モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団

モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団（フランス語: Orchestre Philharmonique de Monte-Carlo）は、モナコ公国に本拠を置く、歴史あるオーケストラです。公国の文化的な顔として重要な役割を担っており、モンテカルロ歌劇場でのオペラ公演における演奏も、その主要な活動の一つとなっています。

設立と発展

楽団の起源は1856年に遡ります。設立当初は主にモンテカルロ歌劇場の専属団体として活動しており、「モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団」として知られていました。その後、1980年に名称が現在の「モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団」へと統一され、活動の幅が広がりました。この名称変更以降、楽団はモナコ王室からの篤い庇護を受けながら、組織としての規模を拡大し、演奏水準を高めていきました。創設から150年以上の長きにわたり、モナコの音楽芸術を牽引する存在として発展を続けています。

規模と主な活動場所

モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団は、総勢92名というフル編成の楽員を擁しています。これは、人口が比較的少ないモナコという都市国家においては、非常に大規模で充実した編成と言えます。

定期的なコンサート活動は、主に以下の三つの場所で行われています。F1グランプリのコース近くにあるオーディトリアム・レーニエ3世を主要なコンサート会場とするほか、歴史あるモンテカルロ歌劇場、そして近代的施設であるグリマルディ・フォーラムでも公演が行われます。さらに、毎年夏にはモナコ大公宮殿の美しい中庭を舞台に、開放的な雰囲気のオープンエアコンサートが開催されています。

国際的な名声と共演の歴史

楽団は、その長い歴史の中で、世界のクラシック音楽界を代表する数多くの名だたる音楽家たちと共演してきました。戦前には、作曲家リヒャルト・シュトラウス自身が自作を指揮するために楽団を訪れた記録があります。戦後も、アルトゥール・ルビンシュタイン、ウラディミール・ホロヴィッツ、ユーディ・メニューイン、アイザック・スターン、ジャン＝ピエール・ランパルといった世界的なソリストたちが楽団と共演を果たしました。指揮者陣も同様に豪華で、シャルル・ミュンシュ、トーマス・ビーチャム、レナード・バーンスタイン、キリル・コンドラシンなど、音楽史に名を残す著名な指揮者たちが客演指揮台に立っています。こうした華々しい共演の歴史は、楽団が常に国際的な舞台で活躍してきた証と言えるでしょう。

音楽監督の足跡

楽団の芸術水準向上には、歴代の音楽監督たちの貢献が不可欠です。特に、1967年から5年間を務めたイーゴリ・マルケヴィチは、楽団の演奏能力を大きく引き上げたと評価されています。その後を、1972年から1979年までロヴロ・フォン・マタチッチが引き継ぎ、楽団の基盤をさらに強固なものにしました。1990年以降も、ジャンルイジ・ジェルメッティ、ジェームズ・デプリースト、マレク・ヤノフスキ、ヤコフ・クライツベルクといった現代を代表する指揮者たちが音楽監督を務め、楽団に新たな表現力をもたらしました。そして、2016年9月からは、日本の指揮者である山田和樹が音楽監督兼芸術監督として、楽団を率いています。

主な録音

モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団は、これまでに多くの録音を制作しています。その中でも特に代表的なものとして、ファウスト・クレヴァ指揮によるカタラーニのオペラ『ワリー』全曲、ルイ・フレモー指揮によるベルリオーズの『幻想交響曲』、リチャード・ボニング指揮によるアダン作曲のバレエ音楽『ジゼル』全曲盤が挙げられます。また、ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮、スヴャトスラフ・リヒテル独奏によるシューマンとグリーグのピアノ協奏曲の録音も、楽団の演奏史において重要な位置を占めています。

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