フマーユーン廟

フマーユーン廟の紹介

フマーユーン廟（ヒンディー語: हुमायूँ का मक़बरा）は、インドの首都デリーに位置する、ムガル帝国の第2代皇帝フマーユーンのために建設された壮麗な墓廟です。この建築物は、インドにおけるイスラーム建築の代表作であり、タージ・マハルにも影響を与えたとされるほどの芸術的価値を持っています。

歴史的背景

フマーユーンは1540年にインド北部の王位を奪われ、ペルシアに亡命しました。その後、サファヴィー朝の支援を受け、1555年に再びデリーとアーグラを奪回しましたが、翌年に事故死します。フマーユーンの死後、彼の王妃であるハミーダ・バーヌー・ベーグムは亡き夫のために、デリーのヤムナー川の畔に壮大な霊廟を建設することを決定しました。この計画が始まったのはアクバル大帝の治世の初期頃で、ペルシアの建築家サイイド・ムハンマド・イブン・ミラーク・ギヤースッディーンの指導の下、実に9年の歳月を費やして完成したとされています。

四分庭園とその意義

フマーユーン廟の周囲には、ペルシア式のチャハルバーグ（四分庭園）が広がっています。これは四つのエリアに分かれた正方形の庭であり、水路や園路が格子状に配置されています。庭園は約10ヘクタールもの広さを持ち、インド亜大陸における最古のチャハルバーグ形式を持つものとされています。この庭園は中近東の「楽園」の思想が反映されており、涼しげな日陰と豊富な水が特徴です。

建築の特徴

フマーユーン廟は上下の二層構造を持ち、正方形の基壇の上に立っています。基壇は約7メートルの高さで、上層は48メートルの一辺を誇る建物が置かれています。霊廟の中心には大きなドームがあり、周囲には美しいイーワーン（アーチ状の構造）が配置されています。外側のドームは白い大理石で覆われ、高さは約38メートルです。正面は赤砂岩と白大理石で装飾され、幾何学模様が施されています。こうした装飾には、象嵌技法が見られるなど、芸術的工夫が凝らされています。

内部のドームは二重構造になっており、3連アーチ窓が施されています。ここにはフマーユーンの模棺が安置されており、実際の遺体はその下に埋葬されています。このような形式は中央アジアの葬送文化に由来しています。

世界遺産としての登録

1993年、フマーユーン廟はユネスコの世界遺産に登録され、建築技術や記念碑的芸術における重要な交流を代表するものとして評価されています。特に、フマーユーン廟は彼の時代の重要な建築様式を示すものであり、ムガル帝国の歴史における象徴的な存在としても位置づけられています。

ムガル帝国とフマーユーン廟

フマーユーン廟は、1867年に起こったインド大反乱の際、最後のムガル皇帝バハードゥル・シャー2世の避難所となりました。彼はこの場所で捕えられ、帝位を剥脱されました。フマーユーン廟はこうした歴史的事件と密接に関連し、ムガル帝国の終焉という重要な場面を象徴しています。

アクセス・周辺の観光名所

デリーの中心部から約5キロメートルの距離に位置し、インディラ・ガンディー国際空港からもアクセスが良いこの場所は、観光名所としても人気があります。周囲には、同時代のイスラーム建築を代表するイーサー・ハーン廟やニザームッディーン廟など、数多くの遺跡があり、訪れる人々に歴史を感じさせる魅力を提供しています。

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