ラキシュ

ラキシュ（Lachish）

ラキシュは、かつてパレスチナ地域に存在した古代都市で、現代のエルサレムから南西に約45kmの場所に位置していました。この都市は、聖書の中で数度言及されており、その豊かな歴史と考古学的意義から注目されています。

聖書の記述

イスラエル人の入植

ラキシュが聖書に登場する最初の場所は『ヘブライ語聖書』の「ヨシュア記」10章で、ここではアムル人に統治されている都市として描かれています。イスラエル人のリーダーであるヨシュアがヤフィアの王に対抗し、ヨルダン川を渡ってカナンへ侵攻すると、エルサレムの王アドニ・ツェデクは、ラキシュを含む5つの都市で反イスラエル同盟を結成しました。しかし、イスラエル軍の強力な反撃と自然災害により、この同盟は破壊され、ラキシュも無事ではありませんでした。結局、イスラエル軍はラキシュを攻略し、都市の支配権を得ました。

ユダ王国時代

ラキシュは、ユダ族の相続地となり、ソロモンの死後に形成されたユダ王国の重要な都市の一つとして発展しました。ユダ王国の最初の王レハブアムは、敵の攻撃に備えてラキシュの防備を強化しました。また、ユダ王国のヒゼキヤ王の時代には、アッシリア軍によって包囲されましたが、まもなくアッシリア軍は他の戦略的拠点を攻撃するために退却しました。

最終的に、紀元前586年には新バビロニアのネブカドネザル2世による遠征が行われ、ラキシュは完全に陥落し、都市は破壊されました。これにより、住民はバビロンに連行され、バビロン捕囚として知られる歴史的な出来事が展開されました。

考古学的な意義

ラキシュに言及される最古の記録は「エルミタージュ・パピルス1116A」であり、エジプトとカナン諸都市との交流を示すものです。さらにアマルナ文書には、アメンホテプ3世及びアメンホテプ4世の時代のラキシュの記録が残されています。

また、アッシリアのセンナケリブがラキシュを攻撃した際の戦いを記念するレリーフが、ニネヴェの宮殿に描かれています。このレリーフは現在、大英博物館で展示されており、攻城戦の様子や捕虜を連れて帰るアッシリア兵の姿が詳細に描写されています。

1929年にはウィリアム・オルブライトにより、ラキシュの位置がテル・エド・ドゥウェイルに特定され、その後の発掘調査により、更に多くの証拠が見つかりました。1935年にはラキシュ文書と呼ばれる陶片が見つかり、ユダ王国の陥落前の状況が明らかになりました。これらの公文書は、ラキシュとエルサレム間の軍事的な通信を示す重要な資料です。

結論

ラキシュは、歴史的にも考古学的にも重要な都市であり、その遺跡は古代諸文明の相互作用の証拠を提供しています。この都市の歴史は、聖書における重要なエピソードと直接的に結びついており、現在も学術的な研究が続けられています。

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