ムアンナコーンシータンマラート郡

ナコーンシータンマラート郡は、タイ南部、ナコーンシータンマラート県に位置する郡（アンプー）であり、同県の県庁所在地（ムアン）でもあります。この地域は、古代から重要な歴史と文化を持つ場所として知られています。

名称

「ナコーンシータンマラート」という名称は、「ダルマラージャの治める都」を意味します。地元住民からは「ナコーン」という愛称で親しまれています。かつてはマレー語で「リゴール」とも呼ばれており、この名称が日本語の「六昆」という言葉の語源になったと考えられています。

歴史

ナコーンシータンマラートの歴史は古く、3世紀頃にはインドからの入植が見られ、タンブラリンガ王国（単馬令国）の首都リゴールとして栄えました。9世紀から11世紀にかけてはドヴァーラヴァティ王国の影響下に入り、大乗仏教が信仰されました。12世紀頃にはシータンマソッカラート王によってナコーンシータンマラート王国（タンブラリンガ国）が成立し、上座部仏教を国教としました。この王国は一時的にマレー半島全域に勢力を拡大するほどの繁栄を見せました。

13世紀にはスコータイ王国のラームカムヘーン王の支配下に入りました。当時、ナコーンシータンマラートは上座部仏教の中心地として発展しており、一時期は12,000人もの僧侶がいたと伝えられています。そのため、当時は「ムアンプラ（僧侶の街）」とも呼ばれ、スコータイ王国からも僧侶の派遣を求められるほどでした。仏教教育の中心を担ったのはワット・プラマハータートという寺院で、地元の王統史によれば311年の創建とされていますが、歴史学者は13世紀頃の建立と推定しています。

アユタヤ王朝時代には、ナコーンシータンマラートはマレー半島との貿易で繁栄しましたが、同時にパタニ王国などの離反するマレー系諸王朝に対する防衛都市としての役割も担いました。山田長政が左遷された地としても知られ、この地でパタニ軍と交戦し、命を落としました。その後、ラーマ5世（チュラーロンコーン）のチャクリー改革を経て、周辺地域と共に県（チャンワット）を形成し、県庁所在地となりました。

地理

ナコーンシータンマラート郡は、県西部の山岳地帯を源流とする多くの河川によって形成された平地に位置しています。地形的には西部が山岳地帯、東部が海に面しています。

主要な道路としては、国道403号線が国道41号線とトランを結んでおり、国道401号線は北へスラートターニーと、国道408号線は南へソンクラーと繋がっています。鉄道では、タイ国有鉄道南本線ナコーンシータンマラート支線の終点であるナコーンシータンマラート駅があり、空の便としてはナコーンシータンマラート空港があります。

経済

ナコーンシータンマラート郡の主な産業は農業と商業です。農業においては、米の生産が盛んです。

行政区分

ナコーンシータンマラート市は16のタムボン（地区）に分かれており、さらにその下に114の村があります。市内には以下の4つの自治体（テーサバーン）が存在します。

テーサバーンナコーン・ナコーンシータンマラート：タムボン・ナイムアン、ターワン、クランの全域と、タムボン・ナーキエン、タムボン・ポーサデットの一部
テーサバーンタムボン・バーンチャーク：タムボン・バーンチャークの一部
テーサバーンタムボン・ターペー：タムボン・パークプーンの一部
テーサバーンタムボン・パークナコーン：タムボン・ターライ、タムボン・パークナコーンの一部

また、郡内には13のタムボン行政体が設置されています。以下は、市内タムボンのリストです。表で番号が欠けているタムボンは、1994年に分離してプラプロム郡となったものです。

この地域は、歴史的な背景から文化的にも多様性があり、仏教の寺院や遺跡が数多く残っています。また、交通の要所としての役割も担っており、タイ南部における重要な拠点となっています。

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