ピスコサワー

ピスコサワー：ペルーとチリ、二つの国の間で愛されるカクテル

ピスコサワーは、ペルーを起源とするアルコールカクテルであり、ペルーとチリの食文化に深く根付いています。名前は、ベースとなる酒の「ピスコ」と、カクテルの種類である「サワー」を組み合わせたものです。

ピスコサワーのレシピ

ペルーのピスコサワーは、ペルー産のピスコをベースに、搾りたてのライムジュース、砂糖のシロップ、氷、卵白、アンゴスチュラ・ビターズを加えます。一方、チリのピスコサワーは、チリ産のピスコと非常に酸っぱいピカレモンを用い、ビターズと卵白は加えません。パイナップルなどの果物やコカの葉などの植物を加えることもあります。

ピスコサワーの歴史

ピスコをベースとしたカクテルは1700年代に遡る可能性がありますが、現在のピスコサワーは、1920年代初めにペルーの首都リマで、アメリカ人バーテンダーのヴィクター・ヴォーン・モリスが開発したと考えられています。モリスは、ペルー中央部の都市セロ・デ・パスコで働くために1903年にアメリカ合衆国を発ちました。1916年に彼はMorris' Barを開店し、ここはすぐにペルーの上流階級や英語話者の外国人にとって人気のバーとなりました。ピスコサワーに関するもっとも古い記録は、モリスと彼のバーがペルーおよびチリ内で発行していた新聞や雑誌に掲載された広告であり、1920年代初めのものです。その後、1920年代後半にモリスのバーで働いていたペルー人バーテンダーのマリオ・ブリヘットがアンゴスチュラ・ビターズと卵白を加え、現在のレシピとなりました。

南米のクラシック、ピスコサワー

カクテルの専門家は、ピスコサワーを南アメリカの古典と見なしています。チリとペルーは、どちらもピスコサワーを「国酒」としており、両国とも、ベースとなるピスコの所有権を主張しています。そのためピスコサワーは、ラテンアメリカの大衆文化において、重要で頻繁に議論されるトピックとなっています。メディアや著名人は、しばしば、どちらの方を好むかを表明し、議論を引き起こします。ペルーでは、毎年2月の第1土曜日をピスコサワーを称える祝日としています。

名前とピスコの由来

「サワー」という用語は、ベースリカー（バーボンまたはその他のウイスキー）、レモンまたはライムのジュースおよび甘味料を含むカクテルを指します。ピスコは、このカクテルに用いられるベースリカーであり、イカ県の港湾都市ピスコに由来します。歴史家のOlwyn Blouetと政治地理学者のBrian Blouetは、著書「Latin America and the Caribbean」の中で、ペルー副王領時代の初期のブドウ園の発展と16世紀後半にアンデス山脈の鉱山労働者の需要に応えるために酒類市場が形成された様子を記述しています。より強い酒が求められるようになったことから、ピスコや近隣のイカで、ワインをブランデーに蒸留するようになり、できた製品には、蒸留、輸出が行われた港の名前から名づけられました。

起源を巡る論争

ピスコサワーの起源については、ペルーとチリの間で論争が続いています。大部分の歴史家は、モリスをピスコサワーの開発者であると考えていますが、その他の可能性を示す証拠により、起源については様々な説があります。

チリでは、1980年代の都市伝説では、ピスコサワーの開発者は、帆船サンシャイン号のイギリス人司厨長Elliot Stubbであるとされました。チリの民俗学者で歴史家のオレステ・プラスは、1872年のペルーの新聞El Comercio de Iquiqueによると、Stubbは下船休暇を取得した後、ペルーのイキケの港でバーを開き、色々実験しながらピスコサワーを開発したと書いて、この都市伝説を広めました。しかし、後の調査で、El Comercio de Iquiqueに書かれたのは実際はウイスキーサワーについて言及したものだったことが判明し、この説は否定されました。

まとめ

ピスコサワーは、ペルーとチリという二つの国で愛され、その起源を巡って論争が繰り広げられるカクテルです。それぞれの国のピスコを使い、独自のレシピで作られるピスコサワーは、両国の文化を象徴する飲み物として、これからも愛され続けるでしょう。

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