ヘンリー・J・ハント

ヘンリー・ジャクソン・ハント：南北戦争の砲兵戦術を刷新した名将

ヘンリー・ジャクソン・ハント（Henry Jackson Hunt、1819年9月14日 - 1889年2月11日）は、南北戦争において北軍のポトマック軍砲兵隊長を務めた人物です。同時代の者からは、南北戦争最大の砲兵家かつ戦略家と評され、砲兵戦術の権威として初期近代軍における砲兵隊の組織と運用に関するマニュアルを改訂しました。彼の勇気と戦術的才能は、南北戦争の重要な局面でその結果を大きく左右しました。

初期の経歴

ハントはミシガン州デトロイトの辺境前哨基地で、職業軍人であるサミュエル・ウェリントン・ハントの息子として生まれました。彼の名前は、デトロイトの2代目市長であった叔父のヘンリー・ジャクソン・ハントから受け継ぎました。幼少期には、父と共にカンザス準州への遠征に参加し、レブンワース砦の建設にも関わっています。1839年に陸軍士官学校を卒業後、第2アメリカ砲兵隊の名誉少尉に任官されました。米墨戦争では、ウィンフィールド・スコット将軍の下で従軍し、コントレラスやチュルブスコの戦いでの勇敢さによって、大尉および少佐に名誉昇進しました。また、1857年のモルモン教徒に対するユタ戦争にも参加しています。その後、1852年に正規軍の大尉、1861年には少佐へと昇進しています。

砲兵の原理

ハントは砲兵戦術において卓越した知識と技術を持っていました。1856年には、軍隊の野戦砲兵教練と戦術を改訂する委員会の一員となり、「野戦砲兵のための説明書」を執筆しました。このマニュアルは1861年に陸軍省から出版され、南北戦争中、北軍砲兵の「バイブル」となりました。彼は、歩兵旅団を砲兵大隊で密接に支援する組織原理を提唱し、これにより、以前は師団や軍団に所属していた砲兵大隊が、より戦略的な運用のために軍隊レベルの砲兵予備隊として組織されるようになりました。

ハントは、砲兵の集中した火力で歩兵による攻撃を撃退できることを認識しつつも、砲手たちには慎重な砲撃を推奨しました。彼は、発射速度を上げると目標に対する精度が低下し、弾薬の補給が追いつかなくなることを懸念し、1分間に1発以上の発射を行った砲手を非難しました。ハントは、砲撃速度の速さは、砲手たちの勇気不足から来るものであり、戦場に留まることを恐れて補給を求めるためだと考えていました。

南北戦争での活躍

1861年の第一次ブルランの戦いにおいて、ハントは4門の大隊を率いて、北軍の撤退を援護しました。その後、ワシントンD.C.を守備する北東バージニア方面軍の砲兵隊長に任命されました。ジョージ・マクレラン少将の参謀大佐として、ポトマック軍予備砲兵隊を編成・訓練し、半島方面作戦に参加しました。ハントは、マルバーンヒルの戦いで340門もの大砲を使い、南軍の歩兵攻撃を撃退し、北軍の勝利に大きく貢献しました。ハントは、60門の大砲を単一の大隊のように指揮し、その効果を最大限に引き出しました。

1862年9月15日、志願兵の准将に昇進したハントは、マクレランによってポトマック軍砲兵隊長に任命され、アンティータムの戦いでは砲兵予備隊を効果的に運用しました。12月のフレデリックスバーグの戦いでは、スタフォード高地に設置されたハントの砲兵隊が、南軍がラッパハノック川を越えて北軍に反撃する可能性を阻止しました。

1863年5月のチャンセラーズヴィルの戦いでは、ジョセフ・フッカー少将によって砲兵予備隊の指揮を外され、実質的に管理職に転任させられました。この決定は、北軍の敗北の一因になったとされています。その後、フッカーはハントを元の地位に戻しましたが、時すでに遅しでした。

ハントの最も有名な功績は、1863年7月のゲティスバーグの戦いでの活躍です。ポトマック軍の新しい指揮官であるジョージ・ミードはハントを高く評価し、砲兵隊の指揮だけでなく、個人的な代理としても活用しました。7月2日には、ハントは第3軍団の指揮官であるダニエル・シックルズの防御線を修正しようとしましたが、これは失敗しました。しかし、ハントの地形分析と砲兵配置は、2日目の北軍の勝利に貢献しました。7月3日のピケットの突撃では、ハントの砲兵運用が際立ちました。彼は、指揮官の圧力に屈せず、弾薬を温存し、南軍の突撃に対して効果的な対人砲火を浴びせました。ハントの命令で、リトルラウンドトップ北に配置された砲兵隊は、南軍の攻撃に大きな損害を与え、その功績から、ハントは正規軍の大佐に名誉昇進しました。ハントは、ゲティスバーグの戦いにおける砲兵の役割について詳細な報告書を遺しています。

南北戦争の終結まで、ハントはバージニア州で従軍し、1864年から1865年にかけてピーターズバーグ包囲戦の包囲作戦を管理しました。ハントは、志願兵の名誉少将と正規軍の名誉准将に昇進しました。

戦後

1866年のアメリカ陸軍再編後、ハントは第5アメリカ砲兵隊の大佐となり、砲兵局長に就任しました。1883年まで様々な指揮官職を歴任し、その後ワシントンD.C.の軍人養老院の統治者となりました。1889年に死去し、軍人養老院国立墓地に埋葬されました。

ハントは、「野戦砲兵のための説明書」の他に、ゲティスバーグに関する著書を執筆しました。ハントの弟であるルイス・カス・ハントも、南北戦争で歩兵隊として従軍し、志願兵の准将、そして正規軍の名誉准将に昇進しています。

大衆文化の中で

ハントは、ニュート・ギングリッチとウィリアム・フォースチェン共著の歴史小説『ゲティスバーグ』で、重要な人物として描かれています。

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