メイド・イン・ヘヴン (クイーンのアルバム)

クイーン『メイド・イン・ヘヴン』

1995年に発表されたクイーンのアルバム『メイド・イン・ヘヴン』は、フレディ・マーキュリーの死後にリリースされた作品です。このアルバムは、フレディが存命中に録音された未発表のボーカルやデモ音源を元に、残されたメンバー、ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコンが手を加えて完成させました。

アルバム制作の背景

フレディの死後、ブライアンとロジャーはそれぞれのソロ活動を経て、このアルバムの制作に取り掛かりました。1991年初頭にスイスのマウンテン・スタジオで録音された音源や、過去のアルバム制作時に採用されなかった楽曲をベースに、メンバーが新たに楽器をオーバーダビングし、編集作業を行いました。

サウンド面では、ブライアン・メイが主導権を握り、バラードやポップな楽曲を中心に構成されています。アルバム全体を通して、タイトルが示すように天国を連想させる透明感のある美しいサウンドが特徴です。また、紙ジャケット版は、朝焼けと夕焼けの2種類が存在します。

プロモーションビデオ

シングル「ヘヴン・フォー・エヴリワン」のプロモーションビデオは、映画『月面旅行』の映像を引用し、メンバーの映像を重ねて編集されています。また、「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」のプロモーションビデオは、フレディのソロ版ビデオに、1986年のウェンブリー・スタジアムでのライブ映像をコラージュしたものです。

収録曲と曲解説

アルバムには、以下の楽曲が収録されています。

イッツ・ア・ビューティフル・デイ
フレディのボーカルとピアノによるデモ音源を元に制作されました。アルバム再発時に収録されたデモトラックが元になっています。

メイド・イン・ヘヴン
フレディのソロアルバム『Mr.バッド・ガイ』収録曲を、メンバーが演奏し直したものです。

レット・ミー・リヴ
ロッド・スチュワートとのセッションで制作された曲で、クイーンのオリジナルアルバムでは唯一、3人がボーカルをリレーしています。

マザー・ラヴ
フレディが生前最後に録音したボーカルトラックと言われています。最終コーラスはブライアンが担当しています。

マイ・ライフ・ハズ・ビーン・セイヴド
アルバム『ザ・ミラクル』のセッションで録音された曲で、シングル「スキャンダル」のカップリング曲として発表されたものを、アルバム収録にあたりアレンジを変更したものです。

ボーン・トゥ・ラヴ・ユー
フレディのソロアルバム『Mr.バッド・ガイ』収録曲を、メンバーがオーバーダブしたものです。

ヘヴン・フォー・エヴリワン
ロジャーのソロプロジェクト、ザ・クロスのアルバム収録曲のボーカルをフレディが担当したものを、クイーンのメンバーが演奏し直したものです。

トゥー・マッチ・ラヴ・ウィル・キル・ユー
フレディ追悼コンサートで初披露された曲で、ブライアンのソロアルバムにも収録されました。このアルバムにはフレディのボーカルバージョンが収録されています。

ユー・ドント・フール・ミー
プロデューサーがフレディのボーカルを再構成し、メンバーが演奏とコーラスを追加した楽曲です。

ウインターズ・テイル
フレディが単独で作曲した最後の曲です。歌詞に「Kind of Magic」という単語が登場します。

イッツ・ア・ビューティフル・デイ（リプライズ）
1曲目のリプライズで、途中からハードロックに変化し、「輝ける7つの海」の一部も聴くことができます。

隠しトラック
12曲目と13曲目は、ジャケットに記載されていません。12曲目は「イッツ・ア・ビューティフル・デイ（リプライズ）」の最後のフレディの「Yeah」という声を分割したものです。13曲目は22分を超える長いトラックで、天国を表現したような美しい楽曲です。

アナログ盤について

1995年リリースの限定アナログ盤には13曲目は収録されていませんでしたが、フレディの「Yeah」の後に13曲目の冒頭部分がレコードの最後の溝まで収録されており、針を上げない限り聴き続けることができました。2015年にリリースされたアナログ盤は2枚組となり、D面に13曲目が収録され、タイトルは「13」と記載されています。

参加ミュージシャン

クイーンのメンバーに加え、外部ミュージシャンも参加しています。

フレディ・マーキュリー: リードボーカル、ピアノ、キーボード、シンセサイザー、ドラムマシン
ブライアン・メイ: エレクトリックギター、リードボーカル、コーラス、ピアノ、キーボード、オルガン
ロジャー・テイラー: ドラムス、パーカッション、リードボーカル、コーラス、キーボード
ジョン・ディーコン: エレクトリックベース、エレクトリックギター、キーボード

外部ミュージシャン

レベッカ・リー・ホワイト、ゲイリー・マーティン、キャサリン・ポーター、ミリアム・ストックリー: コーラス
デヴィッド・リチャーズ: キーボード、プログラミング
スパイク・エドニー: キーボード
エルダル・キジルケイ: ベース

各楽曲の使用例

イッツ・ア・ビューティフル・デイ
ホンダフィットのCMで使用されました。

ボーン・トゥ・ラヴ・ユー
ノエビア（フレディ版）、キリン「一番搾り」、アサヒ飲料「SUPER H2O」、アサヒ「スーパードライ」、日清食品「カップヌードル」、SUBARU「IMPREZA」のCM、テレビドラマ「プライド」の主題歌、その他、千葉ロッテマリーンズの波留敏夫選手、北海道日本ハムファイターズの稲葉篤紀選手の登場曲、プロボクサー田中恒成選手の入場曲など、多数のメディアで使用されています。

* トゥー・マッチ・ラヴ・ウィル・キル・ユー
テレビドラマ「スキャンダル」の主題歌（ブライアン版）に使用されました。

『メイド・イン・ヘヴン』は、フレディ・マーキュリーの遺した音楽遺産を、クイーンのメンバーが最大限に尊重し、新たな命を吹き込んだ感動的な作品です。クイーンファンのみならず、多くの音楽ファンに聴いてほしいアルバムです。

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