マゼランペンギン

マゼランペンギン (Spheniscus magellanicus)

マゼランペンギンは、ペンギン目ペンギン科ケープペンギン属に分類される鳥類で、別名パタゴニアペンギンとも呼ばれます。南アメリカ大陸の沿岸地域に生息し、独特の生態と繁殖行動を持っています。

分布

マゼランペンギンは、南アメリカ大陸の太平洋岸（南緯42度からホーン岬まで）と大西洋岸（南緯29度からフエゴ島まで）、そしてフォークランド諸島で繁殖します。まれに、オーストラリア、ニュージーランド、南極半島などでも発見されることがあります。

形態

全長は65〜72センチメートルで、虹彩は褐色です。嘴は黒く、先端は黄白色をしています。胸には2本の黒い帯があり、後肢は黒色で、白やピンク色の斑紋が見られる個体もいます。繁殖期になると、目の周囲から嘴にかけてピンク色の皮膚が露出します。

分類

マゼランペンギンは、野生下でフンボルトペンギン、飼育下でケープペンギンと種間雑種を形成することが確認されており、これらの種を同種とする説も存在します。

生態

野生での平均寿命は約10年で、長寿の個体は15〜20年生きることがあります。飼育下では最長35年まで生存した記録があります。群れで行動し、主に小魚を捕食しますが、イカやオキアミも食べます。コロニーの場所によって食べるものが異なり、スプラットイワシやメルルーサ、カタクチイワシ、小型のタラなどを好む傾向があります。魚類が不足している場合は、コウイカやヤリイカ、オキアミを食べることもあります。大量の海水を飲み込むため、塩類腺を持ち、余分な塩分を排出することができます。

コロニーの規模が大きいほど、餌を求めて遠くまで移動する傾向があります。通常はコロニーから16〜40kmの範囲で採餌を行いますが、餌が少ない場合には305kmも移動することがあります。潜水時間は平均120秒で、最長で180秒程度です。潜水深度は45m以内が一般的で、最深では97mまで潜水した記録があります。

4月頃にパタゴニアやフォークランド諸島の海岸で繁殖し、その後、ペルーやブラジルの中部沿岸まで北上します。9月頃になると、元の繁殖地に戻り、前年に使用した巣を利用します。往復で6400km以上も移動することがありますが、正確に同じ場所に戻ることができます。

繁殖期には攻撃的な行動が見られ、オス同士が縄張りを巡って争います。鳴き声で威嚇し、それでも相手が立ち去らない場合は、くちばしを組み合わせて争います。メス同士がオスを巡って争うこともあります。傷ついた個体は、オオミズナギドリやトウゾクカモメなどの捕食者によって命を落とすこともあります。

繁殖行動

繁殖期は9月にオスが繁殖地に到着することから始まります。メスは数日遅れて到着し、ほぼ同じパートナーと再会します。求愛行動の後、2日ほど間隔をあけて2個の卵を産みます。コロニー内では繁殖の同調性が高く、2週間以内にほとんどの卵が産み落とされます。通常、2個の卵のうち1羽しか生き残ることはありません。オスは巣の確保から産卵まで絶食するため、最初の21日間はメスが抱卵を担当します。

繁殖地の地理的な位置によって繁殖期間が異なり、地域、季節、年によって巣立ちの成功率も変動します。大規模なコロニーでは、ヒナが巣立つまでに120日ほどかかることもありますが、チリのコロニーでは60〜70日齢で巣立つこともあります。

人間との関係

2020年の時点では、マゼランペンギンの生息数は安定しているか、減少傾向にあるとされています。油汚染、石油採掘、漁業による混獲、卵を含めた食用の狩猟や採取、人為的に移入されたネズミやイヌによる捕食、気候変動などが懸念されています。また、漁業との競合や、アザラシ類による捕食も影響しています。1991年には石油流出事故が発生し、15,000羽以上のマゼランペンギンが死亡したとされています。

マゼランペンギンは、人間活動による様々な脅威にさらされており、保護対策が求められています。

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