ヘンリー・パーシー (初代ノーサンバランド伯)

初代ノーサンバランド伯ヘンリー・パーシー：波乱に満ちた生涯

初代ノーサンバランド伯ヘンリー・パーシー（1341年 - 1408年）は、中世イングランドの政局を駆け抜けた、野心と反骨精神に満ちた貴族でした。彼は、スコットランドとの国境警備という伝統的な役割を担いながら、王位を巡る陰謀、反乱、そして劇的な没落という、激動の時代を象徴する存在となりました。

北部貴族としての台頭

ヘンリー・パーシーは、第3代パーシー・オブ・アニック男爵ヘンリー・ドゥ・パーシーを父に、ランカスター伯ヘンリーの娘メアリを母に持ち、名門貴族パーシー家の後継者として生まれました。エドワード3世の時代から、パーシー家はスコットランドとの国境地帯における影響力を強め、ヘンリー自身も国境警備の任務に携わると共に、百年戦争にも従軍しました。1377年には、リチャード2世の戴冠式に出席し、ノーサンバランド伯爵に叙爵され、その地位を確固たるものとしました。

王への反逆、そして転落

しかし、リチャード2世の治世末期、ヘンリーの運命は暗転します。辺境守護職を剥奪された上、妻の甥であるラルフ・ネヴィルがウェストモーランド伯爵に叙爵されたことに不満を募らせたヘンリーは、1399年、リチャード2世の従弟ヘンリー・ボリングブルック（後のヘンリー4世）が起こしたクーデターに、ウェストモーランド伯らと共に加担します。リチャード2世廃位後、ヘンリー4世から恩賞としてマン島の支配権を獲得しますが、その蜜月関係は長くは続きませんでした。

1402年、ヘンリーは子のホットスパーと共にスコットランド軍を破り、ダグラス伯を捕虜としますが、その処遇を巡ってヘンリー4世と対立します。さらに、姻戚関係にあったウェールズの反乱指導者オワイン・グリンドゥールに捕らえられたサー・エドマンド・モーティマーの解放をヘンリー4世が拒否したことが決定的な亀裂となり、ヘンリーはダグラス伯やグリンドゥールと結び、反旗を翻します。

1403年、シュルーズベリーの戦いにおいて、弟のトマス・パーシーと息子のホットスパーが戦死。ヘンリー自身は降伏し、直接反乱に参加しなかったという理由で爵位こそ維持されたものの、その力は大きく削がれました。しかし、ヘンリーの野心は尽きることなく、1405年には、ヨーク大司教リチャード・スクループ、ノーフォーク伯トマス・モウブレーと呼応して、マーチ伯エドマンド・モーティマーを王位継承者に擁立し、再び反乱を起こしますが、敗北。スコットランドへ亡命を余儀なくされ、爵位と領土を没収されます。

悲劇的な最期

1408年、ヘンリーはイングランドへの帰還を試み、ヨークシャーに侵攻しますが、ブラマム・ムーアの戦いで敗死。その首は切断され、ロンドン橋に晒されるという、悲惨な最期を遂げました。

ヘンリーの死後、彼の孫であるヘンリー（ホットスパーの遺児）は、1416年にヘンリー5世によって爵位を与えられ、パーシー家は復権を果たしました。初代ノーサンバランド伯ヘンリー・パーシーの生涯は、シェイクスピアの戯曲にも描かれ、その波乱に満ちた人生は、後世に語り継がれています。

参考文献

森護『英国王室史話』大修館書店、1986年。
青山吉信編『世界歴史大系 イギリス史1 -先史～中世-』山川出版社、1991年。
海保眞夫『イギリスの大貴族』平凡社、1999年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
エドマンド・キング著、吉武憲司監訳『中世のイギリス』慶應義塾大学出版会、2006年。
トレヴァー・ロイル著、陶山昇平訳『薔薇戦争新史』彩流社、2014年。

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