マルコ・ポーロ賞

マルコ・ポーロ賞とは

マルコ・ポーロ賞は、イタリア文化の理解と普及に貢献した優れた著作を表彰する目的で、1977年（昭和52年）に創設されました。この賞は、イタリアに関する様々な分野の著作を対象とし、学識経験者による厳正な選考を経て、イタリア文化会館で授与されていました。

この賞は、単にイタリアに関する著作を表彰するだけでなく、日本とイタリアの文化交流を促進する重要な役割を担っていました。受賞作品は、学術研究、ジャーナリズム、翻訳など多岐にわたり、それぞれの分野でイタリア文化への深い洞察や新たな視点を提供していました。

マルコ・ポーロ賞は、2007年（平成19年）にその役割を終え、フォスコ・マライーニ賞に引き継がれましたが、その功績は今もなお、イタリア文化研究における重要な礎となっています。また、翻訳作品については、ピーコ・デッラ・ミランドラ賞から中断を経て、須賀敦子翻訳賞へとその流れが引き継がれています。

受賞作品一覧

マルコ・ポーロ賞は、以下の通り、各回で様々な分野の優れた作品を表彰してきました。

第1回（1978年）- 第5回（1982年）

第1回
千種堅：『ダンテの末裔たち』（三省堂、1977年）
第2回
宮澤智士『イタリア中部の一山岳集落における民家調査報告』（奈良国立文化財研究所、1978年）
第3回
イタリア文化奨励部門
芦原義信『街並みの美学』（岩波書店、1979年）
イタリア・ジャーナリズム部門
坂本鉄男『イタリア通信』(サンケイ新聞掲載連載、1979年）
イタリア語部門
谷一郎、小野健一、斎藤泰弘訳：レオナルド・ダ・ヴィンチ『鳥の飛翔に関する手稿』（岩波書店、1979年）
第4回
イタリア文化奨励部門
霜田美樹雄『キリスト教は如何にしてローマに広まったか』（早稲田大学出版部、1980年）
イタリア・ジャーナリズム部門
藤川鉄馬『イタリア経済の奇跡と危機』（産業能率大学出版部、1980年）
第5回
田之倉稔『イタリアのアヴァン・ギャルド、未来派からピランデルロへ』（白水社、1981年）

第6回（1983年）- 第11回（1988年）

第6回
平田隆一：『エトルスキ国制の研究』（南窓社、1982年）
第7回
『小学館 伊和中辞典』：同編纂グループ（小学館、1983年）
第8回
近藤恒一：『ペトラルカ研究』（創文社、1984年）
第9回
松嶋敦茂：『経済から社会へ パレートの生涯と思想』（みすず書房、1985年）
第10回
桐敷真次郎：『パラーディオ｢建築四書｣注解』（中央公論美術出版、1986年）
第11回
藤澤房俊：『赤シャツの英雄ガリバルディ - 伝説から神話への変容 -』（洋泉社、1987年）

第12回（1989年）- 第18回（1995年）

第12回
石鍋真澄：『聖母の都市 シエナ 中世イタリアの都市国家と美術』（吉川弘文館、1988年）
第13回
佐々木英也：『ジョットの芸術　スクロヴェーニ礼拝堂壁画を中心として』（中央公論美術出版、1989年）
第14回
青柳正規：『古代都市ローマ』（中央公論美術出版、1990年）
第15回
監修・スタッフ他：『NHK 　フィレンツェ・ルネサンス』（全6巻）（日本放送出版協会、1991年）
第16回
小佐野重利：『記憶の中の古代 ルネサンス美術にみられる古代の受容』（中央公論美術出版、1992年）
第17回
高山博：『中世地中海世界とシチリア王国』（東京大学出版会、1993年）
第18回
永井三明：『ヴェネツィア貴族の世界 社会と意識』（刀水書房、1994年）

※1996年度はなし

第19回（1997年）- 第25回（2003年）

第19回
辻茂：『遠近法の誕生』（朝日新聞社、1995年）、『遠近法の発見』（現代企画室、1996年）
第20回
根占献一：『ロレンツォ・デ・メディチ ルネサンス期フィレンツェ社会における個人の形成』（南窓社、1997年）
第21回
末吉孝州：『グイッチァルディーニの生涯と時代 − グイッチァルディーニ研究序説』（上・下）（太陽出版、1997 - 98年）
第22回
石井元章：『ヴェネツィアと日本　美術をめぐる交流』（ブリュッケ、1999年）
徐京植：『プリーモ・レーヴィへの旅』（朝日新聞社、1999年）
第23回
高橋友子：『捨児たちのルネッサンス　15世紀イタリアの捨児養育院と都市・農村』（名古屋大学出版会、2000年）
第24回
佐藤眞典：『中世イタリア都市国家成立史研究』（ミネルヴァ書房、2001年）
第25回
今道友信：『ダンテ「神曲」講義』（みすず書房、2002年）

第26回（2005年）-第28回（2007年）

第26回（2004年）
学術部門
京谷啓徳 ：『ボルソ・デステとスキファノイア壁画』 （中央公論美術出版、2004年）
ジャーナリスト部門
小林元：『イタリアのビジネスモデルに学ぶもの』（繊維ビジネス、2004年）
新版『イタリア式ブランドビジネスの育て方』（日経BP社　2007年）
第27回（2005年）
学術部門
水谷彰良：『サリエーリ　モーツァルトに消された宮廷楽長』（音楽之友社、2004年）
ジャーナリスト部門
竹山博英：『ローマの泉の物語』 （集英社新書、2004年）
第28回（2006年）
ファビオ・ランベッリ：『イタリア的「南」の魅力』（講談社選書メチエ、2005年）
* イタリア人（著者は当時札幌大学教授）では初の受賞者。

マルコ・ポーロ賞の意義

マルコ・ポーロ賞は、イタリア文化研究において、その分野の発展に貢献した重要な賞です。この賞を通じて、イタリアの歴史、芸術、文学、社会、経済など多岐にわたる分野の研究が奨励され、日本におけるイタリア文化への関心を深めることに大きく貢献しました。また、多くの研究者や作家にとって、この賞は研究の成果を社会に広く認知される機会となり、その後の活動を大きく後押しするものでした。

マルコ・ポーロ賞がフォスコ・マライーニ賞に引き継がれた後も、その精神は受け継がれ、イタリア文化の研究と普及はさらに発展を続けています。

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