ロストック市電

ロストック市電の概要

ドイツのバルト海沿岸に位置する港湾都市ロストックには、長い歴史を持つ路面電車が運行しています。これはドイツ国内では最も北に位置する路面電車路線として知られており、1881年に開通した馬車鉄道を前身とします。現在の電化された路面電車は1904年に誕生しました。この公共交通機関は、路線バスやフェリーを含む他の交通手段と共に、ロストック路面電車会社（Rostocker Straßenbahn AG、略称RSAG）によって一体的に運営されています。

歴史

ロストックにおける軌道交通の歴史は、1881年10月16日に開業した馬車鉄道に端を発します。その後、技術の進歩に伴い、1904年5月22日には電化され、現代の路面電車の基礎が築かれました。運営企業も馬車鉄道時代のメクレンブルク馬車軌道からロストック路面電車会社へと名称を変更しました。市街地の発展に合わせて路線網は順次拡大されましたが、第二次世界大戦の戦禍により一時的に運行が中断される事態に陥り、終戦後の1945年にようやく運転が再開されました。

東ドイツ時代には、公共交通網の再編が何度か行われ、1951年以降は人民公社であるロストック近距離交通（VEB Nahverkehr Rostock）が運営を担うことになりました。この時期は都市計画と連動した積極的な路線の延伸が進められた一方、1970年代には一部区間が路線バスへ転換され廃止された例もあります。しかし、1980年代後半には再び北東部方面への延伸が実施されました。また、サービス効率化のため、1970年代からは車掌が乗務しない信用乗車方式が導入され、乗客自身が乗車券に刻印を行う方式へと移行しました。車両面では、ゴータカーなど東ドイツ製の2軸車や小型連接車が主力として導入されましたが、東ドイツ各地で見られたチェコスロバキア（現チェコ）製のタトラカーが登場したのは、統一間近の1989年以降のことでした。

1990年のドイツ再統一を目前に控え、路面電車やバスの運営組織は民営化され、以降は再びロストック路面電車会社（RSAG）による運営が現在（2022年時点）まで続いています。再統一後は既存路線の改修や設備の近代化が進められる一方で、長年の構想であったロストック北西部への大規模な路線延伸工事が1998年に開始され、2003年に開業しました。同年には、ドイツ鉄道のロストック中央駅に接続する電停も、全長約300メートルのトンネルを含む地下化工事が完了しました。車両についても、1990年代以降継続的に超低床電車の導入が進められ、2015年4月以降は運行される全ての列車が床の低いバリアフリー構造の車両に統一されています。

運用と料金体系

ロストック市電は複数の系統によって運行されており、市民や観光客の重要な足となっています（2021年現在）。運賃体系は、ロストック路面電車会社を含む地域の主要な公共交通事業者が加盟するヴァルノウ運輸協会（Verkehrsverbund Warnow）によって設定されています。基本となる片道運賃は2.3ユーロですが、短距離利用向けのチケット（4電停以内の乗車で1.8ユーロ）も用意されています。この他にも、1日券（6ユーロ）や、午後7時から翌朝5時まで利用できるお得なハッピーアワーチケット（4ユーロ）など、多様な種類の乗車券が展開されており、利用者のニーズに応じた選択肢が提供されています。

車両

2015年4月以降、ロストック市電で運用されている車両は全て片運転台の超低床電車に統一されており、バリアフリー化が徹底されています（2022年現在）。

現有車両

6NGTWDE (6N1): デュワグ社が製造した3車体連接車で、車内全体の約70%が低床構造となっている部分超低床電車です。中間車体には車軸を持たない特殊な台車が採用されています。1994年から1996年にかけて合計40両が導入されましたが、その一部は今後導入される新型車両によって置き換えられる予定です。
トラムリンク 6N2: フォスロ・キーペ（現シュタッドラー・レール）が開発した、車内全体が低床構造となっている5車体連接車です。従来の車両よりも車幅が広く、冷暖房完備の空調装置を備えています。2011年に発注され、2014年に13両が導入されました。これにより、当時残存していた東ドイツ末期導入のタトラカーが置き換えられました。

導入予定の車両

2022年6月、ロストック路面電車会社はシュタッドラー・レールと新型超低床電車「ティナ（TINA）」の導入契約を締結しました。これは、製造から約30年が経過した6NGTWDEの一部を置き換える目的で導入される片運転台式の3車体連接車です。定員は着席75名を含む合計221名を予定しています。2024年から車両の納入が始まり、2025年を目処に営業運転への投入が計画されています。

過去の車両

ロストック市電では、過去に様々な車両が活躍しました。

LOWA形、ゴータカー、REKO形: これらは東ドイツ時代に多数導入された同国製の路面電車です。大半が2軸車でしたが、ゴータ車両製造製の「ゴータカー」には3車体連接車も存在しました。1970年代以降、他の東ドイツ都市からの譲受車両によって陣容が強化されましたが、後継車両の導入に伴い1990年代までに営業運転を終えました。
T6A2D・B6A2D: 東ドイツ末期にあたる1989年から1990年にかけて導入された大型ボギー車で、チェコスロバキアのČKDタトラが製造した一連の「タトラカー」に分類されます。1990年代には近代化工事も実施されましたが、超低床電車への置き換えにより2015年までに全車が営業運転から撤退しました。ただし、近代化されたT6A2M（元のT6A2D）の1両が現在も動態保存されています。
* 4NBWE: T6A2Dへの連結を前提として導入された付随車で、車内全体が低床構造となっており、バリアフリー促進に貢献しました。T6A2Dと共に2015年まで使用され、その後はライプツィヒ市電やカッセル市電へ譲渡されています。

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