パウロ6世 (ローマ教皇)

パウロ6世：激動の時代を生きた教皇

パウロ6世（1897年9月26日 - 1978年8月6日）は、第262代ローマ教皇であり、カトリック教会の聖人です。本名はジョヴァンニ・バッティスタ・モンティーニ。ヨハネ23世の後を継ぎ、第2バチカン公会議を完成させ、その理念の実施に尽力しました。

生涯

聖職者としての道のり

北イタリアの貴族の家に生まれたモンティーニは、1920年に司祭に叙階されました。グレゴリアン大学で学んだ後、教皇庁国務長官のパチェッリ枢機卿（後の教皇ピウス12世）の下で働き始めます。ピウス12世の時代には、ルイジ・マリオーネ枢機卿の下で、ファシスト党やナチス党との交渉など、困難な任務を数多くこなしました。

1944年にマリオーネ枢機卿が亡くなると、モンティーニはドメニコ・タルディーニと共に国務長官代行に任じられ、反ドイツ・レジスタンスの保護に尽力します。1953年にはミラノ大司教に任命されますが、当時の教皇ピウス12世は、モンティーニが有力な後継者候補と見なされていたこともあり、枢機卿の地位を与えませんでした。ヨハネ23世が教皇に就任すると、モンティーニはすぐに枢機卿に任命されました。

教皇としての歩み

ヨハネ23世の協力者として第2バチカン公会議の運営に携わったモンティーニは、ヨハネ23世の死後、教皇に選出され「パウロ6世」を名乗ります。戴冠式後、自身の教皇冠をワシントンD.C.の聖母教会に寄贈しました。パウロ6世は戴冠式を行った最後の教皇であり、次のヨハネ・パウロ1世以降の教皇は戴冠式を拒否し、就任式へと変更しています。

教会改革

パウロ6世は第2バチカン公会議を完成させ、その理念に基づく教会改革に取り組みました。また、司教会議（シノドス）を初めて開催し、現代に続く制度を確立しました。しかし、1968年に発表した回勅「フマーネ・ヴィテ」は、人工的な産児制限を否定したため、大きな論議を呼びました。産児制限と司祭の独身制は、当時世界中で議論を呼んだ問題であり、教皇を悩ませました。

旅する教皇

パウロ6世は「旅する教皇」として知られ、教皇として初めて5大陸を訪問、初めて飛行機を利用、初めて聖地エルサレムを訪問するなど、多くの「初めて」を経験しました。エキュメニズム（教会の一致）にも力を注ぎ、東方教会の総主教を訪問、イングランド国教会のカンタベリー大主教や正教会のコンスタンディヌーポリ総主教とも会談しました。また、枢機卿団の人数を増やし、80歳以上の枢機卿のコンクラーヴェでの投票権を廃止するなど、教皇選出方法の改革も行いました。

精力的な活動と世界への旅を通して、パウロ6世は第2バチカン公会議後の新しい教皇像を示しました。1978年にカステル・ガンドルフォで死去しましたが、彼の示した「現代の教皇」としての姿勢は、後継者たちに引き継がれています。

列福と列聖

パウロ6世は、死後36年経った2014年10月19日に教皇フランシスコによって列福されました。胎児の脳腫瘍が消えた奇跡が、彼の執り成しによるものと認められたのです。列福式には、前教皇ベネディクト16世も出席しました。

2018年3月6日、フランシスコはパウロ6世を含む福者5名の列聖に必要な奇跡を認め、教令の発布を承認しました。同年5月19日には福者6名の列聖が決定し、10月14日にバチカンで列聖式が執り行われ、パウロ6世は聖人として宣言されました。これにより、ヨハネ・パウロ1世を除く20世紀後半の教皇全員が聖人となりました。

替え玉説

一部には、パウロ6世の鼻や耳の形が変化しているとして、途中から替え玉が存在したのではないかという説も存在します。しかし、これらの主張には確固たる証拠があるとは言えません。

パウロ6世は、その生涯を通して教会と世界に大きな影響を与えました。彼の功績は、カトリック教会史に深く刻まれています。

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