参考文献

石井美樹子『薔薇の冠 イギリス王妃キャサリンの生涯』朝日新聞社、1993年。
海保眞夫『イギリスの大貴族』平凡社、1999年。
森護『英国の貴族 遅れてきた公爵』大修館書店、1987年。
松村赳、富田虎男『英米史辞典』研究社、2000年。
トマス・ペン著、陶山昇平訳『冬の王 ヘンリー七世と黎明のテューダー王朝』彩流社、2016年。

関連項目

ウィリアム・シェイクスピア
リチャード三世
ヘンリー八世

第2代ノーフォーク公トマス・ハワードは、激動の時代を生き抜き、イングランドの歴史に名を刻んだ人物です。彼の生涯は、当時の政治情勢や貴族社会の複雑さを物語っています。

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