バイコンタ

バイコンタ

バイコンタ（Bikonta）は、真核生物の主要な分類群の一つであり、その名称はラテン語やギリシャ語で「2つの鞭毛」を意味する言葉に由来します。このグループに属する多くの生物は、生活環のある段階で移動能力を持つ細胞（遊走細胞）を形成し、その際に推進力として2本の鞭毛を用いるという形態的な特徴を持っています。

陸上に生育する植物や、海中・淡水中に生息する様々な藻類、そして多岐にわたる種類の原生生物がバイコンタに含まれます。形態的な特徴である2本の鞭毛の存在に加え、バイコンタのメンバーは分子レベルでも共通した特徴を共有しています。特に、葉酸の代謝経路に関わる酵素であるジヒドロ葉酸レダクターゼ（DHFR）とチミジル酸シンターゼ（TS）をコードする遺伝子が、一つのタンパク質として機能する融合型遺伝子（DHFR-TS融合型）として存在するという特徴が知られています。

真核生物の系統を大きく二分する考え方の一つとして、バイコンタは遊走細胞が1本の鞭毛を持つ「ユニコンタ」（Unikonta、ユニは「1つ」の意）と対比されます。ユニコンタには、形を自由に変えるアメーバの仲間を含むアメーボゾアや、動物や真菌（カビやキノコなど）が含まれるオピストコンタ（「後方鞭毛」の意）といったグループが含まれます。例えば、ヒトの精子は1本鞭毛であり、オピストコンタひいてはユニコンタに分類されます。さらに、真核生物の進化の初期段階を探る分類体系の中には、バイコンタとアメーボゾアを合わせて「アンテロコンタ」（Anterokonta、「前方鞭毛」の意）とし、細胞の後方に鞭毛を持つオピストコンタと区分する場合もあります。

ただし、鞭毛の有無や数による分類はあくまで典型的な特徴であり、進化の過程で鞭毛を失ったり、形態が大きく変化したりした生物もバイコンタやユニコンタの中に多く存在します。例えば、一部の寄生性原生生物や、固着性の藻類などでは、遊走細胞を形成しないか、鞭毛が痕跡的になっていることがあります。

バイコンタは、現代の分子系統学的な研究に基づき、さらにいくつかの主要な系統群に細分されます。主な下位分類群としては、以下のようなグループが挙げられます。

アーケプラスチダ: 陸上植物、緑色植物、紅色植物、灰色植物など、光合成を行う真核生物の根幹をなすグループです。
ストラメノパイル: 珪藻や褐藻、卵菌類、黄金色藻などを含む多様なグループで、不等長な2本の鞭毛を持つことが特徴的です。
アルベオラータ: 繊毛虫、マラリア原虫などのアピコンプレクサ、渦鞭毛藻などが含まれ、細胞膜直下に袋状構造（アルベオリ）を持ちます。
ハプト植物: 円石藻や黄金色藻の一部などが含まれるグループです。
クリプト植物: クリプト藻などが含まれます。
リザリア: 有孔虫や放散虫、ケルコゾアなど、糸状や網状の偽足を持つアメーバ状の原生生物グループです。
エクスカバータ: ディプロモナス類、パラバサリア類、ユーグレナ類など、細胞の腹側に溝状の構造を持つ、形態的に多様な原生生物グループです。

バイコンタはユニコンタとともに、真核生物の系統樹における最も大きな分岐の一つを形成しており、地球上の生物多様性を理解する上で非常に重要な位置を占めています。分子データの解析に基づく分類体系は常に研究が進んでおり、今後も改訂される可能性があります。

関連項目

ディアフォレティケス

参考文献

Stechmann, A., Cavalier-Smith, T. (2003). The root of the eukaryote tree pinpointed. Curr. Biol., 13(17), R665–R666.
Cavalier-Smith, T. (2004). Only six kingdoms of life. Proc. R. Soc. Lond. B, 271, 1251–1262.

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