知日派

知日派とは

「知日派」とは、日本の社会、文化、歴史などに対して深い理解を示す外国人を指す言葉です。単に日本を好む「親日家」とは異なり、日本に対する深い知識や理解に基づいた言動を行う人物を指します。このため、必ずしも日本に好意的な立場を取る人ばかりではなく、対日強硬派であっても、日本の事情を深く理解している人物は「知日派」と呼ばれることがあります。

特に国際政治の分野では、日本政府の手法や政策を熟知した政治家、官僚、外交官などが知日派と呼ばれることが多いです。これらの人々は、日本との交渉において、日本の立場や文化を理解した上で、自国の利益を追求する役割を担います。

知日派と親日

「知日派」と「親日家」はしばしば混同されますが、両者は異なる概念です。親日家は、日本の文化や社会を愛好し、好意的な感情を抱いている人々を指します。一方、知日派は、日本に対する深い理解を持ち、必ずしも好意的な感情を抱いているとは限りません。例えば、日本の政治や外交政策に批判的な立場を取る知日派も存在します。

また、中国や韓国など、過去の歴史において日本との間に複雑な関係を持つ国々では、「知日派」という言葉はより複雑な意味合いを持つことがあります。特に韓国では、「親日派（チニルパ）」という言葉が売国奴と同義に捉えられるため、「知日派」という言葉が用いられることが多いです。

各界の知日派

以下に、各分野で知られる著名な知日派を紹介します。

欧州

ジャック・シラク (フランス): フランス第五共和政の第5代大統領。大の日本贔屓で、相撲を愛好し、愛犬に「スモウ」と名付けるほどでした。土偶と埴輪の相違点について専門家並の説明ができるほど、日本の文化に精通していました。
アンドレ・マルロー (フランス): フランスの作家、政治家。
エドモン・ド・ゴンクール (フランス): フランスの研究家で、日本美術の研究家。フランスの芥川賞に相当するゴンクール賞を創設。
クロード・レヴィ=ストロース (フランス): フランスの社会人類学者。日本の工芸品や美術品を愛好し、日本文化を独自性を持つ「日本文明」と位置づけた。
フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト (ドイツ): ドイツの医師、博物学者。長崎に私塾・鳴滝塾を開いた。
ブルーノ・タウト (ドイツ): ドイツの建築家。
ジェレミー・ハント (イギリス): イギリスの政治家。日本で英語教師を務めた経験があり、日本語に堪能。
シャルル・デュトワ (スイス): スイスの指揮者。
ツルネン・マルテイ (フィンランド): 日本に帰化したフィンランド人。元参議院議員。
ドラガン・ストイコビッチ (セルビア): 元サッカー選手。元名古屋グランパスエイト監督。

北米

エドウィン・O・ライシャワー (アメリカ): アメリカの東洋史研究における第一人者。元駐日大使。
カート・キャンベル (アメリカ): アメリカの外交官。クリントン政権、オバマ政権で対日問題を扱った。
ジョセフ・グルー (アメリカ): アメリカの外交官。1932年から1941年（日米開戦時）の駐日大使。終戦の際、国務次官として日本本土決戦回避、天皇制維持に尽力。知日派外交官のゴッドファーザー的存在。
ジョセフ・ナイ (アメリカ): アメリカの国際政治学者・政治家。アーミテージと共に「アーミテージ・レポート」を作成。
ポール・ラッシュ (アメリカ): 立教大学教授。日米開戦後も日本残留を希望したが、強制送還された。終戦後にGHQの一員として再来日し、日本占領政策に携わった。
マイケル・グリーン (アメリカ): アメリカの政治学者、外交官。日米同盟関係に精通した研究者兼実務家。
ケビン・メア (アメリカ): アメリカの弁護士、外交官。歯に衣着せぬ発言がたびたび問題視された。
マルコ・ルビオ (アメリカ): アメリカの政治家。東アジアの安全保障政策に精通。

南米

ドゥンガ (ブラジル): 元サッカー選手。現サッカーブラジル代表監督。Jリーグでプレー経験がある。

アジア・ユーラシア

朴正煕 (韓国): 韓国の軍人・政治家、第5〜9代大韓民国大統領として軍事独裁政権を主導。日本の陸軍士官学校を卒業し、満州国軍人になった経歴がある。大統領としては、日韓基本条約を結び、日本との国交を回復。韓国が「日本に学び、強国になる」ことを目指した。プライベートでは日本統治時代を評価するなど、韓国の要人としては異例な発言も伝わる。一方で反日的な愛国教育を推進するなどもしており、自身が在日韓国人に襲撃され陸英修夫人が殺害された際（文世光事件）には「日本は赤化工作の基地となっている」と怒りを露わにした。
金大中 (韓国): 韓国の政治家、第15代韓国大統領。日本との関係が深く、大統領としては日本文化の自由化を進めた。
金玉均 (韓国): 朴鉄柱、池明観、金鍾泌、全斗煥、呉善花、崔基鎬、宣銅烈、白眞勲など、韓国には多くの知日派が存在する。これらの人々は、日本との歴史的な関係や文化的な交流を理解し、日韓関係の改善に貢献している。
蔣介石 (中華民国): 日本の陸軍士官学校出身。連合国軍首脳随一の知日派として知られた。戦後は「徳を以って恨みに報ず」という声明を出し、日本における親華派・親台派の形成に寄与した。
李登輝 (中華民国): 日本統治時代に教育を受けた世代の代表格。自らを「半日本人」と言ってはばからず、日本の植民地政策を評価した。
謝長廷 (中華民国): 李登輝と同じく京都大学への留学歴があり、対日関係を重視している。
周恩来 (中国大陸): 明治大学に留学した。日中国交正常化の際、田中角栄らをもてなし、後の日本の政界に影響力を持つ親中派を作り上げることに一役買った。
胡耀邦 (中国大陸): 改革開放の一環として日本との関係を深めることに腐心した。
趙紫陽 (中国大陸): 胡耀邦の後継者として日本では親日家のイメージがあり、日本への友好的な態度が失脚の一因と考えられている。
鄧小平 (中国大陸): 1978年の日中平和友好条約締結時に来日し工業地帯等を視察した際に日本の技術水準、生活水準の高さに驚愕し「日本は世界史上で最も成功した社会主義国だ」と述べ、その事が後の改革開放路線に繋がったと言われる。ただし実権を握っていた後期は侵華日軍南京大屠殺遭難同胞紀念館をオープンさせるなど次第に反日路線にシフトし自らの後継者にも対日強硬派の江沢民を指名した。
胡啓立, 曽慶紅, 李克強, 唐家璇, 王毅, 武大偉, 程永華, 劉洪才, 孫平化, 王暁雲, 蕭向前, 張香山, 郭沫若, 孫文, 康有為, 愛新覚羅善耆, 愛新覚羅溥傑, 愛新覚羅憲奎（金壁東）, 愛新覚羅顯㺭（川島芳子）, 梁啓超, 宋教仁, 羅振玉, 殷汝耕, 汪兆銘, 石平 (評論家)（帰化）: これらの人々は、中国と日本の関係において、様々な役割を果たした。
ミハイル・ゴルバチョフ (ロシア): 旧ソ連元大統領。ソ連崩壊後も度々日本を訪れている。
スタニスラフ・ブーニン (ロシア): 世界的に著名なピアニスト。
イーゴリ・コワリ (ロシア): サハリン州南クリール行政区 前区長。
グリゴリー・セミョーノフ (ロシア): ロシア内戦時の白軍首脳の一人。

日本側の動き

日本では、知日派との交流を通じて国益に繋げようとする動きも見られます。例えば、2015年には安倍晋三首相がアメリカの大学に日本の政治・外交の研究を支援する意向を示しました。また、日本政府は「知日派・親日派リスト」を作成し、省庁間で共有していることも明らかになっています。

これらの動きは、国際社会における日本の影響力を高め、より良い関係を築くための重要な取り組みと言えるでしょう。

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