バインシレ層
バインシレ層（バインシレそう）
バインシレ層は、モンゴル国に位置する白亜紀後期（上部白亜系）の地層です。1959年にVasilievらによって初めて報告されました。
地層の特徴
バインシレ層は、主に石灰質のコンクリーションを含む多様な色彩の粘土岩と砂岩で構成されています。特に、灰色の泥岩と黄褐色の中粒砂岩が特徴的です。層の厚さは最大で300メートルに達し、ゴビ砂漠東部で最も完全な地層が確認されています。この地層は、細粒でしばしば斜交層をなす灰色の砂岩と、粘土岩や凝固した礫岩が交互に重なっており、上部には赤色から茶色の泥岩が比較的厚く堆積しています。
Baynshire地域やBurkhant地域では、泥岩、シルト岩、砂岩、礫岩が主体であり、これらの堆積物の多くは河川によって運ばれたと考えられています。バインシレ層が形成された当時、この地域は河川や湖などの大きな水域が存在するステップ気候でした。一部には湖も存在したと考えられていますが、Baynshire地域で見られる砂岩層の大規模な斜交層理は、蛇行する大規模な河川系の存在を示唆しています。バインシレ層が堆積した後期には、大きな河川が海と直接つながり、ゴビ砂漠東部の大部分を流れていたと考えられています。
層序
JerzykiewiczとRussellの研究によると、バインシレ層は下部と上部の2つのユニットに分けられます。Danilovらは、下部のユニットがセノマニアン期から前期チューロニアン期、上部のユニットが後期チューロニアン期からサントニアン期に相当すると提唱しました。下部のユニットは、かつて活発な河川が存在したことを示す広範囲の礫岩で構成されています。一方、上部のユニットは砂岩が挟まれた泥岩と粘土岩が主体であり、河川だけでなく湖や他の水域も存在していたことを示唆しています。
他の地層との比較から、バインシレ層の古生物相は約9300万年前から約8000万年前の後期白亜紀、チューロニアン期から前期カンパニアン期に相当すると考えられています。しかし、バインシレ層の磁気層序学的調査からは、この地層が白亜紀の長期正磁極期に堆積したことが示唆されています。この正磁極期はサントニアン期の終わりまでしか継続しておらず、セノマニアン期から後期サントニアン期、約9800万年前から約8300万年前がバインシレ層の年代として推定されています。2012年には、AverianovとSuesがゴビ砂漠の複数の地層を再調査し、生層序学的データと過去の年代測定を用いて、バインシレ層がセノマニアン期からサントニアン期のものであると考えました。彼らは、下部のユニットを9800万年前から9000万年前（前期セノマニアン期から後期チューロニアン期）、上部のユニットを9000万年前から8300万年前（後期チューロニアン期から後期サントニアン期）としました。2020年にKurumadaらが発表したカルサイトのウラン-鉛年代測定法では、9590万年前±600万年前と8960万年前±400万年前という年代が得られ、バインシレ層の正確な年代は1億200万年前から8600万年前と推定されました。
他の地層との対比
多くの研究者は、バインシレ層がイレンダバス層と対比できる可能性を指摘してきました。これは、脊椎動物群集の類似性に基づいています。しかし、Van Itterbeeckらは2005年にこの対比に反論し、車軸藻と貝虫の群集に基づいてイレンダバス層がより新しいネメグト層とほぼ同じ年代であると結論付けました。そのため、これらの地層は後期カンパニアン期から前期マーストリヒチアン期のものとされています。これに対し、AverianovとSuesはバインシレ層、イレンダバス層、ビセクティ層の対比を提唱しました。2015年、Tsuihijiらは、Van Itterbeeckらが用いた微化石群集がマーストリヒチアン期に限定されないこと、類似した堆積環境や気候条件のためにこれらの群集が類似した可能性が高いことを指摘し、イレンダバス層とネメグト層の対比は支持できないとしました。
古生物相
バインシレ層からは多様な生物の化石が発見されています。脊椎動物では、特にテリジノサウルス類とカメの化石が豊富です。また、ハドロサウルス上科の化石も多く、特にBaynshire地域からは多数の化石が産出しています。ゴビハドロスの標本もこの地域で発見されました。さらに、テリジノサウルス科のエルリコサウルスとセグノサウルス、曲竜類のタラルルスとツァガンテギアの間で生態的地位が分かれていたことが報告されています。しかし、バインシレ層の哺乳類の化石は少なく、2015年時点で記載されている哺乳類はツァガンデルタのみです。
脊椎動物の化石に加えて、Bor Guvé地域やKhara Khutul地域からは豊富な果実の化石も回収されており、特にBor Guvé地域で多く見られます。これらの果実はオクラに似ていますが、分類学的な位置は不明であり、今後の研究が期待されています。
外部リンク
バインシレ層 - 岡山理科大学
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