ビル・シンガー

ウィリアム・ロバート・シンガー（William Robert Singer, 1944年4月24日 - ）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス出身の元プロ野球選手。投手として、主に1960年代後半から1970年代にかけて活躍しました。その投球フォームから「Sing Sing」や「The Singer Throwing Machine」というニックネームで呼ばれていました。

プロ入りとドジャース時代

1961年、シンガーは地元のロサンゼルス・ドジャースと契約を結び、プロ野球選手としてのキャリアをスタートさせました。しかし、メジャーリーグへの道のりは決して平坦ではありませんでした。1964年9月24日にシカゴ・カブス戦でメジャーデビューを飾るものの、その後3年間はわずか7試合の登板にとどまりました。

転機が訪れたのは、サンディ・コーファックスが引退した1967年でした。開幕当初は敗戦処理のような役割を担っていましたが、5月からは先発ローテーションに定着。6月20日のアトランタ・ブレーブス戦では自己最多となる14奪三振を記録し、その実力をアピールしました。そして、6月24日のサンフランシスコ・ジャイアンツ戦では、8安打を浴びながらもウィリー・メイズから3三振を奪うなど10奪三振の力投を見せ、メジャー初完投・初完封勝利をフアン・マリシャル相手に飾りました。後半戦だけで10勝を挙げるなど、この年12勝8敗、防御率2.64の好成績を収めました。

1968年には防御率2.88、リーグ3位の227奪三振を記録しましたが、13勝17敗と負け越してしまいます。

1969年4月7日のシンシナティ・レッズ戦では、7回からリリーフとして3回を無失点に抑え、同年から正式に公式記録となったセーブを記録した最初の投手となりました。前半戦で13勝7敗、防御率1.98という素晴らしい成績を残し、自身初のオールスターゲームに選出。2回を無失点に抑える活躍を見せました。この年は、チームメイトのクロード・オスティーンと並んでチーム最多となる20勝を挙げ、防御率はシーズン終盤まで1点台を維持。タイトルこそ逃したものの、2.34という好成績を残しました。また、リーグ3位の247奪三振を記録し、同年限りで引退したドン・ドライスデールの後を継ぎ、ドジャースの先発の柱となりました。

1970年7月20日のフィラデルフィア・フィリーズ戦では、死球とエラーによる走者を2人許したのみで、ノーヒットノーランを達成。7月には5勝0敗を記録し、プレイヤー・オブ・ザ・マンスを受賞しました。しかし、故障の影響もあり、この年は8勝にとどまりました。1971年には開幕投手を務めましたが、10勝17敗、翌年も6勝16敗と大きく負け越すなど、不本意な成績が続きました。

エンゼルス、レンジャーズ、ツインズ、そしてブルージェイズへ

1972年11月28日、アンディ・メサースミスら2名との交換トレードで、フランク・ロビンソン、ボビー・バレンタインら4名と共にカリフォルニア・エンゼルスへ移籍。

移籍1年目の1973年は20勝14敗、防御率3.22、241奪三振を記録し、再び輝きを取り戻しました。オールスターゲームにも出場しましたが、ジョニー・ベンチ、ボビー・ボンズにホームランを浴びるという苦い経験もしました。この年、ノーラン・ライアンが383奪三振を記録し、2人の合計奪三振数は624となりました。これは、2001年にアリゾナ・ダイヤモンドバックスのランディ・ジョンソンとカート・シリングが665奪三振を記録するまで、メジャーリーグ記録でした。

しかし、1974年、1975年は共に7勝に終わり、1975年12月10日に1選手プラス10万ドルとの交換トレードでテキサス・レンジャーズに移籍。

1976年6月1日にバート・ブライレブン他1選手との交換トレードで、他3選手プラス25万ドルと共にミネソタ・ツインズに移籍し、シーズン通算で13勝を挙げました。11月5日、エクスパンションドラフトで新球団トロント・ブルージェイズから3巡目に指名を受け移籍。1977年は開幕投手を務めましたが2勝8敗に終わり、1978年は登板がなく解雇され、同年引退しました。

エピソード

堀内恒夫がロサンゼルス・ドジャースのベロビーチキャンプに参加した際、堀内にチェンジアップを教え、堀内はその球種を武器の一つとしました。

主な記録と表彰

MLBオールスターゲーム選出：2回 (1969年, 1973年)
プレイヤー・オブ・ザ・マンス：1回 (1970年7月)
* ノーヒッター：1回 (1970年7月20日)

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