バグラーム

バグラームは、アフガニスタンのパルヴァーン州に位置する古代都市であり、その歴史は数千年に及びます。かつては「コーカサスのアレクサンドリア」や「カーピーサー」と呼ばれ、ガンダーラの首都であった時代もありました。首都カーブルから北へ約20kmに位置し、ゴルバンド峡谷とパンジュシール渓谷の交わる地点にあります。この場所は、シルクロードの重要なルート上にあり、古代インドからの主要な街道が西へ山を越えてバーミヤーンへと続いていました。

古代の歴史

バグラームの最初の建設時期は不明ですが、紀元前6世紀中ごろにはアケメネス朝のキュロス2世によって破壊された記録があります。その後、ダレイオス1世によって再建され、紀元前320年代にはアレクサンドロス大王がこの都市を占領し、要塞都市「コーカサスのアレクサンドリア」を建設しました。この都市は、ギリシアの都市計画の特徴を備え、レンガの城壁と四隅の塔を持つ方格設計で造られました。中央通りには商店や作業場が並んでいたとされています。

アレクサンドロス大王の死後、バグラームは将軍セレウコスの支配下に置かれ、その後マウリヤ朝に譲渡されました。紀元前185年にマウリヤ朝が滅亡すると、グレコ・バクトリア王国がこの地を支配し、インド・グリーク朝が首都とした時期もありました。1世紀にはクシャーナ朝の首都となり、東西の貿易の中心地として栄えました。「バグラームの遺宝」と呼ばれる出土品は、当時の貿易が盛んであったことを示しています。

しかし、バグラームで発見された工芸品は、純粋にギリシア、ローマ、中国、インドのものが多く、グレコ・ブッディスト美術のような異なる文化が混ざり合ったものは少ないのが特徴です。

マウリヤ朝の支配

マウリヤ朝は、ディアドコイ戦争中にインド亜大陸北部に勢力を拡大しました。紀元前305年、マウリヤ朝の始祖チャンドラグプタは、セレウコス1世との短期間の戦いを経て和解し、ガンダーラ、アラコシア、そしてバグラーム以南の地域を譲り受けました。マウリヤ朝がアフガニスタン南部を支配した約120年間には、仏教が伝来し、ゾロアスター教や土着の信仰と共に重要な宗教として広まりました。この時代には、カーブルとパンジャーブ、ガンジス平原を結ぶ大幹道が建設され、商業や芸術、建築が発展しました。特にアショーカ王の時代には、仏塔の建設が進みました。アショーカ王の法勅は、インド亜大陸全体で発見されており、その一部はアフガニスタンでギリシア語とアラム語で記されたものも見つかっています。これらの碑文は、当時、ギリシア語が洗練された哲学用語とともに用いられていたことを示しています。

近代

現代においてバグラームには、戦略的に重要なバグラム空軍基地が置かれています。この基地は1976年に建設され、1979年から1989年まではソ連の空軍基地として使用されました。その後、アメリカ軍がアフガニスタンでの活動拠点として利用していましたが、現在はアフガニスタン政府に返還されています。また、バグラームにはかつてパルヴァーン拘置所があり、その人権問題がメディアで取り上げられたこともありました。2015年には、自爆テロが発生し、多数の死傷者が出ました。

バグラームは、古代から現代に至るまで、常に歴史の重要な舞台となってきた都市です。その遺跡は、古代の文化や文明の交流を示す貴重な証拠であり、今もなお、その歴史を語り続けています。

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