フランソワ・レシャンバック

フランソワ・レシャンバック：放浪の映画作家

フランソワ・レシャンバック（François Reichenbach, 1921年7月3日 - 1993年2月2日）は、フランスの映画界において、監督、撮影監督、そしてプロデューサーとして多彩な才能を発揮した人物です。特に、長編ドキュメンタリー『アメリカの裏窓』で国際的な注目を集め、オーソン・ウェルズ監督の『オーソン・ウェルズのフェイク』のプロデュースを手がけたことで広く知られています。また、日本では1968年の冬季グルノーブルオリンピックの記録映画『白い恋人たち』をクロード・ルルーシュと共同で監督したことで有名です。

生い立ちと映画界への足跡

1921年、パリの裕福な画商の家庭に生まれたレシャンバックは、映画プロデューサーのピエール・ブロンベルジェの甥にあたります。当初は音楽を学ぶためにスイスのジュネーヴに滞在しましたが、その後、アメリカで絵画ブローカーとしてのキャリアをスタートさせました。放浪癖があったレシャンバックですが、伯父であるブロンベルジェに映画界への道を勧められ、映画制作の世界へと足を踏み入れました。

1950年代初頭には、人物、軽い散歩、世界を旅する中で感じた印象などをテーマにしたドキュメンタリー作品の制作に携わりました。彼の初監督作品は1954年の短編『Paris qui ne dort pas（眠らぬパリ）』です。1955年には、『Impressions de New York』、『New York ballade』、『Visages de Paris』という3本の短編を制作。これらの作品は、『カイエ・デュ・シネマ』誌の批評家ジャック・ドニオル＝ヴァルクローズがコメンタリーを執筆し、ブロンベルジェがプロデュース、彼の製作会社「レ・フィルム・ド・ラ・プレイヤード」とRTFが製作しました。また、『Visages de Paris』の音楽はミシェル・ルグランが担当しています。ブロンベルジェとの協力関係は、1976年の『Sex o'clock USA』まで続きました。

代表作と国際的な評価

1958年に制作され、1960年に公開された長編ドキュメンタリー『アメリカの裏窓』は、大きなセンセーションを巻き起こしました。この作品は、アメリカ社会の隠された側面を描き出し、レシャンバックの国際的な評価を決定づけるものとなりました。1960年のカンヌ国際映画祭ではパルムドールにノミネートされましたが、受賞には至りませんでした。しかし、1962年のサンフランシスコ国際映画祭ではドキュメンタリー部門で金門賞を受賞しています。この作品では、レシャンバック自身が脚本、撮影監督、演出を手がけ、クリス・マルケルがダイアローグを執筆、音楽はミシェル・ルグランが担当しました。

1962年には、長編ドキュメンタリー『Un cœur gros comme ça』で、パリで活動するセネガル人ボクサーの姿を描きました。この作品では、ミシェル・ルグランとジョルジュ・ドルリューが共同で音楽を担当し、バッハやロッシーニの音楽に加え、レオ・フェレのシャンソンなども使用されています。また、ジャン＝ポール・ベルモンドやミシェル・モルガンがカメオ出演しています。

幅広い活動と晩年

レシャンバックは、1973年にオーソン・ウェルズ監督の『オーソン・ウェルズのフェイク』をプロデュースし、自身も出演しました。この作品は、天才贋作者エルミア・デ・ホーリーをめぐる真贋虚実を描いたもので、映画史に残る傑作として知られています。

また、レシャンバックは、映画監督だけでなく、ユーディ・メニューインやアルトゥール・ルービンシュタインなどの音楽家、ジョニー・アリディーやバルバラなどのポピュラー歌手、ペレやパスカル・オルメタなどのサッカー選手、彫刻家のアルマン、ギタリストのマニタス・デ・プラタ、画家デュノワイエ・ド・セゴンザック、指揮者カラヤン、女優ブリジット・バルドーなど、多岐にわたる分野の著名人を演出しました。

1993年2月2日、レシャンバックはパリ郊外のヌイイ＝シュル＝セーヌで亡くなりました。70歳でした。

フィルモグラフィー

短編

Paris qui ne dort pas (1954)
Visage de Paris (1956) 9分
Novembre à Paris (1956) 9分
Impressions de New York (1955)
l'Eté Indien (1957)
Les Marines (1957)
A la mémoire du Rock (1962) 11分 (主演：ヴィンス・テイラー)
Le Paris des photographes (1962) 13分
Le Paris des mannequins (1962) 11分
Le professeur de piano (1965) 6分
今宵バルドーとともに Spécial Bardot (1967) 47分
Gromaire (1967) 11分
Je vous salue Paris (1967) 10分
Dunoyer de Segonzac (1984) 11分
Naissance d'un Opéra à la Bastille (1983) 20分

長編

アメリカの裏窓 L'Amérique insolite (1960)
Un cœur gros comme ça (1962)
La douceur du village (1963) (編集：クリス・マルケル、音楽：ミシェル・ルグラン)
La raison du plus fou (1973)
オーソン・ウェルズのフェイク Vérités et mensonges (1974) (監督：ウェルズ、撮影監督・プロデューサー)
白い恋人たち Treize jours en France (1968) (共同監督：ルルーシュ)
Une passion mexicaine... (1979)
Houston Texas (1980) (アメリカの死刑をテーマ)
アダージェット モーリス・ベジャールの時間 Le temps d'un ballet (1982)
Le Japon de François Reichenbach (1983)

受賞歴

1962年: 『Un cœur gros comme ça』でルイ・ドゥリュック賞、ロカルノ国際映画祭金豹賞
1964年: 『La douceur du village』でカンヌ国際映画祭短篇グランプリ
1965年: カンヌ国際映画祭審査員に就任
1970年: ルービンシュタインについての映画『L'amour de la vie』でアカデミー賞を受賞

外部リンク

フランソワ・レシャンバック - allcinema
フランソワ・レシェンバック - KINENOTE
François Reichenbach - IMDb（英語）
* François Reichenbach - BiFi 仏語

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