ニューヨーク・スクール

ニューヨーク・スクールとは

1950年代から1960年代にかけて、ニューヨーク市を中心に活動した詩人、画家、ダンサー、音楽家たちの非公式な集団を「ニューヨーク・スクール」と呼びます。彼らの活動は、当時の抽象表現主義運動と密接に結びついて語られることが多いです。ニューヨーク・スクールの芸術家たちは、シュルレアリスムやコンテンポラリー・アバンギャルドのアート・ムーブメント、特にアクション・ペインティング、ジャズ、即興劇、実験音楽などから多大な影響を受け、それぞれの分野で革新的な表現を追求しました。

詩人たち

ニューヨーク・スクールの詩人たちは、現代詩における告白主義的な流れへの反動として現れました。彼らの詩は、日常的な出来事や個人的な感情を、軽妙かつ観察的な視点で捉えることが特徴です。文体は都会的で、世界を旅するような開放感に満ちています。意識の流れを意識した即興的で自然な言葉遣いを使い、鮮やかな修辞表現を多用しています。ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニングら、ニューヨークのアートシーンで活躍する画家たちの作品からインスピレーションを得ていました。

代表的な詩人としては、ジョン・アッシュベリー、フランク・オハラ、ケネス・コッホ、ジェームズ・スカイラー、バーバラ・ゲスト、テッド・ベリガン、ベルナデット・メイヤー、アリス・ノートリー、ケンワード・エルムズリー、フランク・リマ、ロン・パジェット、ルイス・ウォーシュ、ジョゼフ・チェラヴォロなどが挙げられます。特にフランク・オハラはグループの中心人物として、多くの詩人や画家たちとの交流を深めました。彼は、詩人と画家たちの間に立ち、共同制作を積極的に推進しました。例えば、ラリー・リヴァーズはコッホの劇に影響を与え、コッホとアッシュベリーは共同で詩を制作し、アッシュベリーとスカイラーは小説を共作しました。また、スカイラーはオハラとのコラボレーションで頌歌を発表し、リヴァーズはオハラの肖像画を描きました。

コッホ、オハラ、スカイラー、アッシュベリーは、それぞれ作風は異なっていたものの、互いに尊敬し合い、多くの共通点を持っていました。例えば、スカイラー以外の3人はハーバード大学で同時期に学んでおり、コッホ以外の3人は同性愛者でした。また、アッシュベリー以外は従軍経験があり、コッホ以外は芸術批評も行っていました。さらに、アッシュベリー以外はニューヨークで詩人としてのキャリアをスタートさせています。これらの詩人たちは、レーモン・ルーセル、ピエール・ルヴェルディ、ギヨーム・アポリネールといったフランスのシュルレアリスムの画家たちから影響を受けています。彼らは、抽象表現主義の画家たちよりも、ジャスパー・ジョーンズやロバート・ラウシェンバーグのようなアーティストを彷彿とさせる、ウィットに富んだユーモアや、アイロニックな表現を好みました。

作曲家たち

ニューヨーク・スクールは、1950年代の作曲家たちも指します。ジョン・ケージ、モートン・フェルドマン、アール・ブラウン、クリスチャン・ウォルフなどがその代表です。彼らの音楽は、フルクサスのグループの音楽やイベントと並行して展開し、前述の抽象表現主義の画家たちと同様の精神を持って活動しました。

ダンサーたち

1960年代には、グリニッジ・ヴィレッジのジャドソン・メモリアル教会を拠点に活動したジャドソン・ダンス・シアターが、モダン・ダンスに大きな変革をもたらしました。彼らは、パフォーマンスアートの概念、斬新な振り付け、前衛的な作曲家による音楽、そしてニューヨーク・スクールのビジュアル・アーティストたちとのコラボレーションを通じて、新しいダンス表現を追求しました。ジャドソン・ダンス・シアターは、ポスト・モダンダンスの創始者とみなされています。このグループは、ジョン・ケージに師事した音楽家、ロバート・ダンのダンス構成クラスから誕生しました。ジャドソン・ダンス・シアターに関わったアーティストたちは、バレエの技術や理論に縛られることなく、実験的なアプローチでダンスを制作しました。

1962年7月6日に開催された最初のコンサートには、スティーブ・パクストン、フレッド・ヘルコ、デヴィッド・ゴードン、アレックスとデボラ・ヘイ、イヴォンヌ・レイナー、エレイン・サマーズ、ウィリアム・デイヴィス、ルース・エマーソンらが参加しました。ジャドソン・ダンス・シアター出身の著名なダンサーとしては、デヴィッド・ゴードン、スティーヴ・パクストン、イヴォンヌ・レイナー、トリシャ・ブラウン、ルシンダ・チャイルズ、デボラ・ヘイ、エレイン・サマーズ、サリー・グロス、アイリーン・パスロフ、メレディス・モンクなどが挙げられます。1962年から1964年頃が、ジャドソン・ダンス・シアターの最盛期とされています。ニューヨーク・スクールのアーティストたちは、1950年代から1970年代にかけて、シモーヌ・フォルティ、アンナ・ハルプリン、マース・カニングハム、マーサ・グレアム、ポール・テイラーといった他の振付家やダンサーとも積極的にコラボレーションを行いました。

1950年代および60年代のニューヨーク・スクール抽象表現主義者たち

1950年代のニューヨーク抽象表現主義を代表するニューヨーク・スクールの画家たちは、アーティスト委員会が主催する招待制の展覧会を通じてその存在が知られるようになりました。その始まりは、1951年の「9丁目アート展覧会」で、その後、1953年に「絵画と彫刻の第2回年次展覧会」、1954年に「第3回年次展覧会」、1955年に「第4回年次展覧会」、1956年に「第5回年次展覧会」、1957年に「第6回ニューヨーク・アーティスト年次展覧会」が開催されました。これらの展覧会を通じて、ブラッドリー・ウォーカー・トムリン、ローズマリー・ベック、フィリップ・グスタンなどのアーティストたちが、ニューヨーク・スクールの一員として認識されるようになりました。

1960年代のアーティストを含む、その他のニューヨーク・スクールの画家としては、リチャード・プゼット＝ダート、セシル・グレイ・バゼロン、シーモア・ボードマン、イリヤ・ボロトフスキー、アーネスト・ブリッグス、ピーター・ブサ、ローレンス・カルカーノ、ニコラス・キャローネ、ナンノ・デ・グルート、ビューフォード・デラニー、リン・マップ・ドレクスラー、エドワード・ダグモア、アマランス・エーレンハルト、ペルレ・ファイン、カール・ハーゲドン、ジョン・ハルトバーグ、アルバート・コティン、クラレンス・メイジャー、ミーシャ・レズニコフ、ウィリアム・シャーフ、エセル・シュワバッハー、ケンドール・ショウ、トーマス・シルズ、マートン・シンプソン、ジャック・スチュワートなどがいます。また、画家や彫刻家としては、カレル・アペル、クレア・ファルケンシュタイン、ベティ・パーソンズ、アントニ・タピエスらがニューヨーク・スクールのメンバーとして知られています。

ギャラリー

ニューヨーク市のアニータ・シャポルスキー・ギャラリーは、1950年代および1960年代のニューヨーク・スクールのアート作品に特化しており、表現主義、幾何学的抽象、そして絵画的抽象アートを展示しています。特に油彩やアクリル画、彫刻作品を頻繁に展示しています。ティボール・デ・ナジ・ギャラリーやステイブル・ギャラリーもニューヨーク・スクールのアート作品を展示しており、1998年にはガゴシアン・ギャラリーでもニューヨーク・スクールのアートが展示されました。

このように、ニューヨーク・スクールは、複数のジャンルにまたがる多くのアーティストたちによって形成された、非常に多様で活気のある芸術運動でした。

もう一度検索