ハニー・ナイツ

ハニー・ナイツは、昭和期の日本で活動した代表的な男性コーラス・グループの一つです。1958年に結成され、1974年に一度その活動を終えましたが、その後もレコーディングのために再結成されることがありました。

グループの変遷と活動

結成当初のリーダーは野村忠久でしたが、後に葵まさひこがその役割を引き継ぎました。彼らは活動期間中に、東芝音楽工業（現在のユニバーサルミュージックジャパン）、テイチク（現在のテイチクエンタテインメント）、日本ビクター（音楽レコード事業部、現在のビクターエンタテインメント）といった大手レコード会社から多くの音源を発表しています。特に彼らの大きな功績として挙げられるのは、解散までにレコーディングに参加したCMソングやアニメ・特撮ソングの総数が、実に5000曲にも達するという点です。この数字からも、当時の彼らがいかに多忙で、日本のメディア音楽界において不可欠な存在であったかが伺えます。また、歌手のバックコーラスとしても活動し、青山和子のヒット曲「愛と死をみつめて」などで印象的なハーモニーを添えました。

主なメンバー

グループを牽引した主なメンバーは以下の通りです。

葵まさひこ（あおいまさひこ）: 1937年生まれ、1984年 9月29日没（享年47）。本名は鈴木稔。山形県出身。グループのリードシンガーを務めただけでなく、作曲家としても精力的に活動しました。平浩二の代表曲「バス・ストップ」をはじめ、『ウルトラマンA』や『へんしん!ポンポコ玉』、『ケンにいちゃん』といった子供向け番組の主題歌、さらに『マイルドセブン』、『明治ボーデンチーズ』、『白鶴』など、数多くのCMソングやジングルを手掛けています。晩年は体調を崩しがちで、肝硬変により早逝しました。
宍戸二郎: セカンドテナーを担当。グループ解散後は食品関連の会社に勤務したとされ、2017年にはテレビ番組『家、ついて行ってイイですか?』に出演し、その後の人生が紹介されました。
赤間寛: バリトンを担当しました。
野村忠久: バスを担当。グループ結成時のリーダーでした。

代表的な楽曲とその参加作品

ハニー・ナイツは、多岐にわたるジャンルでその歌声を響かせました。特に記憶に残る楽曲をいくつかご紹介します。

コマーシャルソング

彼らは数え切れないほどのCMソングを手掛け、その数は5000曲という膨大な実績の一部を占めます。特にライオンの「エメロン」CMソング「ふりむかないで」は有名で、シングル盤では6番まで、LPではさらに続きの歌詞も歌われましたが、実際には72番もの歌詞が作られレコーディングされていたという驚くべきエピソードがあります（ただし、その全てがレコード化されたわけではありません）。この曲は後年、郷ひろみや三浦弘とハニーシックス、ポカスカジャンによってカバーされたほか、奈良県の観光プロモーションのために地域別の替え歌が作られるなど、時代を超えて親しまれています（ただし、ザ・ピーナッツの同名曲とは関連がありません）。その他にも、ライオン「スパーク」の「あなたのためなら」、コカ・コーラの「愛するハーモニー」、明治製菓「ポリック」の「明治ポリック水虫出たぞ」、フェザー安全剃刀「ハイ・ステンレス」の「フェザーオソリソリ」（最後のセリフは声優の堀絢子）、ゼブラの「ゼブラ・ボールペン」、タイガー魔法瓶「タイガー・マイン・ポット」の「せめてお名前を」、トヨタ自動車「カローラ」の「ちょっとうれしいカローラ」、今井科学の「イマイのサンダーバード」、DXアンテナの「DXアンテナの歌」（デューク・エイセス初代リーダー和田昭治との共演）など、挙げればきりがありません。

アニメ・特撮ソング

子供たちの心にも響く、多くのアニメや特撮番組の主題歌、挿入歌も手掛けました。

『サスケ』主題歌 「サスケのテーマ」
『妖怪人間ベム』主題歌 「妖怪人間ベム」
『もーれつア太郎』副主題歌 「江戸っ子のスキャット」
『スカイヤーズ5』主題歌 「スカイヤーズ5」
『ミュンヘンへの道』主題歌 「ミュンヘンへの道」
『ロボタン』副主題歌 「ロボタン・マーチ」
『赤胴鈴之助』副主題歌 「赤胴音頭」
『ゴジラ対ヘドラ』主題歌 「かえせ! 太陽を」
『シルバー仮面』主題歌 「故郷は地球」、挿入歌 「戦え! シルバー仮面」
『帰ってきたウルトラマン』挿入歌 「怪獣音頭」
『ウルトラマンA』主題歌 「ウルトラマンA」（リーダー葵まさひこ作曲。オリジナル盤とカバー盤の両方で歌唱）
『ウルトラマンA』挿入歌 「TACの歌」
『ミラーマン』主題歌 「ミラーマンの唄」
『宇宙猿人ゴリ』（スペクトルマン）前期オープニング 「スペクトルマンゴーゴー」、前期エンディング 「宇宙猿人ゴリなのだ」
『スーパー少年ジョー90』主題歌 「ジョー90」
『サンダーバード』主題歌 「サンダーバードの歌」（テレビ放送ではロイヤル・ナイツのバージョンが使用されました）

テレビドラマ主題歌

『キャプテン・ナイス』主題歌 「キャプテン・ナイス」
『ガッツジュン』主題歌 「ガッツ・ジュン」
『お祭り銀次捕物帳』主題歌 「青春を打ち鳴らせ」

その他

歌謡曲としては、いしだあゆみとの共演による「東京の夜は更けて」（1964年）や、里吉しげみが作詞、小林亜星が作曲を手掛けた「オー・チン・チン」（1969年）などがあります。「オー・チン・チン」は、幼い頃の陰茎を懐かしむというユニークな歌詞内容で話題を呼び、ジャケットイラストは水森亜土が担当しました。メジャーレーベル盤とアストロミュージック盤では一部歌詞が異なるなど、バージョン違いも存在します。また、葵まさひこ（鈴木雅彦名義）のソロシングルとして「白い小径」（1969年）や「港のためいき」（1970年）もリリースされています。その他にも「待ちぼうけ」（1973年）、「ある日突然に」（1973年）、「哀しみの涙」、「ワイン小唄」（1973年）、テレビ番組『モーニングジャンボ奥さま8時半です』テーマ曲の「奥さま8時半です」など、幅広い楽曲を歌唱しました。

彼らはまた、以下のアルバムをリリースしています。

『オー・チン・チン～ハニー・ナイツ有線ヒット曲をうたう』（コロムビア/DENON）
* 『ファースト・アルバムあなたのためなら／ふりむかないで』（テイチク/UNION）

ハニー・ナイツは、その卓越したコーラスワークで、CM音楽や子供向け番組ソングといった分野を中心に、日本の音楽シーンに多大な貢献を果たしました。5000曲という驚異的な録音数は、彼らが時代の要求に応え続けた証であり、その歌声は今なお多くの人々の記憶に残っています。

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