ボストーク (列車)

ボストーク号について

ボストーク号（ロシア語: Восток、英: Vostok）は、ロシア連邦の首都モスクワと中国の首都北京を結ぶ優雅な旅の手段として知られています。1954年1月31日に運行が開始されたこの列車は、特にその長大な距離と国際的な役割から、旅客列車の中でも特筆すべき存在です。

運行概要

ボストーク号はモスクワのヤロスラフスキー駅を出発し、ザバイカリエ地方のタルスカヤ駅でシベリア鉄道本線から分岐します。そこから、ザバイカリスク駅と満洲里駅間で中露国境を通過します。中国に入ると、浜洲線や京哈線、哈大線、瀋山線などの幹線を経由し、最終的には北京駅に到達します。

この路線の総走行距離は8,985kmにも及び、旅客列車ではウラジオストクとハリコフを結ぶ列車に次いで世界で3番目の長さを誇ります。所要時間は、北京発モスクワ行きが145時間13分（約6日）、モスクワ発北京行きが142時間51分（約5日と22時間）です。

歴史的背景

1949年、北平駅と瀋陽南駅を結ぶ旅客列車が最初に運行され、その後、運行範囲が満洲里駅に拡大しました。1950年には中ソ間で鉄道連絡運輸に関する協議が行われ、1951年からは正式に貨物列車が直通運転を開始しました。しかし、旅客に関してはまだ乗り換えが必要でした。

1953年には、モスクワから北京の直通列車の運転についての会談が行われ、1954年には公式にボストーク号が運行を開始。これにより、世界最長距離の国際列車として歴史に名を刻みました。その後も、運行頻度や車両の編成、使用される車両に変更が加えられ、特に冷戦時代には中ソ間の政治情勢に影響を受けることもありました。

車両と設備

ボストーク号の車両は、2008年にロシア鉄道によって新型車両に更新されました。高級軟臥車では、2人用個室が設けられ、全体で18人を収容可能です。また、4人用個室の硬臥車も用意され、36人を収容できます。新型客車にはセキュリティカメラや電話、火災警報器、障碍者用トイレなどの設備が整っています。

編成は、モスクワからザバイカリスク間で17両編成で運行され、食堂車や荷物車も含まれています。ザバイカリスクでは食堂車と一部の車両が切り離され、中国に入る際には満洲里駅で新たな車両が連結されます。これにより、国内運行の影響を考慮した柔軟な運行が実現されています。

トラブルと安全

ボストーク号はその歴史の中でトラブルも経験しています。例えば、2003年には乗客に対する強盗事件が発生しましたが、結果として犯人は逮捕され、厳しい裁判を受けました。このような事件は、国際的な旅における安全の重要性を再認識させるものでした。

現在の運行状況

現在のボストーク号は、中国国内ではK19/20次列車として運行されており、運行管理は中国鉄道部が行っています。モスクワ発または北京発の際には、長時間の旅を快適に過ごせるよう、設備やサービスの向上が進められています。

長年にわたる国際的な運行を通じて、ボストーク号は単なる交通手段を超え、文化交流と国境を越えた友情のシンボルともなっています。

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