レベチラセタム

レベチラセタム（Levetiracetam）について

レベチラセタムは、てんかんの治療に用いられる抗てんかん薬の一つです。主に部分発作の治療に利用され、商品名「イーケプラ」として広く知られています。化学的にはS-エナンチオマーであり、ラセミ体はエチラセタムと呼ばれます。

適応と効果

レベチラセタムは、てんかんの部分発作、ミオクロニー発作、強直間代発作に対する併用療法として、米国や欧州で承認されました。その後、適応は全般発作や小児にも拡大されています。また、獣医学分野でも同様の用途で利用されています。

日本では、2010年に「他の抗てんかん薬で効果が不十分なてんかん患者の部分発作」に対する併用療法として承認され、その後、小児への使用や単剤療法も承認されました。

レベチラセタムは、てんかん以外にも、トゥレット障害、自閉症、双極性障害、不安障害、アルツハイマー型認知症などの精神神経症状にも有効である可能性が指摘されています。しかし、重篤な副作用のリスクがあるため、投与には慎重な判断が必要です。また、神経因性疼痛の治療や本態性振戦への応用も研究されていますが、効果は明確ではありません。

副作用

レベチラセタムの添付文書には、以下の重大な副作用が記載されています。

中毒性表皮壊死融解症（TEN）
皮膚粘膜眼症候群（SJS）
薬剤性過敏症症候群
重篤な血液障害（汎血球減少、無顆粒球症、白血球減少、好中球減少、血小板減少）
急性腎不全
肝不全、肝炎
膵炎
攻撃性
自殺企図
横紋筋融解症

また、3%以上の発現率で報告されている副作用には、以下のものがあります。

浮動性めまい
頭痛
不眠症
傾眠
痙攣
抑うつ
複視
結膜炎
白血球数減少、好中球数減少
腹痛
便秘
下痢
胃腸炎
悪心
口内炎
嘔吐
齲歯、歯痛
肝機能異常
月経困難症
鼻咽頭炎、咽頭炎、咽喉頭疼痛
上気道の炎症
インフルエンザ、鼻炎
食欲不振
湿疹、発疹、座瘡
関節痛、背部痛
倦怠感
発熱
体重減少、体重増加

抗てんかん薬を服用している患者では、自殺企図・実施率が上昇するとの報告もあります。

ピリドキシン（ビタミンB6）の併用により、精神神経系の副作用が軽減される可能性が示唆されています。

注意点

傾眠は比較的多く見られる副作用であり、自動車の運転や機械操作の際には注意が必要です。

スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死融解症などの重篤な皮膚障害が稀に発現することがあります。原因不明の発疹が現れた場合は、直ちに服用を中止し医師の診察を受ける必要があります。

レベチラセタムは、ヘマトクリット値やヘモグロビン値を減少させる可能性がありますが、臨床試験では自覚症状は報告されていません。

過量投与により、眠気、易刺激性、攻撃性、意識低下、呼吸抑制、昏睡などの症状が現れることがあります。

禁忌・注意を要する患者

レベチラセタムまたはピロリドン誘導体に過敏症の既往歴のある患者は、服用を避ける必要があります。

腎機能障害のある患者は、クレアチニンクリアランス値を参考に投与量や間隔を調節する必要があります。重度の肝機能障害がある場合は、腎機能障害度が過小評価される可能性があるため、注意が必要です。

妊婦への投与は、胎児へのリスクを考慮し、慎重に行う必要があります。ただし、レベチラセタム単剤投与の場合、先天性大奇形のリスクは有意には増加しないという報告もあります。

高齢者は腎機能が低下していることが多いため、投与量の調整が必要となる場合があります。ただし、高齢者への投与で有害事象が増加するわけではないという報告もあります。

薬物相互作用と作用機序

レベチラセタムは、薬物相互作用の報告は特にありません。

作用機序は詳細不明ですが、シナプス小胞糖蛋白SV2Aに結合し、神経伝達物質の放出を抑制することで、神経細胞の過剰な興奮を抑えると考えられています。

参考文献

PubMed Health
Keppra (levetiracetam) Final Printed Label
Keppra UCB (manufacturer's website)
NIH MedLine drug information

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