フランチェスコ・ランディーニ

フランチェスコ・ランディーニ（Francesco Landini, またはランディーノ Landino とも）は、14世紀後半のイタリアで最も有名かつ尊敬された音楽家の一人です。彼は作曲家としてだけでなく、優れたオルガニスト、歌手、詩人、そして楽器製作者としても知られ、特にイタリアにおいて大きな影響力を持っていました。

生涯

ランディーニの生涯については、詳細は不明な点も多いものの、いくつかの確かな情報や、当時の文献、特にフィレンツェの記録などから、その輪郭が明らかになっています。1325年頃の生まれとされる彼の生涯に関する主要な史料は、年代記作者フィリッポ・ヴィッラーニが1385年に著したフィレンツェ市民に関する書物です。

出生地については、フィレンツェとする説が一般的ですが、彼の親族にあたる人文主義者クリストフォロ・ランディーノはフィエーゾレ出身としています。父親はジョット派の著名な画家、ヤコポ・デル・カセンティーノでした。ランディーニは幼少期に天然痘により視力を失いましたが、このことが彼を音楽の世界へと深く導く契機となりました。彼はリュートを含む様々な楽器の演奏、歌唱、詩作、そして作曲といった多様な音楽的技能に熟達しました。ヴィッラーニの年代記によれば、ランディーニはリュートとプサルタリーを組み合わせた「syrena syrenarum」と呼ばれる楽器（現代のバンドゥーラの先駆とされる）を発明したとも記されています。

ヴィッラーニの記録では、ランディーニは1360年代にヴェネツィアに滞在していたキプロス王から月桂冠を授与されたと伝えられています。また、1370年以前に北イタリアで過ごした時期があったとも言われており、その証拠として、彼が作曲したモテットの中には、1368年から1382年までヴェネツィアのドージェを務めたアンドレア・コンタリーニに献呈された作品があります。さらに、北イタリアの文献にもランディーニの作品に関する言及が頻繁に見られます。

1361年、ランディーニはフィレンツェのサンタ・トリニタ修道院のオルガニストに就任し、1365年以降はサン・ロレンツォ聖堂でオルガニストを務めました。ヴィッラーニによると、彼は当時の政治的・宗教的な議論に深く関与していたにもかかわらず、フィレンツェ当局からの厚遇を享受していたようです。ランディーニはトレチェント音楽の作曲家たちの多くと交流があり、サンタ・トリニタ修道院ではロレンツォ・ダ・フィレンツェと同僚でした。また、1370年代にはアンドレア・ダ・フィレンツェと出会い、1375年頃にアンドレアがフィレンツェの僕会（Servite Order）のオルガン製作を行う際に、ランディーニに助言を求めました。この時の楽器調律の3日間で二人が飲んだワインの領収書が現存しており、当時の交流を示す貴重な資料となっています。ランディーニは他にも、1379年にサンティッシマ・アンヌンツィアータ聖堂の新しいオルガン製作に協力し、1387年にはサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のオルガン建造計画にも携わりました。

同時代の多くの著述家が、作曲家としての才能のみならず、歌手、詩人、オルガニストとしての技量、そしてフィレンツェを深く愛し献身した市民としてのランディーニの名声を伝えています。彼の音楽が聴衆を深く感動させるという定評は高く、当時の作家たちは例えば「その旋律の甘美さは、聴く者の胸から心臓を飛び出させるほどだ」といった言葉で称賛しています。

ランディーニは没後、フィレンツェのサン・ロレンツォ聖堂に葬られました。彼の墓石は一時行方不明となっていましたが、現在は再び教会に展示されており、そこにはポルタティフ・オルガンらしき楽器を持つランディーニの姿が描かれています。

音楽と影響

ランディーニは、イタリアの「トレチェント音楽」、あるいは「イタリアのアルス・ノーヴァ」と呼ばれる様式を代表する音楽家です。現存する彼の作品は、主に世俗音楽が中心です。宗教音楽を作曲した記録はあるものの、残念ながら現在まで伝わっている作品は一つもありません。現存作品には、2声のためのバッラータが89曲、3声のためのバッラータが42曲、そして2声と3声の両方の版が存在するバッラータが9曲含まれており、その他、数は少ないですが中世マドリガーレも含まれます。ランディーニは自ら作詞を手がけた作品も多いと言われています。彼の作品の多くはスクアルチャルーピ写本に収められており、これは現存する14世紀イタリア音楽全体の約4分の1を占める重要な資料です。

ランディーニは、「ランディーニ終止（Landini cadence）」あるいは「Landino sixth」として知られる特徴的な終止形にその名を冠しています。この終止形は、具体的には終止において導音（Leading-tone）が主音へと進行する直前に、その下にある第6音（下中音 Submediant）が挿入される形式です。ただし、この終止形をランディーニが最初に用いたわけではなく、また彼の作品のみに見られるものでもありません。トレチェント期の多声音楽に広く見られ、15世紀に入ってもジル・バンショワなどの作品で頻繁に使用されました。現存する作品の中で最も早くこの終止形を用いたのは、ゲラルデッロ・ダ・フィレンツェであるとされています。

ランディーニは自身が作曲したマドリガーレの一つに、次のような詞をつけたと伝えられています。「私は音楽、そして今涙する。私の甘く完全な調べを捨てて、通りの音楽を選ぶ賢しい人々を見て、嘆き悲しむ」。この詞は、彼が自身の音楽に対する深い思いと、同時代の音楽傾向に対する複雑な感情を抱いていたことを示唆しています。

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