フワヒン駅

フワヒン駅は、タイ王国プラチュワップキーリーカン県フワヒン郡に位置する、タイ国有鉄道南本線の重要な駅です。1911年11月25日に開業し、100年以上の歴史を持つこの駅は、一等駅として特急列車を含む全ての列車が停車します。1日あたり14往復、28本の列車が発着し、その内訳は特急4往復、急行2往復、快速5往復、普通3往復となっています。特に注目すべきは、普通列車の1往復がこの駅を始発・終着としている点です。

駅の正面は東向きで、町の中心部に位置しています。バンコクのクルンテープ駅からは229.04km離れており、特急列車で約3時間20分かかります。ナコーンパトム駅以南は単線区間でしたが、現在、ナコーンパトム駅からフワヒン駅までの区間で複線化工事が進められています。フワヒン駅は、王室関係者が頻繁に利用する場所でもあります。フワヒン郡内にはいくつかの宮殿があり、王室関係者が滞在する際、鉄道が利用されることがあります。そのため、駅の本屋側ホームには、王室専用の壮麗な待合室が設けられています。また、本屋と反対側のホームには信号扱所があります。

近年では、南本線の複線化に伴い、駅周辺での高架化工事が行われました。2023年12月11日には高架新ホームが供用開始され、駅の景観は大きく変わりました。歴史を振り返ると、南本線は1899年に着工されたタイで3番目の幹線でした。当初から1,000mm軌間を採用して敷設されました。南本線は、旧トンブリー駅-ペッチャブリー駅間が1903年6月19日に開業し、その後、南北3か所から延伸工事が始まりました。フワヒン駅は、ペッチャブリー駅側からの第二期工事として、1911年11月25日に終着駅として開業しました。その約2年後には、ワンポン駅まで延伸され、中間駅となっています。

駅の構造は、旧駅（地上ホーム）が単式と島式の複合型ホーム2面3線と待避線から構成されていましたが、高架化後は相対式2面2線の高架駅となりました。駅構内には、退役した蒸気機関車305号機が静態保存されています。この蒸気機関車は1925年にBaldwin社で製造されたもので、製造番号は58670です。さらに、駅前には西日本旅客鉄道（JR西日本）から譲渡された、元キハ58型2両の車両が図書館として活用されています。これらの車両は、A.P.D.101（元キハ58 224）とA.P.D.209（元キハ28 3017）で、かつて身延線を走っていた車両に似た塗装が施されています。

駅周辺には、アユタヤ銀行やヒルトン・ホアヒン・リゾート&スパ、フアヒン警察署、そして有名なホアヒンナイトマーケットなどがあります。これらの施設は、フワヒン駅を訪れる旅行者にとって便利な存在です。フワヒン駅は、その歴史的な価値と、現代的な機能性を兼ね備えた、タイの鉄道の重要な拠点と言えるでしょう。

参考文献として、高田隆雄著『タイ国の蒸気機関車』、柿崎一郎著『王国の鉄路 タイ鉄道の歴史』、渡邉乙弘著『タイ国鉄4000キロの旅』などが挙げられます。

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