マイケル・グリーン (政治学者)

マイケル・ジョナサン・グリーン

プロフィール

マイケル・ジョナサン・グリーン（Michael Jonathan Green）は、1961年生まれのアメリカ合衆国の政治学者です。東アジアの政治外交、特に日本の安全保障政策を専門としています。

現在は、ジョージタウン大学外交政策学部教授、上智大学特任教授、戦略国際問題研究所（CSIS）副理事長という要職を兼務しています。また、ジャパン・ハンドラーと呼ばれる知日派のアメリカ人学者として、日本のメディアにも頻繁に登場しています。

経歴

1983年：ケニオン大学史学専攻卒業
1987年：ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院（SAIS）修士課程修了
1994年：同博士課程修了、Ph.D。
1994年 - 1995年：ジョンズ・ホプキンス大学助教授
1995年 - 1997年：防衛分析研究所（IDA）研究員、ジョンズ・ホプキンス大学客員講師（-2001年）
1997年 - 2000年：アメリカ国防総省アジア・太平洋部局特別補佐官、外交問題評議会（CFR）上席研究員（アジア安全保障担当）
2001年 - 2004年：アメリカ国家安全保障会議（NSC）日本・朝鮮担当部長
2004年 - 2005年：NSC上級アジア部長兼東アジア担当大統領特別補佐官
2005年：ジョージタウン大学外交政策学部准教授、戦略国際問題研究所（CSIS）上級顧問・日本部長
2012年：CSIS上級副所長
2014年：CSIS副理事長

人物像

1980年代、日本経済の研究が盛んな中、グリーンは当初から日本の安全保障政策を主要な研究テーマとしていました。日本での滞在経験も豊富で、日本語にも堪能です。

1983年には文部省のJETプログラムで英語教師として来日し、その後も大学院在学中にフルブライト奨学生として東京大学に留学しました。また、岩手日報の記者や椎名素夫の秘書を務めた経験もあります。

政治的立場と活動

冷戦終結後、グリーンは一貫して日米の安全保障関係強化を主張しています。クリントン政権時代には、日本の安全保障政策に詳しい若手研究者として、エズラ・ヴォーゲルやジョセフ・ナイらのブレーントラストとして活動しました。この時期に「日米安全保障再定義」や「日米新ガイドライン策定」といった日米同盟強化の動きを支えました。

また、リチャード・アーミテージらがまとめた日米同盟強化に関する政策提言「アーミテージ＝ナイ・レポート」にも執筆者として参加しています。

ブッシュ政権では、NSCの日本・朝鮮担当部長やアジア上級部長を歴任し、アーミテージ国務副長官、ジェイムズ・ケリー国務次官補と共に「知日派」と称されました。特に安倍晋三とは親交が深く、ブッシュ政権時代には頻繁に連絡を取り、日米両政府のパイプ役を務めました。

歴史認識問題については、日本の穏健な対応を望む立場であり、米議会での慰安婦決議に対する日本の保守派政治家の反応を批判しています。

安倍政権が目指す政策（河野談話の見直し、首相の靖国神社参拝、尖閣諸島への公務員常駐施設の設置など）についても、日米関係や日本の対外関係に悪影響を及ぼす可能性があるとして懸念を表明しています。特に河野談話の見直しについては、日韓関係やアメリカの戦略的立場を悪化させ、中国を利する可能性があると指摘しています。

尖閣諸島への公務員常駐については、日本が連携すべきアメリカや周辺国との関係を複雑にするとして、慎重な対応を求めています。

日韓関係については、日本が国会で過去の過ちに対する反省を表明することが重要だと述べています。また、日韓関係の悪化はアメリカの利益を損なうため、ワシントンでは日韓両国に圧力をかける方法が議論されていると述べています。

2019年12月にはBS日テレの番組に出演し、東アジアの安全保障について議論しました。

著作

グリーンは多数の著作を発表しており、日米関係や東アジアの安全保障に関する重要な研究成果を世に送り出しています。

単著

Arming Japan: Defense Production, Alliance Politics, and the Postwar Search for Autonomy (Columbia University Press, 1995)
Japan's Reluctant Realism: Foreign Policy Challenges in an Era of Uncertain Power (Palgrave, 2001)
By More than Providence: Grand Strategy and American Power in the Asia Pacific since 1783 (Columbia University Press, 2017)（邦訳：『アメリカのアジア戦略史　建国期から21世紀まで』）
Line of Advantage: Japan’s Grand Strategy in the Era of Abe (Columbia University Press, 2022)（邦訳：『安倍晋三と日本の大戦略──21世紀の「利益線」構想』）

共編著

The U.S.-Japan Alliance: Past, Present, and Future (Council on Foreign Relations Press, 1999)（邦訳：『日米同盟――米国の戦略』）

日本語で読むことが可能な文献（抜粋）

「転換期の日米同盟関係」『外交時報』1994年11・12月合併号
「日本はどう進むべきか（共著）」『諸君!』1995年7月号
「米、日、韓三か国の安全保障協力――その取り組みと重要課題ならびに展望」『Humnan Security』2号（1997年）
「日米同盟とこれから東アジアの安全保障」細谷千博・信田智人編『新時代の日米関係――パートナーシップを再定義する』（有斐閣, 1998年）
「日米同盟の再確認および再定義」宮里政玄編『アジア・太平洋における国際協力――日本の役割』（三嶺書房, 1998年）
「新ガイドライン法整備――やっと一歩を踏み出した（共著）」『This is 読売』1998年3月号
「日本がとるべき現実的安全保障政策とは」『論争東洋経済』2000年3月号
「能動的な協力関係の構築に向けて――冷戦後の同盟漂流に対する80年代の教訓」入江昭、ロバート・A・ワンプラー編『日米戦後関係史(パートナーシップ)1951‐2001』（講談社インターナショナル, 2001年）
「冷戦後の日米同盟――不確実な世界の現状維持国家関係（共著）」船橋洋一編『同盟の比較研究――冷戦後秩序を求めて』（日本評論社, 2001年）
「力のバランス――安全保障」スティーヴン・K・ヴォーゲル編（読売新聞社調査研究本部訳）『対立か協調か――新しい日米パートナーシップを求めて』（中央公論新社, 2002年）
「生物・化学・大量破壊兵器テロにどう対処するか――アメリカが同盟国日本に望むこと」『中央公論』2001年11月号
「国連安保理の議席は日本の国益にとって如何に重要か？」『国際安全保障』34巻2号（2006年）
「復活した日本と現実主義外交の伝統」『論座』2007年4月号

脚注

参考文献

船橋洋一『同盟漂流』（岩波書店, 1997年）
古森義久『透視される日本――アメリカ新世代の日本研究』（文藝春秋, 1999年）

外部リンク

ホワイトハウスによる紹介
戦略国際問題研究所（CSIS）による紹介
Redefining the U.S.-Japan Alliance: Tokyo's National Defense Program(1994・PDFファイル)（国防大学国家戦略研究所（NDU-INSS）から1994年にパトリック・クローニンと共著で発表された論文）

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