ノフ＝ケー

ノフ＝ケー：クトゥルフ神話の混沌とした存在

クトゥルフ神話に登場するノフ＝ケー（Gnoph-Keh/Gnophkeh）は、その正体や描写において、複数の解釈が存在する謎めいた存在です。ラヴクラフト初期の作品から複数の作家による解釈や設定の追加、さらには表記の揺れまで含め、その複雑な歴史を紐解いていきます。

ラヴクラフト作品におけるノフ＝ケー

ハワード・フィリップス・ラヴクラフトは、『北極星<ポラリス>』と『未知なるカダスを夢に求めて』において、ノフケー（Gnophkeh）を毛むくじゃらの食人種族として描写しています。古代グリーンランド付近にあったロマール王国を襲撃し、滅ぼしたとされています。この描写におけるノフケーは、種族としての解釈と、単体の個体としての解釈の両方が可能です。

一方、ラヴクラフトがヘイゼル・ヒールドに代作させた『博物館の恐怖』では、表記が変化したノフ＝ケー（Gnoph-Keh）が登場します。こちらは鋭い角を持ち、状況に応じて二足歩行、四足歩行、六足歩行と、自在に形態を変える存在として描かれています。

多様な解釈と設定の拡張

初期のノフケー像から、後の作家たちは様々な解釈を加え、設定を拡張していきました。

フランシス・レイニーは『クトゥルー神話小辞典』において、ノフ＝ケーを新たな邪神ラーン＝テゴスの化身（顕現）と設定しました。この解釈はオーガスト・ダーレスの『暗黒の儀式』でも踏襲されています。

リン・カーターの『モーロックの巻物』では、ノフケー族が古代ハイパーボリアのムー・トゥーラン半島を支配していたものの、ヴーアミ族との勢力争いに敗れ、北へと逃亡したという記述が登場します。この物語では、ノフケーが信仰する大気の神ラーン＝テゴスと、ヴーアミが信仰する大地の神ツァトゥグァの対立も描かれており、神話的世界観に深みを加えています。

さらにジョン・グラスビーは『The Nameless Tower』で、ノフケーを爬虫類種族として描写するなど、ノフ＝ケー（ノフケー）像は作家によって大きく異なっています。このため、『エンサイクロペディア・クトゥルフ』や『マレウス・モンストロルム』といったクトゥルフ神話関連の資料においても、ノフ＝ケーに関する記述は統一されていません。

中には、ノフケー族をイタカと関連付ける説や、邪神ノフケーをクトゥルフの化身とする説など、多様な解釈が存在しています。

ノフ＝ケーが登場する作品

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト：『北極星<ポラリス>』、『未知なるカダスを夢に求めて』、『博物館の恐怖』
フランシス・T・レイニー：『クトゥルー神話小辞典』
リン・カーター：『モーロックの巻物』
ロバート・M・プライス：『裏道』
ジョン・グラスビー：『The Nameless Tower』
ピーター・キャノン＆ロバート・M・プライス：『Nautical-Looking Negros』

関連事項

* ナコト写本：ロマール王国にあった文献。ノフケーの襲撃によってロマールが滅びた際に、最後の1冊がドリームランドに伝わったとされる。

まとめ

ノフ＝ケーは、その表記の揺れや、複数の作家による解釈の積み重ねによって、クトゥルフ神話の中でも特に混沌とした存在となっています。ラヴクラフト初期の怪物の描写から、後の作家による設定の拡張、そして多様な解釈が混在する現状は、クトゥルフ神話の奥深さ、そして解釈の自由度を示す好例と言えるでしょう。クトゥルフ神話を読み解く上で、ノフ＝ケーは避けて通れない、魅力的で不可解な存在なのです。

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