ラインラント福音主義教会

ラインラント 福音主義教会：歴史、組織、信仰の詳細

ラインラント福音主義教会（Evangelische Kirche im Rheinland, EKIR）は、ドイツ福音主義教会（EKD）を構成する20の州教会の一つです。本部はデュッセルドルフにあり、約254万人の教会員を擁し、37の教会地区と687の教会共同体によって運営されています。ルター派と改革派の合同教会であり、福音合同教会（UEK）に加盟しています。

教会の管轄地域

ラインラント福音主義教会の管轄地域は、かつてのプロイセン王国ライン州に相当し、現在のノルトライン・ヴェストファーレン州、ラインラント・プファルツ州、ザールラント州、そしてヘッセン州の一部に広がっています。飛び地であるヴェッツラー郡も管轄下にあります。

各州における管轄地域は以下の通りです。

ノルトライン・ヴェストファーレン州: デュッセルドルフ行政管区（一部地域を除く）、ケルン行政管区全域、ミュンスター行政管区の一部、アルンスベルク行政管区の一部。
ラインラント・プファルツ州: コブレンツ行政管区とトリーア行政管区の旧地域。
ザールラント州: メルツィヒ＝ヴァーダーン郡、ノインキルヒェン郡、ザールルイ郡の全域、ザールブリュッケン都市連合全域（一部地域を除く）。
ヘッセン州: ラーン＝ディル郡とギーセン郡、ヴェッテラウ郡の一部地域。

歴史

宗教改革の開始

16世紀初頭の宗教改革以前、ラインラント地方は大小の諸侯の領有地が入り組んでおり、宗教的にも複雑な状況でした。マルティン・ルターの宗教改革思想は、ヨハン・フォン・ゴッホやヨハン・ヴェッセルといった先駆者たちによって準備され、人文主義者たちの活動を通して広まっていきました。フランツ・フォン・ジッキンゲンなどの領主も初期の宗教改革運動を支持しました。

アウクスブルクの和議（1555年）以降

1526年の第1回シュパイアー帝国議会でヴォルムス勅令が事実上保留されたことで、ヘッセン方伯領などを中心に宗教改革が導入されました。1555年のアウクスブルクの和議により、領主がその領地の宗教を決定する原則が確立され、ラインラント地方でも各領主の選択によってルター派や改革派の信仰が広まりました。プファルツ選帝侯フリードリヒ3世は改革派信仰を受け入れ、ミッテルライン地方に改革派信仰を導入しました。

ユーリヒ＝クレーフェ継承戦争後

ユーリヒ＝クレーフェ継承戦争後、1614年のクサンテン条約により、ユーリヒ＝ベルク公国はカトリックのプファルツ＝ノイブルク公が、クレーフェ公国などはブランデンブルク選帝侯が領有することになりました。三十年戦争やその後の戦争によってラインラント地方は荒廃し、オランダやフランスからの新教徒移民が流入しました。1655年にはブランデンブルク＝プロイセンによってデュースブルク大学が設立され、改革派の拠点となりました。

フランス第一共和政政府支配下

フランス革命後、ラインラント地方はフランスの支配下に置かれました。この時期に初めて、広い地域で福音主義教会共同体が合法的に設立されるようになりました。フランスに併合された地域では、改革派とルター派が合同教会としての自己理解を持っていました。

ウィーン会議以降

ウィーン会議後、ラインラント地方はプロイセン王国の領土となり、ユーリヒ＝クレーフェ＝ベルク州とニーダーライン州が設置されました。1817年にはプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世がルター派と改革派教会の合同を呼びかけ、多くの教会共同体で合同が歓迎されました。

領邦教会制度終焉後(第1次世界大戦後)の新組織

第一次世界大戦後、ドイツ帝国が終焉し、領主による教会支配が終わりました。プロイセンの領邦教会は古プロイセン合同福音教会（EKapU）と改称し、ヴァイマル憲法による政教分離原則のもとで再出発しました。1933年の教会選挙ではナチスに同調するドイツ的キリスト者が勝利し、教会組織を壟断しましたが、1934年にはバルメンで告白教会が結成され、抵抗運動が始まりました。

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後の1948年、ラインラント州教会は新教憲を制定し、ラインラント福音主義教会と改称しました。古プロイセン合同福音教会は教会連盟としての性格を強め、2003年には福音主義合同教会（UEK）を結成しました。

組織構造

ラインラント福音主義教会は、教会共同体、教会地区、州教会という3層構造を持っています。教会共同体は地域社会に根ざした基底組織であり、長老会が指導を担っています。複数の教会共同体が集まって教会地区を形成し、教会地区総会が意思決定を行います。教会地区が集まって州教会を形成し、州教会総会が教会の立法機関としての機能を有しています。

信仰告白

ラインラント福音主義教会は合同教会であり、ルター派、改革派、合同派の教会共同体によって構成されています。教会憲法前文では、使徒信条、ニカイア信条、アタナシオス信条を共通の信仰告白として規定し、バルメン宣言を福音宣教における信仰告白文書であると明記しています。また、イスラエルを神の民と見なし、共存を明確に定義していることが特筆されます。

州教会の運営指導

州教会は州教会総会から選出された常議員会によって指導されます。常議員会はプレゼス（議長）を最高責任者とし、15人の常議員で構成されます。プレゼスは州教会総会と常議員会議長であり、州教会全体の霊的指導の責任者です。州教会の運営は常議員会によって執行され、各常議員には任期が規定されています。

青年団（ユーゲント）総会

2019年にはじめて青年団総会が開催され、EU諸国における難民問題、青少年と家庭の貧困問題、教会共同体と青少年活動のあり方などについて議論されました。

礼拝式文

ラインラント福音主義教会では、聖餐式のない礼拝と聖餐式を行う礼拝の式文が定められています。各教会共同体では、これらの式文に基づいて礼拝が行われています。

賛美歌集

ラインラント福音主義教会では、数世紀にわたって様々な賛美歌集が使用されてきました。代表的なものとしては、1544年の「Gesangbüchlein Geistlicher Psalme[n] (Bonner Gesangbuch)」や、1834年の「Evangelisches Gesang-Buch」などがあります。

参考文献

Joachim Conrad, Stefan Flesch, Nicole Kuropka, Thomas Martin Schneider (Hrsg.): Evangelisch am Rhein. Werden und Wesen einer Landeskirche (= Schriften des Archivs der Evangelischen Kirche im Rheinland, Bd. 35). Düsseldorf 2007, ISBN 978-3-930250-48-6.
Hermann-Peter Eberlein, Andreas Metzing, Andreas Mühling, Gerd Rosenbrock (Hrsg.): Die rheinischen Unionskatechismen. Texte und Kommentar gemäß Beschluss der Landessynode 2005. Düsseldorf 2010 (Schriften des Archivs der Evangelischen Kirche im Rheinland 37), ISBN 978-3-930250-50-9.
Evangelische Kirchengeschichte im Rheinland (= SVRKG 173). Band 2: Hermann-Peter Eberlein (Hrsg.): Territorialkirchen und protestantische Kultur 1648–1800. Bonn 2015. Band 4: Thomas Martin Schneider (Hrsg.): Krise und Neuordnung im Zeitalter der Weltkriege 1914–1948. Bonn 2013. Band 5: Uwe Kaminsky: Kirche in der Öffentlichkeit: Die Transformation der Evangelischen Kirche im Rheinland (1948–1989). Bonn 2008.

外部リンク

* ラインラント福音教会公式サイト（ドイツ語）

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