ハインリヒ・シフ

ハインリヒ・シフ (Heinrich Schiff)

ハインリヒ・シフは、1951年 11月18日にオーストリアのグムンデンに生まれ、2016年 12月23日にウィーンでその生涯を閉じた、 internationally acclaimed（国際的に高い評価を得た）チェリストおよび指揮者です。

音楽家としての歩み

6歳でピアノ、9歳でチェロを習い始めた彼は、トビアス・キューネに師事し、後にアンドレ・ナヴァラの指導も受けるなど、幼い頃から音楽の才能を育みました。

音楽家としてのキャリアは、いくつかのコンクールで実績を上げたことから始まりましたが、彼の名を一躍世界に知らしめたのは、1972年にオーストリアのグラーツで開催された国際現代音楽協会（ISCM）の演奏会での出来事でした。この時、病気のため出演が不可能となった巨匠ムスティスラフ・ロストロポーヴィチの代役として、ルトスワフスキのチェロ協奏曲を見事に演奏。そのパフォーマンスは聴衆や評論家から熱狂的な賛辞を受け、これにより彼は国際的な舞台で脚光を浴びる存在となりました。

この成功を足がかりに、ハインリヒ・シフは世界中の主要なオーケストラとソリストとして共演を重ね、国際的なチェリストとしての揺るぎない地位を確立しました。彼の演奏は、技巧的な正確さと深い音楽的洞察力、そして表現力豊かな響きで高く評価されました。

しかし、2008年に脳卒中を発症したことで、演奏活動の一時的な休止を余儀なくされます。懸命なリハビリを経て、2009年には再び舞台に戻ることができましたが、2012年にはチェロ奏者としての活動から完全に引退することを発表しました。

指揮者としての活動

チェリストとして活躍する一方で、ハインリヒ・シフは1990年代からは指揮者としても精力的に活動を展開しました。世界各地のオーケストラに客演指揮者として招かれ、その指揮棒を振る腕前も高く評価されました。

彼はまた、いくつかのオーケストラで要職を歴任しています。ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団やノーザン・シンフォニア、コペンハーゲン・フィルハーモニー管弦楽団、シュトゥットガルト放送交響楽団などで首席指揮者や首席客演指揮者を務めました。特に、1990年からはリンツ・ブルックナー管弦楽団の首席客演指揮者として、同オーケストラの音楽水準向上に貢献しました。

ディスコグラフィ

ハインリヒ・シフは、多くの著名な録音を残しており、その多くが現在でも高く評価されています。以下に、彼の代表的な録音の一部を挙げます。

ドヴォルザーク：チェロ協奏曲（アンドレ・プレヴィン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団）
ドヴォルザーク：チェロ協奏曲（サー・コリン・デイヴィス指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団）
ドヴォルザーク：チェロ協奏曲（セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団）
シューマン：チェロ協奏曲（ベルナルト・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団）
ショスタコーヴィチ：チェロ協奏曲第1番（マクシム・ショスタコーヴィチ指揮バイエルン放送交響楽団）
ショスタコーヴィチ：チェロ協奏曲第2番（マクシム・ショスタコーヴィチ指揮バイエルン放送交響楽団）
プロコフィエフ：チェロと管弦楽のための交響的協奏曲（アンドレ・プレヴィン指揮ロサンジェルス・フィルハーモニック）
エルガー：チェロ協奏曲（サー・ネヴィル・マリナー指揮シュターツカペレ・ドレスデン）
ヴュータン：チェロ協奏曲第1番（サー・ネヴィル・マリナー指揮シュトゥットガルト放送交響楽団）
ヴュータン：チェロ協奏曲第2番（サー・ネヴィル・マリナー指揮シュトゥットガルト放送交響楽団）
ハイドン：チェロ協奏曲第1番（サー・ネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ）
ハイドン：チェロ協奏曲第2番（サー・ネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ）
ブラームス：ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲（フランク・ペーター・ツィンマーマン：ヴァイオリン、ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団）
ベートーヴェン：ピアノとヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲（ウルフ・ヘルシャー：ヴァイオリン、クリスティアン・ツァハリアス：ピアノ、クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団）
サン＝サーンス：チェロ協奏曲第1番（サー・チャールズ・マッケラス指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団）
ブラームス：チェロソナタ集（ゲルハルト・オピッツ：ピアノ）
ベートーヴェン：チェロソナタ集（ティル・フェルナー：ピアノ）
ヴァイオリンとチェロのための作品集（フランク・ペーター・ツィンマーマン：ヴァイオリン）

ハインリヒ・シフは、チェリストとしても指揮者としても、その才能と音楽性をもってクラシック音楽界に大きな足跡を残しました。

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